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えびせん Good Morning,MARS  作者: 大嶺双山
第一幕 会
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第十話 遭遇戦

「受け止めるな。勢いを逸らせ」

 戦士たちに告げて、前へ出た。槍をぐるりと回転させる。

 タラバたちを追い回してきた化け物どもである。強大な力を持っているのであろう。この場所では、マ族特有の戦い方はできない。厳しい戦いになることは、疑いなかった。

 だが。

 身体の芯が熱を持っている。アカシは戦士だ。見知らぬ敵と相対するとき、そのこころは、今までにない戦いを求め奮い立っている。

 巨体が突進してくる。先頭を蠢く一頭のはさみが突き出された。

 先ほどの若いタラバ族のものとはまったく違う、速く鋭い一撃だ。

 槍の穂で滑らせる。そのまま一歩を踏み込んだ。三本の脚を伸ばし、化け物の前足を絡め取る。

 重い。

 押し返すのはあきらめた。頭を右に逸らせる。海藻をなぎ倒しながら、巨体の列が通り過ぎてゆく。

「退くぞ」

 戦士たちが墨を吐き出し始めた。波が墨に舞い、森に広がる。黒色にまぎれて、タラバたちを守りながら来た道を引き返す。

 化け物たちが吠えている。あらぬ方向の海藻がなぎ倒されていくのが見える。

 静かに、アカシたちは退いていった。

 群れで槍の形をつくり、水を切って森からの撤退を図る。全力で逃げるマ族に追いつける種族は少ないが、中にタラバどもを抱えているため、常の半分ほどしか速度は出ていない。

 だがそれでも、この度は何とか逃げ切れそうであった。

「大頭。もしやあれが」

 隣に来たタコワサがアカシに問うた。

「おそらく、間違いなかろう。知っている種族か」

「いえ、私もはじめて見ました」

 遠く後ろに黒い墨が広がっている。あの向こう側では、あの化け物どもがまだ暴れているのであろうか。

「まずは長老に知らせる。こやつらからも、色々聞きださねばならん」

 タラバたちを一瞥した。

「厳しい戦になりそうですな」

「なるだろう」

 己が笑みを浮かべていることに、己だけが気付いていなかった。


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