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えびせん Good Morning,MARS  作者: 大嶺双山
第三幕 戦
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第百一話 パエリア出座

 押し込んだ敵が勢いを取り戻すのを、オマール族のパエリアは後方から見ていた。

 これまでに二度、長き殻どもはマ族の集落を襲っている。一度目はパエリア配下のペペロンチーノによる探索と瀬踏みで、二度目はイセ族のフナモリ差配による群れでの突撃だ。そのどちらにも、パエリアは加わっていない。

 パエリア自体がここまで出張って来たのは、これがはじめてだった。

 もとより気が長い方ではない。ここまで我慢してきたのは、それが必要だと考えていたためだ。

 愛してやるためには、相手のことを知ってやらねばならない。それはとてもとても、大事なことだった。

 それがどのようなことに恐れを抱き、どのようなことを屈辱に感じ、どのようなことでこころを失うのか。

 それらを知っていてこそ、屈服させる楽しみはいや増すのだ。

 眼前の戦いを、パエリアは楽しく眺めていた。

 様々なことを考えつく敵のようだ。単純な力では、長き殻どもの方が圧倒的に強い。数も多い。その不利を覆すため、彼らは知恵を絞り、地形や様々なものを用いて、パエリアたちの進撃を必死で食い止めているのだ。

 そしてそれは、危うくはあるが成功しつつある。

 パエリアは、楽しくて楽しくて、仕方がなかった。

 もう一頭の長であるフナモリは、パエリアとは離れた場所で群れを差配している。群れを二つに分け、別動隊で集落を鋏討ちにする腹積もりであるようだ。あれはあれで、様々な群略を駆使し、楽しんでいるように見える。

 だがその楽しみは、パエリアとはまったく別のものだ。

 フナモリはパエリアを誤解している。パエリアは戦うことが好きなのではない。戦いに勝ち、相手を従わせることが好きなのだ。

 マ族たちは健闘している。もしかすれば勝てるやもしれない。きっとそう思っている。

 その思いを粉砕してやるのは、どれほど快いことだろう。

「エビチリ」

 配下であるクロトラ族の大頭を呼び、指揮を任せる。そうしてから、ずる、ずると堅い脚を動かして地を這いずり進みはじめる。

 それだけで水は大きく揺れ、波立ち、大量の砂が撒きあがる。

 ボタン族が、クルマ族が、クロトラ族が。すべての種族が腹を伏せ、道を譲る。

 丸い二つの眼を動かし、戦場をつぶさに見る。敵の中に殻持つものがいる。配下のクロトラよりも、クルマ族よりも大きな個体だ。

 あれをやるか。そう思ったときだ。

 視界の端に思いもよらぬものが過ぎった。八本足。マ族。だが、その身にクロトラ族の殻を纏っている。その模様には、とてもとても見覚えがある。パエリアは嗤った。

見つけたぞエウレーカ


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