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魔王が出来る3つの条件  作者: かずあ
魔王のマ!
9/29

魔王のマ!その9!


 寝顔かわえーなぁー。ぷにぷにしちゃってもいいかな!いいかな!?



 ちょっと早めに起きた俺は今まさに、大いなる一歩を踏み出そうとしていた。




 「なにやってんのよ」



 踏み出せませんでした。もうちょっとの所で、手を手刀の形で首に突き付けられました。



 「あいやー魚を採ってこようかと」



 「魚はこっちに無いわよ」



 「俺とした事がうっかりうっかり。じゃあいってきまーす」



 

 足早に洞窟を出る俺。逃げるが勝ちだ、次こそは打ち取ったる。



「いい加減学習しろよな、お前ら…」



 懲りずに石の蔭で休んでるお魚さんをがちこーんすると、ささっと抱えて移動する。ここまでくると申し訳なくなってくるから人って不思議!



 魚を採り終わり、付け合わせが何かないか探しているとなにやら面白い物が。




  名:ポアロ

 種類:植物

 状態:普通

 説明:滋養強壮薬の元。葉っぱ一枚でもその効果は一日続く。群生しないのでとても貴重、欲しがる人は山ほどいるだろう。栄養満点。




 ほう、ほうほうほーう。これってあれですか、下にも効く滋養強壮ですか先生!あれ、何時の間にやら手の中にポアロが。

 これは不思議だ。帰って食べ調べてみなければ。



 ポアロを摘んだ俺は、ウォルに食わそうと、絶対に食わそうと決め洞窟へ急ぐ。いや、あいつ栄養足りてなさそうだったし!数日食ってないって言ってたし!




 「たっだいまぁー!薪ある?」



 「…ないわよ」



 その位用意しといてくださいよー。それとおかえりなさいがほしかった!


 ジト目で見ると、ウォルは目を逸らし外へ出て行ってしまった。



 「かわいくねーのー。ま、慣れたけどね」




 さて、薪でも集めに行きますか。





▼△▼△▼△






 これはー…湿気ちゃってるな。これは良さそうだな。

 といった具合に薪を選別していると前から物音がしてきた。



 (敵か…)



 こんな森で出遭うなんて8割がた敵だろう。



 集めた薪を足元に置き、ケルスを握る。ジャグはどっか飛んでいったし、バリも無いし武器調達もした方がいいかな。


 大物が出てきた時、対処できなかったらそれは死に繋がるだろう。


 などと考えていると、音を立てていた奴が現れた。



 <かあたーん>



 名:ドラゴンパピー

種族:翼竜種

状態:恐慌 不安

説明:翼竜種、ワイバーンの子供。翼はあるが、まだ遠くまでは飛べない。子供でも強いと思われているが子供は子供、強さで言うとバッフィーくらい。見かけたら要注意、近くには母ワイバーンがいるだろう。




 きゃわわ!かあたーんだって!迷子かしらぁん。おいたんが保護してあげゆからね!




 「お母さんを探してるのか?手伝ってやろうか?」



 <ニンゲンなのに言葉わかゆの?>



 「ああ分かるとも。おいたんが一緒に探してやるからな」




 子供っていいよなぁ…俺に子供が出来るなら姉妹が欲しい。パパーって言われたいっ!!パパと結婚するーなんてのも言われたいっ!将来はパンツと一緒に服洗っても嫌われない位になりたい。




 <うーん。でもかあたんが知あない奴に付いていくなよって>



 「今知り合ったから平気。ほれ、お母さんはどっちに?」




 かわいいなぁと目を細めたら、また情報が入ってきてしまった。ってかモンスターと居る時は随時展開しておくか。状態とか視て有利になりたいし。





 名:ドラゴンパピー ♀

種族:翼竜種

状態:安心 テイム可能

説明:翼竜種、ワイバーンの子供。翼はあるが、まだ遠くまでは飛べない。子供でも強いと思われているが子供は子供、強さで言うとバッフィーくらい。見かけたら要注意、近くには母ワイバーンがいるだろう。





 ちょろ過ぎだろドラゴンパピー。こんなんでいいのか母ワイバーン、ちゃんと教育しておけ。



 まぁこれで敵だとは思わなくなっただろう。

 額から突き出た2つの角、鼻は角の様に鋭く手足に伸びた鋭そうなツメ、背中にはドラゴンを思わせるような小さな翼を装備したその子を頭に乗せると、ドラゴンパピーの情報を頼りにお母さんを探していく。


 薪?ウォル?ああ…あ?うん、まぁ。うん





 「お母さんは、どんな性格なの?」



 <かあたんはやさしーんだよーいつもおいしいとこおのお肉くれうの!>



 「ほうほう、それは早く会ってみたいな」



 どうやら優しい性格らしい。この子には。俺が急に目の前にこの子を連れて出てきたら、誘拐されたと思われるだろうか。この子がどうなってもいいのか?的な。



 鑑定を使いながら、周りを探索していく。その過程でジャグとバリを1つづつ拾った。鑑定便利ね。もういつも展開しといちゃうか!見落としも無くなっちゃうし、少し鬱陶しいけど。


 にしてもこの森にはノキアが無い。全くと言っていいほどノキアを見ない。初めの頃に居た森ならそこら辺に生えてたのに。エキサイティングな紫色してたよ。

 



 (麻痺毒欲しかったけど無いんじゃ仕方ないな…)




 <パパに会ったあ、かあたんおどおくよ!>



 ちなみにこの子にはパパと呼ばせることにした。もう母ワイバーンに聞かれたらとんでもないが、パパと呼ばれたいのだから仕方ないだろ?パパ…いい響きだ。




 「お前に会ったら、母さんも喜ぶよ」




 頭を撫でながらそう言うと、目を細めて気持ちよさそうに頷いている。かわええええええええウォルとか言う娘の100倍はかわええええええええ。あんなのどこぞのイケメンにしっぽりしとけばいいのよ!人を外見で判断しやがって!




 <あーかあたーん!>



 目を瞑って昨日の事を思い出してたら、どうやら見つかったようだ。目を開けるとそこにはでっかいドラゴンパピーが……



 死ぬ…俺死ぬかも…炎のブレスとか吐きそうだよこのかあたん。




 名:ワイバーン ♀

種族:翼竜種

状態:安心 損傷2%(右手)

説明:翼竜種、ワイバーン。その口からは炎のブレスを吐く。火力は大したことないが、不意を突かれると火傷は免れないだろう。滑空からの引っ掻きが強力でその力は大樹をも切り裂くと言う。雑食である。




 子供見つけたから安心したのだろうか。損傷2%は知らんどっかにぶつけたんじゃね。




 <コル!あんた何処行って…。!>



 <かあたんだめだよ。この人はかあたん探すの手伝ってくえたんだかあ!>



 よくいったコル。そう言わなけりゃ俺は腹の中だ。


 ワイバーンはキッと睨んでた目をほんのすこーし、すこーし緩めるとコルという娘パピーとひそひそ話を始めた。いや、聞こえてるんすけどね。




 <コル、あやつは信用出来る人間なのかい?>


 <うん!パパとっても優しいんだよーなでなでも上手あし!>


 <ぱ・・・ぱ・・?コルあいつはパパって名前なのかい?>



 <ううん、パパって呼んでって言ってた>



 <コル、あいつは危険だ。ママと一緒におうちへ帰ろう?>



 <どうしてー、パパいい人だよーもうちょっと遊んでいいえしょー?>


 <だーめー、ほら帰るよ>



 <やーだやだー、遊んでくのーやだよー>



 <困ったものね…>




 母さんを困らせちゃだめだぞコル。仕方ない、助け舟を出してやるか。




 「コル、大きくなったらパパと一緒に遊ぼうな。それでどうだ?」



 <おおきくなったあ?>



 「そうだよ、大きくなったらいろんな遊びが出来るんだ。おもしろーい遊びがね。でもその遊びをするにはお母さんの言う事をよく聞いて、いい子にしてなきゃいけないんだよ。コルは出来るかい?」



 子供はこんなことを言えば多分大丈夫だろう。これで将来パパと結婚する―的な事になるかもしれん!フラグは大事よ。



 <うーん、わかった!おもしおい遊びね!約束だよパパ!>



 「おう、何時でも待ってるからな。大きくなったら探しにこいよ」



 <行くよ、コル>



 パパと呼ばれる度に母ワイバーンの眉間に皺が寄って行ったので、何時ブレスが来るかとヒヤヒヤしていたが助かったようだ。


 ばいばーいという声を残して親子で飛び立っていってしまった。途中母の背中に乗るコルを見かけた。やっぱかわえーなぁ…




 腹減ったし洞窟に戻ろうとしたところで気が付いた。ここ何処よ?





▼△▼△▼△▼




 やっとの思いで洞窟に付いたのが夜になる少し前。バッフィーに襲われたりなど散々な目に遭った。ウォルは居るだろうか?



 「た、ただいまぁー」



 気分は飲み屋をはしごして連絡をし忘れたサラリーマンのそれだ。ご機嫌取りの土産もあるぞ。



 洞窟の中を見渡すと、そこには焚火の後と食い散らかされた魚の残骸。ポアロが無くなってる事からウォルが食ったんだろう。血が飛び散っていることから生で食べのだろうことが分かる。



 (たく…動物が寄ってきたらどうすんだ)


 それをウォーターで軽く流し、拾ってきた薪に火を付ける。洞窟の中には姿が無い。出掛けてるのだろうか?こんな夜中に?



 どっか出て行っちゃったかなぁ…まぁ仕方ないよね!俺的には居た方がよかったけど、ぶっちゃけ、どちらでもよかったし。



 「まぁ今日はこれ食って寝よう」



 襲われたバッフィーはもう首を落として、血抜きを済ませ、皮を剥いである。


 皮をそのまま火にかけて足の部分を持ち、簡単に燻っていく。マンガ肉みたいにはならないけど、これはこれで中々うまそう…。

 

 中まで火が通ったことを確認して一気にかぶり付く。ひっさびさの肉だ!たまんねーなぁ!塩が欲しいところだがまぁいいだろう。じゅわっと出てくる肉汁をこぼさない様食べきると、骨までしゃぶる。


 犬の気持ちがわかるわー何時までもしゃぶってたいわこれ。



 ごろんごろんしながら、魔法の練習をする。別にまだ飛ばせるとかじゃないから、こんな感じのぐだぐだでおっけーっしょ。



 今日は疲れたけどフラグ立てれたし、肉食えたし良かったかな!それじゃ、お休み。明日は女の子に出会えます様に、それと生き残れます様に。




 

  名:斎藤浩太

 種族:人間

 状態:普通

 称号:冒険者→判断能力UP小 狂戦士の心得→一定の条件で基本能力UP中


    モンスターへの愛→テイム率上昇中 無差別凌辱 鑑定眼→判断能力UP中、鑑定能力持続


    魔王の心得→能力全体UP小 <異界者> 優しい心Lv2→敵、敵愾心減少中


    天性の顔つき(不)→相手の好感度減少率大 鉱石玄人→鉱石の扱いUP中


    毒薬見習い→全毒耐性UP小、毒効果時間、ダメージ減少小


    言語マスター→言葉理解100% 紳士 威風堂々→動揺率減少中


    比重の心理→仲間に対して相手の良さが濃く伝わる 体術家→体捌き40%UP


    心がイケメン→相手の好感度UP特大(要ニ年一緒にいること)


    不屈の心→精神力UP中 火事場の馬鹿力→命の危険を感じると全能力UP中


    ポジティブシンキング→精神力UP中、判断能力低下小 


    戦闘狂→戦闘になるとテンションが上がる 四面楚歌→精神力UP大


    体内魔素100突破→ボーナス>魔法使用許可1、能力全体UP小


    獣の子供→野外での行動力70%UP夜目UP大 地獄耳→聴力UP中


    モンスターハンター→モンスターとの戦闘時基本能力UP中その他能力UP小


    エスコート→♀の好感度上昇率UP小 魔法使いの弟子→魔法の扱いUP中


    絶体絶命→命の危険を感じると判断能力UP大 鷹の目→目の良さUP中


    漁師→魚の扱いUP中 称号コレクター→全称号の能力UP補正小、習得率上昇小


    野生の勘→命の危険を感じると回避率15%UP 諦めが悪い→精神力UP中


    低燃費→魔法使用時消費魔素20%削減 ヘタレ エロの権化 


    カウンター→大雑把な戦闘能力が分かるようになる 童印の雑兵


    命を賭ける代償→特定の行動で♀の好感度上昇率UP特大(しかし相手が確認できる状態にあること)


    猟師の心得→動物の扱いUP小  ドラゴンの友達→威圧感UP中


    フラッガー→約束事を忘れなくなる 









▼△▼△▼△





 「うぉーたー」



 気の抜けた声で魔法を使い、目を覚ます。


 魔法についてだけど、これどうやったら飛ばせるようになるのかね。




 片手を前へ突き出し短くファイヤーボールと呟く。すると炎の玉が手の先から現れ、ボボボボと燃える。燃えるだけ。その場で。





 よっくわかんねぇなぁ…ずばーんと飛んでどっかーんってならないかねぇ…。もう中二病は卒業したと思っていたけど、魔法が出来るようになってから再燃焼始めた。今じゃド派手な魔法さえも思い描いている。例えば…うーむ…



 うんぬん一人で唸る様はさながら変人。昨日の晩、転がりながら思いついた魔法をイメージし、手は洞窟の外へ。




 「グランドショック!」



 地震を連想しながら、かざした手をグーにして左右に揺らす。

 なんとなーくその方がいいかなって思ったの!カッコイイでしょ!



 まぁ出来るはずないよねーと思っていたら、数秒経った後から微妙に揺れ始めてきた。震度にすると3くらいかな?上達したら局地的に震度7とか出来るようになったりすんのかなー!楽しみだなぁ。




 

 魔法の練習もそこそこに、あの登って見えた塔を思い出した。ウォルがいたり、ドラゴンパピーがいたりで忘れてたが目的は街へ行くことだ。


 ちゃんと思い出したからおっけーなの。




 燻っている焚火を踏んで消すと、魚を獲りに川へ向かう。控えめに2匹撮ると、その場で下ごしらえを済まし焼いていく。


 いつまた面倒事が起こるか分からない、急いで困ることもないだろう。


 焼き終えた魚を1匹食べると、おぼろげな記憶を頼りに塔へと歩き出す。




 (多分こっちだな)



 この前の聖域が反対方向だったから…多分だけど。




 ズンズンと進んでいくと周りの雑草が低くなり、背の高い木も少なくなってきた。見通しが良くなった分目標を確認できた。




 高い外壁で周りを囲い、跳ね橋が降りていて、その中心らしき所にはたっかい塔が一本、天を穿つ様にそびえている。




 当たりでいいだろう。あんだけでっかい街なんだ、酒場のおっちゃんが言ってたセントリーゼンが8割、違う街が2割位だろう。

 なにしろ3日、体力が無くなるまで歩いたんだ。近くに在ってもいいじゃない!




 (はてさて…まだ時間はたっぷりとあるわけだがどうしようか)



 そうなんだ、急ぎ過ぎてまだ昼前…だと思われる。とりあえず近づいて様子を見てみるか。



 服はもうボロボロでへそが見えてしまっている。これではリーゼンの二の舞になるので、と考えての行動だ。



 街道から離れ、スニーキングミッションよろしくUPした行動力で外壁に向かう。


 多分街道を移動している人、何人かにはバレているがしょうがない。隠れる場所など無いに等しいこの草原で!どうやって見つからずに居ろと!





 (でっけええええええええええ)



 真下で見るとその大きさありありと伝わってくる。



 (でも聖域の木の方がでかいな…)



 ふと思い出す聖域。あっちの木の方がでかいとわかったらなんだか興奮が冷めてきた。

 なんだよあっちのがでかいのかー、リアクションとって損したな。



 なんだか損した気分になりながらもぐるーっと一周する。


 ここもリーゼンみたいに出口が4つあるとみていいだろう。森からでてきた近くに1つ、右回りに歩いて行って1つ検問?みたいなのがあった。




 (さて、ここでどうするか…。盗賊に襲われ、命からがらってのは…やっべぇ俺天才だわ。自分の才能に嫉妬する)




 盗賊に襲われた設定で通ることにした。まぁ実際に起きた話だしな。そうと決まれば話は早い。一度森に戻ることにした。その方が信憑性が高いだろ?




 「はぁ…っはぁ…すみませんっ、ここはセントリーゼンですか?」




 くっはー俳優さながらだわ。さぁ、通すんだ門番よ!開けゴマ!



 「っ!どうしたんだ!なにがあった?」



 この人何気にいい人だな、しかし罪悪感は無い!



 「うっ…盗賊に…襲われて…このざまです」



 「それは災難だったな…命があるだけでも儲けものだ。ここはセントリーゼン、傷をたっぷり癒してきてくれ」



 うは、検問で並んでる人居るのに割り込みで通れるとか、並んでる人チィーッス。



 心の中でほくそ笑み、跳ね橋を渡ると、石で出来た道に石で出来た家。所々木の家があるがそれでも石だらけ。



 (ストーンリーゼンに名前変えろ)



 そう思うくらい石尽くめだった。周りに好奇の目で見られつつ、まずは道具屋へ向かう。リュックかバッグ欲しいよ…ポケットが絶賛妊娠中だよ。



 目に付いた道具屋へと入っていくと、門前払い喰らいました。




 「貧民がなんでこんなところに…しっし、やるもんなんてなんもないよ」



 貧民…?ここは差別的なものでもあるのだろうか?



 仕方がないと隣へ訪問するも同上。流石のおいたんも頭に来ちゃうよおおおおお?




 どうしよーかと悩みつつ歩いていくと、ちょっと雰囲気の変わった木で出来た家の住宅地?みたいな所に着いた。



 (…はーん。こういうことねぇ…)



 そこは地球で言うスラム街みたいな所、道具屋の言ってた貧民っていう区分の人が住む場所だろう。ぶっちゃけた話、俺は別にそういうのが許せないとかそんな性格じゃないから、見てもなんとも言えないけど。




 周りを見渡すと、ぼろい布を申し訳程度に見に付けた人がちらちら目に入る。可愛い人もいるのにもったいねーな。

 ………!今日の俺は冴えてるぜ。こんな場所があるんだ、それにここは地球じゃない、日本じゃない。もしかしたら奴隷なるものが存在するかもしれない…!



 もうこのさい奴隷でも妥協できる境地に俺は居る。よし、なんだかやる気が出てきた。出てきたよ!!!




 「おおっと、危ないぞ少女よ」



 一人浮かれていたら、背後から何者かの気配!森で暮らしている内に身についたんだ!


 振り返ると小剣、ダガ―みたいなのを突き出して驚いた顔をしている子供がいた。



 かわえーなぁ…将来有望だろうな。でももうちょっと肉が付いていた方がいいかな!



 「……」



 何も言わずもう一度ダガ―をこちらに突き出してきた。こんな年からそんな物騒な事しちゃいけません!父親になった様な気分で優しーく優しくダガ―をはたき落すと、手を握りこう言う。



 「お嬢ちゃん、これでうまい飯食えよ?」



 鉄貨を一枚握らせる。美味い飯が食えるかどうかは分からないけど、いいとこの宿代がこの半分だ、少なくとも飯は食えるだろう。


 それと今の俺かっこよす。




 「…がと」



 蚊の鳴くような小さな可愛い声でありがと、と言うとダガ―を拾い去って行ってしまった。ダガ―を拾う辺りちゃっかりしてるぜ。

 だけどここは今みたいな通り魔事件っぽいことが、日常茶飯事に起こるらしいね。遠くでも人と人が揉めている。




 (さっさと出るか)



 来た道を戻り、こんななりでも売ってくれる道具屋を探すことにした。1軒位はあるよね…?





▼△▼△▼△




 「…まいどー」




 やっと買えた。なんだここは全く!


 日はすでに高く、傾き始めている。途中で数えるのをやめたが、多分9軒目。服も予備を含め4着くらい買った。これでもう大丈夫だろう。




 路地裏に入り、ぱぱっと着替えると宿を探す。先ほどの道具屋は当たりだったのか、品数が豊富で沢山買ってしまった。財布がもう…銅貨6に青銅貨3、鉄貨が5に銀貨が1だ。あのキャンプセットに簡易ひげそり、石鹸らしきもの、歯を磨く木の棒など生活に必要そうなのを片っぱしから買った。



 そのすべてをリュックに詰め、背負いながら宿を探していく。



 (どこがいいのかさっぱりわからん)



 そりゃ来たばかりだから仕方ないと思うが、数が数なんだ。宿屋の隣に宿屋があるとかおかしいだろ。



 こりゃぁ酒場で聞くしかないと、やって来たのがダーリンの酒場。不覚にも名前に釣られてしまった。




 「いらっ…しゃーい」



 しゃーいは棒読みね。びゅーちふるなおねいさんがカウンターに立っていた。ここはやめにしよう。ちょっと奥にある「野郎の酒場」に行こう。



 はぁー天性の顔つきなくなんねーかなぁ…。



 とぼとぼと歩き、野郎の酒場の扉を開けるとイスが飛んできた。何を世迷言をと思うがイスが飛んできたんだ。



 「ぶねええええええ!」


 それを拳で砕く俺。意外と脆いんだなイスは。


 飛んできた方をチラリと伺うとなにやら男同士で揉めているらしい。俺には関係ないか。さっそくマスターらしきマッチョな人に近づくと、青銅貨を1枚出してこう告げる。




 「鉄貨1枚で3日泊まれる宿を、飯は要らない」



 聞こえていなかったのかと思ったが、置かれた青銅貨を懐へ仕舞いながら答えてくれた。



 「ゾレルの宿がいいだろう。ここを出て、右に2フェーメ行ったとこに在る」



 さんきゅーと言って銅貨を一枚投げ渡し、酒場を出て行く。あの揉めている奴らは、片っぽの嫁に手を出したとか出さなかっただとか。耳がいいのも問題だな。




 途中屋台で、青銅貨1枚の肉串を買うと頬張りながらもゾレルの宿とやらを探していく。

 看板が見えた辺りの路地裏で、なにやら物音が聞こえたのを逃さなかった。やっぱ耳がいいっていいわ。



 ナニしてるんだったら混ぜてもらえないかなぁ…と抜き足で近づいていくと、あの鉄貨をあげた女の子がリンチされていた。



 (ほわっつ?ほわーい?)



 混乱していると、リンチしていた奴その1が声を張り上げ言い始めた。



 「貧民のくせに鉄貨なんて持ってるから、こんな目に遭うんだ!」



 ゲシゲシと足蹴にする男は日本で中学生くらいかな?他のもう一人も変わらない位の身長だ。


 ってか小さい女の子一人に複数なんて紳士のする所業じゃねぇなぁ…お仕置きが必要みたいだ。俺のせいでこんな目に遭ったらしいしな、助けないとかあり得ないだろ。



 気づかれない様その1の後ろへソロリソロリと近づくと、腕で首を絞める。



 「げぇ…ぐぁ…」



 「な、なんだてめぇ!ゼニを離しやがれ!」



 銭…。まんまな名前だと思いながらも、向かってくるその2を未だ首を絞めてるその1を投げつけ、その1諸共回し蹴りで撃退。手加減はしたから死んではいないよね?




 ぴくぴくしているその1を担ぎあげて、その2が逃げて行くのを確認したらあの女の子に近づいていく。



 「大丈夫?ごめんね」



 「……逃げ切れなかった」



 わきの下を持ち、立たせるとふるふると首を振りながらそう言った。いつもなら逃げ切れたってことかな?



 「お詫びといっちゃなんだけど、これから飯食いに行くから…くる?お金渡しちゃうとまたあいつらが来るかもだし」



 下心はあります。だがしかし!10年後くらいの話だ!



 「…いいの?」



 「いいのいいの。美味い飯食いたいだろ?」



 女の子は疑った目で確認をとると、美味い飯に釣られたのか俺の服の端っこをギュッと掴んできた。




 (かかかかっかかかかっかっかっかわえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええよし決めた。この子俺の子にするうううううう貧民なんて関係なっし!)




 決してロリコンではない。この子が可愛いのだ。服がボロボロなので、このままでは店に入れないと思い予備の服を着させることにした。この時にダガ―は没収してある。



 「だっぼだぼだけどワンピースみたいだな」



 「…ん」



 結果オーライだ。


 まずは宿屋に行き、荷物を置いていこうと考え路地裏を後にする。



 「ここがゾレルの宿ね…」



 木で出来た普通な作りの家。どこかがボロい等は無く、普通にいい家だなと思った。




 「すみませーん、誰かいませんか―?」



 軋む床をさらに軋ませながら、確認をとる。



 しばらくすると男の人が出てきた。多分この人がゾレルさんで間違いないだろう。




 「何泊だい?」



 俺の後ろに隠れている女の子をみて、親子か兄弟とでも思ったのだろうか?



 「3泊でおいくら?」



 質問を質問で返すのは不躾だけど、まぁいいだろう。



 「2人で鉄貨1でいいよ。どうする?」



 2人って言うと後ろの女の子も入ってるのか…まぁ要望通りの金額だし、いいかな。




 「じゃあ3泊で」




 「まいどあり、水は裏手の井戸から汲んでくれ。お湯は言ってくれれば持っていく。この桶の大きさで銅貨2だ」




 印の付いた札を受け取りながら説明を聞き流す。お湯、食ったら貰うか。



 2階は家族、もしくは自分の部屋があるのだろうと考える。じゃなきゃカウンターの奥に階段なんて作らないだろう。そのまま廊下を進んでいくと、あてがわれた部屋で一息入れる。




 「ふーぅ…じゃあ何が食いたい?」



 肉が食べたいのに魚とか食べさせられないよ!こんな可愛い子ならこのくらい苦でもないぜ!



 「お肉…いっぱい食べたい」




 「よし、決まりだな!貴女のお名前は?」



 どこぞの騎士みたく、女の子の手をとり跪く。女の子のステータス視るのはあまりしたくないからな。



 「リッカ…」




 「リッカちゃんだね、俺は斎藤浩太。コータって呼んでくれていいよ!」



 ホントはお兄ちゃんがいいとか口が裂けても言えないっす。



 「…わかった」



 待ちきれない様子でそわそわし始めたので、そろそろ出発するとしよう。レディーを待たすわけにはいかない!




 「じゃあ行くか、どこかオススメない?」




 「…それじゃあリッカが案内する」



 すみません。エスコートするにも地理が分からんのです。



 宿を出ると、リッカちゃんに手をひかれながら移動していく。あぁ…あんまり動くとシャツがめくれて…みえ、みえ、みえない。この子…やりおる!ギリギリのチラリズムを堪能していたら、どうやら着いたようだ。




 「…ここ、おいしいって噂」



 「へぇ…じゃあ入ろうか」



 今度は俺が先頭で店に入っていく。ちょっと洒落た雰囲気を醸し出しているこの店は…女の子でいっぱいだった。


 (俺的にはいいんだけど、俺が入ると…うわあああやめて!そんな目で見ないで!)




 俺が入店した途端、コソコソとお会計済まそうか?という声があがってくる。




 「いらっしゃいませ、お二人様ですね?アチラヘどうぞ」



 リッカちゃんを見ながら言う女店員。おい、お客様はここにもいるぞ。



 すっかりと気分を悪くした俺は、それでもリッカちゃんにいいとこを見せようとリッカちゃんが座るイスを引いてあげる。




 「…ありがと」



 「どういたしまして」



 にっこり顔で答える俺。名前呼んで欲しいけど、まぁしょうがないか。



 「…コータはなににするの」



 呼んでくれた!コータだって!かわうぃいいいいい。



 「俺は…うーん、このバッフィーのステーキにしようかな。白パンも付いてくるらしいし」




 「…じゃあリッカもそれにする」



 うーん?せっかく来たのに自分で頼まない…あぁ。字が読めないってことか。日本じゃあり得ないけど発展途上国とかじゃザラらしいね。ここも大差ないってことか…。俺はなぜか知らないけど、読めるようになったから教えてやれないのが悔しい。




 「おっけー。すみませーん、バッフィーのステーキ2つで!」



 もう貸し切り状態となった店に俺の声が響く。すみませんねぇ…。




 待ち時間の間に、この後の事を左右する質問をズバズバと聞いていく。デリカシーが無いと思われるけど、仕方ないんだ!許してくれ…!




 「リッカちゃんは親いないの?」



 「……いない」



 「そっか、俺もいないんだよね」



 嘘ではない。こちらには居ないからな。



 「…コータも?」


 「おうよ。お揃いだな」



 一歩間違えば口説いている風にも聞こえるが、ロリともうすぐ成人だ。大丈夫だと信じたい。




 「…お揃い…」



 「それでさ、リッカちゃんがいいならだけど…俺と一緒に旅しない?」




 本題どーん!俺のPTにも華やかな女の子がほしいっ!10年なんていくらでも待ってやんよ!



 「…旅…コータはいいの?」




 自分なんかを連れてってことだろう。もっちのろんウェルカムごーとぅーだよ!



 「ったりまえよ!じゃあ決まりってことで?」



 「ん、よろしく」




 あっさりと決まってよかったよかった。これで少しは俺の気が晴れるだろう!



 運ばれてきたバッフィーのステーキをガブリと一口含むと、リッカちゃんも真似してガブリと噛みついた。まぁ…大きくなってから作法とか学ぶってことで。








 二人とも綺麗にパンまで食べると、鉄貨を1枚払って。店を後にする。



 仲良く手を繋ぎながら宿へ戻ると、お湯を2つ頼み部屋に行く。




 「じゃあ俺は水汲んでくるから。休んでていいよ」



 「…リッカもやる」



 袖をくいくいして言ってきた。もおおおおおおおおお兄ちゃんがしてあげるからあああああああああああ。




 「じゃあ一緒にいこうか」



 と、手を差し伸べると手を取ってくれた。ええ子や…。




 裏の戸を開けると、最初の宿で見たような井戸があった。俺は大きい桶一つ分、リッカちゃんは小さめの桶を1つ持ちながら部屋へ戻ると、既にお湯の入った桶が2つ置いてあった。仕事が早いな。



 大きい桶に俺とリッカちゃんのボロボロの布を入れると、石鹸代わりらしき石を放り込みじゃぶじゃぶと洗う。リッカちゃんはその間に身体を拭いている。




 もちろん紳士な俺は後ろ向きだ。後ろでごしごし聞こえるのがなんとも…げっふん。



 「…コータの背中、やってあげる」



 ちなみに今俺はパンツ一丁だ、ズボンも今はじゃぶじゃぶ中。


 振り向く事が出来ない俺は、別にいいと言おうとしたのだがリッカちゃんが備え付けのタオルをお湯に付けて、俺の背中をごしごしとし始めた。




 (くおおおおおお…これはこれでいいっ!!!)



 なんとも言えない感じを味わい。洗濯の終えた服を干していく。干すと言っても搾った服を置いておくだけだけど。




 「ありがと、リッカちゃん」


 礼を言って、上だけ服を着るとベッドに寝転がる。



 「…ううん、助けてくれたし、ご飯も食べさせてくれたから」




 だから水汲む時もか…尚更気に入るわぁなにこの子…。



 じぃぃんと感動していると、リッカちゃんが俺の横に寝転がった。まだ小学生位だし、そんなねぇ…?



 「眠い?」



 頭を撫でながら言う、リッカちゃんはすでにこくりこくりと船を漕いでいる。



 「…ん…大丈夫…」



 「どう見ても大丈夫じゃなさそうだけど…俺はもう寝るよ?」



 枕が一つしかないのでリッカちゃんに譲ると、俺は撫でるのをやめて反対を向くように横になる。



 「…ぶー…おやすみ」



 「…おやすみ」



 おやすみを言ってくれる相手が居る事に感動しながら、眠りについた。




 明日も生き残って居られますように…







  名:斎藤浩太

 種族:人間

 状態:普通

 称号:冒険者→判断能力UP小 狂戦士の心得→一定の条件で基本能力UP中


    モンスターへの愛→テイム率上昇中 無差別凌辱 鑑定眼→判断能力UP中、鑑定能力持続


    魔王の心得→能力全体UP小 <異界者> 優しい心Lv2→敵、敵愾心減少中


    天性の顔つき(不)→相手の好感度減少率大 鉱石玄人→鉱石の扱いUP中


    毒薬見習い→全毒耐性UP小、毒効果時間、ダメージ減少小


    言語マスター→言葉理解100% 紳士 威風堂々→動揺率減少中


    比重の心理→仲間に対して相手の良さが濃く伝わる 体術家→体捌き40%UP


    心がイケメン→相手の好感度UP特大(要ニ年一緒にいること)


    不屈の心→精神力UP中 火事場の馬鹿力→命の危険を感じると全能力UP中


    ポジティブシンキング→精神力UP中、判断能力低下小 


    戦闘狂→戦闘になるとテンションが上がる 四面楚歌→精神力UP大


    体内魔素100突破→ボーナス>魔法使用許可1、能力全体UP小


    獣の子供→野外での行動力70%UP夜目UP大 地獄耳→聴力UP中


    モンスターハンター→モンスターとの戦闘時基本能力UP中その他能力UP小


    エスコートLv2→♀の好感度上昇率UP中 魔法使いの弟子→魔法の扱いUP中


    絶体絶命→命の危険を感じると判断能力UP大 鷹の目→目の良さUP中


    漁師→魚の扱いUP中 称号コレクター→全称号の能力UP補正小、習得率上昇小


    野生の勘Lv2→命の危険を感じると回避率30%UP 諦めが悪い→精神力UP中


    低燃費Lv2→魔法使用時消費魔素30%削減 ヘタレ エロの権化 


    カウンター→大雑把な戦闘能力が分かるようになる 童印の雑兵


    命を賭ける代償→特定の行動で♀の好感度上昇率UP特大(しかし相手が確認できる状態にあること)


    猟師の心得→動物の扱いUP小  ドラゴンの友達→威圧感UP中


    フラッガー→約束事を忘れなくなる インスピレーション→イメージした魔法を使える(劣化)


    スニーク→ハイド、ステルスのパッシブスキル入手可能









さて、ウォルが居なくなり新たなヒロイン?登場



次回、ウォル出てくるカナー?





 補足として、リッカは浩太に2度助けられ、命をかける代償の称号が発動しています、エスコートも相まってちょっとづつ、本当に少しづつ好感度が上昇しています。

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