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魔王が出来る3つの条件  作者: かずあ
魔王のマ!
8/29

魔王のマ!その8!

修正はいりました



 「ファイア!」



 これもちがうかー?



 「ウォーター!」




 これも不発ねぇ…なにが当たりなんだよ!!!




 飯の準備もせずに、魔法の練習です。だって魔法だぜ魔法!サバイバルも有利になるかもしれないし!





 「ぐぬぬ…」



 手をかざし、それっぽい単語を言うも手からは塵一つ出てこない。なにか条件があるのか?魔法陣とか。



 さすがに腹減った。飯獲ってくるか…




 幸い近くに川があるので水と食料には事欠かない。栄養の事はよく知らないがセリリを食っとけばなんとかなる…かなぁ。無い時はゼルーで補おう。



 周りを警戒しながら川へたどり着くと、どうやって魚を獲るか考える。釣りは時間がかかって却下だろ、手づかみ…は最終手段、ガチンコ漁法…やるか。




 魚はそれなりに泳いでいるので、獲り過ぎる事もないだろう。

 俺は少し大きめの石に陣取ると、魚が近くを通るのを確認して、ケルスを石に叩きつける。



 ガゴンと鈍めな音がして魚が浮いてきた。



 「へへへ…これからはサバイバー浩太と呼んでくれ」



 調子に乗ってゆっくり近づいたのがいけなかった。横になっていた身体がスイっと元へ戻り、何事もなかったかのように泳いで行ってしまった。



 ああ、俺の飯よ何処へ。どうやら回収は速く行わないといけないらしい。



 おんなじ要領で魚を3匹獲ってくると、川で洗った木の棒を魚の口から刺していく。鱗は…まぁ…うーん…。しょうがないのでこれまた木の棒を使い、ガリガリと取っていく。



 ある程度取れたらスパンで灯した火の回りに、焦げ付かないであろう距離を考えながら配置していく。マツタケみたいになればいいなとセリリも一緒だ。



 「今回は何時になったら街へ着けるのかねぇ」



 程良く焦げ目の付いた魚を手に取り齧る。




 「おぅぇ…」



 そりゃ下ごしらえも内蔵処理もしてないからな…。食えたもんじゃなかった。後の2匹は手を使い、頭をもぎ取って感覚で捌いていく。もはや捌いていくなんて表現が正しいのかも分からない。



 目に付く内臓を取り除いたら再度火にかけて行く。



 中まで火が通った所でまた一齧り。味は大して無いが、それでも食べなければ生きてはいけない。我慢しながらセリリと一緒に食べる。



 オールの木、どこかに無いかねー。

 初めの拠点の近くにあれがあったのがよかったな。飯にも水にも困らなかったし。




 汚れた口を腕で拭うと、辺りの探索を始めることにした。近くにモンスターの縄張りがありました、じゃおちおち寝ていられもしないからな。



 洞窟を中心に円状に探索をして行くと、どうやらここら辺にダレットベアーなるやつの縄張りがあるらしい。


 周りのちっこいモンスターが教えてくれた。教えてくれたっつっても話してるのを聞いただけだけどな。



 まぁ入らなければ害は無いって言うし。でもヒグマみたいな縄張り広い奴だったらうっかり入って鉢合わせとか…マジ勘弁。




 急に怖くなってきて探索を打ち上げにすると、ここまで来たよっていう印を近くに木に付けておいた。

 もうちょい遠くまで探索する予定なので保存食とか欲しいなぁ…


 背の高い木々の間を縫うようにして素早く移動する。レンジャーの称号すっげーよ、アスリート選手みたいなスピードが出る。



 少し調子に乗った俺はその脚力を活かして、木と木をジャンプで登って行き、街が見えるかどうかを試すことにした。




 「よっ、っふ…とぉ!」



 計13回のジャンプにより周りが見渡せる高度にやっと着いた。



 こっちで暮らしてみて日本じゃ信じられないほどのバケモノになったなぁと、登り切った時に実感する。



 目算150mをジャンプで登るなんて空想の御話だ。




 「ひょぉーこっちは木がいっぱいだなー。あっちは…さらに高い木がいっぱいだぁー。そんでもってさらにこっちは…む、街っぽいの発見!」



 方角なんてわからない。木の中で暮らして方向なんて気にしないからな。


 俺が進んでいた方角には森しかなかった。そっちを見て顔を左へ向けると今度はさらに高い、500mはあろう木が群生していた。ぱっと右を見ると同じくらいの高さに塔みたいなのが見えたので、明日はその方向に足を進めてみようと決める。




 「あ、降りるときどうしよ…」




 今の俺でもこの高さを降りて無事では済まないとわかる。数分悩んで、剣を木に刺しながら降りる事に決めた。木の枝から飛び降り、剣を振りかぶる。




 「それじゃあ…刺されよっ!」




 結果から言うと刺さりませんでした。なんだこのボロ剣、スクラップにする、絶対する!



 「なぁ…んでだあああああああああああああ!」



 さかさまになりながらもどうすればいいかと考えを巡らす。ポケットの中に手を突っ込み、手探りで掴んでいくとそれはあった。握ると程良い弾力で返してくれるそれはジャグ。



 体制を立て直し、地面から見て垂直に立つ。剣の刃を下に向け鍔に足をかけるとジャグを手に持ち、その手で柄を握る。


 やれることはやったと思う。次はどう出るか。


 もう地面との距離はそうない。数秒すれば激突するだろう。



 地面と剣が接触した時、ズグン!と鈍い音がして、手に猛烈な衝撃が走る。それは痛いとかではなくて、持っていたジャグがどこかへ飛んで行こうとする衝撃。たまらず手を離すと彼方へ飛んで行ってしまった。



 さらばジャグ、有難うジャグ。命の恩石は決して忘れはしない。


 地面から向けられる抗力はジャグがすべて受けてくれた。だからこうして立っていられるのだ。




 地面にめり込み柄の少しを覗かせている剣は、放っておくことにした。スクラップにするより自然に戻れゴミ剣め。




 ほうっと一息つくと洞窟へ向かう。よく考えてから行動しようと感じた一日だった。






▼△▼△▼△





 魚を腹いっぱ食べ、寝転がると魔法の練習を始めた。




 「ファイヤーボール!」



 身体の中で何かが動く気配はするのだが、手からは何も出てこない。



 こんなので本当に魔法が使えるのか半ばヤケになっていた時だった。




 「ファイヤーアロー!」




 手から違和感を感じ、なんだろうと思った刹那、小さい炎の矢が現れ消えてしまった。





 「う、おおおおお!魔法だ魔法!まほおおおおおおおおおおおおおおおお!」




 テンションが上がり過ぎて叫んでしまう。その後もファイヤーアローファイヤーアローと、連呼してみるが出てくる気配は無し。





 試しにファイヤ、と呟くとライター程の火が指先五本からチロチロと一秒ほど出てきた。なにか法則性でもあるのだろうか?




 その後も寝るまで魔法の練習をし、その甲斐あってか使えそうな魔法がいくつか見つかった。




 ファイヤ。見立てではライターの様なもの。


 ファイヤーボール。小さなゴムボール程の丸っこい炎が出てくる。飛ばせるかはまだ不明。


 ファイヤーアロー。小さな矢の炎が出てくる。飛ばせるかは不明。


 ファイヤーウォール。掌程の炎の壁っぽいものが出てくる。ここから大きくなるのかは不明。


 ファイヤーブリーズ。風をイメージしてみた。温風がながれてくるだけだった。



 以下、ウォーター、ウィンド、アース、も試してみたが効果は芳しくない。戦闘に使えそうな魔法は無かった。





 毎夜恒例の称号チェックへと移る。




  名:斎藤浩太

 種族:人間

 状態:普通

 称号:冒険者→判断能力UP小 狂戦士の心得→一定の条件で基本能力UP中


    モンスターの理解 無差別凌辱 鑑定眼力→判断能力UP中


    魔王の心得→能力全体UP小 <異界者> 優しい心→敵、敵愾心減少小


    天性の顔つき(不)→相手の好感度減少率大 鉱石玄人→鉱石の扱いUP中


    毒薬見習い→全毒耐性UP小、毒効果時間、ダメージ減少小


    言語マスター→言葉理解100% 紳士 威風堂々→動揺率減少中


    比重の心理→仲間に対して相手の良さが濃く伝わる 体術家→体捌き40%UP


    心がイケメン→相手の好感度UP特大(要ニ年一緒にいること)


    不屈の心→精神力UP中 火事場の馬鹿力→命の危険を感じると全能力UP中


    ポジティブシンキング→精神力UP中、判断能力低下小 


    戦闘狂→戦闘になるとテンションが上がる 四面楚歌→精神力UP大


    体内魔素100突破→ボーナス>魔法使用許可1、能力全体UP小


    レンジャー→野外での行動力50%UP夜目UP大


    モンスターハンター→モンスターとの戦闘時基本能力UP中その他能力UP小


    エスコート→♀の好感度上昇率UP小 魔法使い見習い→魔法の扱いUP小


    絶体絶命→命の危険を感じると判断能力UP大 鷹の目→目の良さUP中


    漁師見習い→魚の扱いUP小 称号コレクター→全称号の能力UP補正小、習得率上昇小


    




 一日でゲット出来る量が多いのか少ないのか…。魔法使いは魔法を使い続けると上がるのかな?夜は魔法の練習だな。




 「さて、明日は街だ!川で身体を洗ってから行こう」



 一人になってから独り言が増えた気がする。将来ハゲないよな…?



 焚火をそのままに、丸くなり目を瞑る。この状況になれてきたのか、寝付きは早かった。







▼△▼△▼△







 「……っけほっ」



 なにやら焦げくさい臭いで目が覚めた。どうやら焚火がまだ燻っているらしい。

 それを踏んで消すとウォーターで出た水で、顔を洗う。



 「うし!」



 パンッ!と頬を叩いて気合いを入れ、洞窟を後にする。川で魚を獲り、手慣れた手つきで捌いていく。今日はあの塔の所まで行くから少し多めで4匹な!



 ファイヤで火を起こし、魚を刺していく。



 待ってる時間に準備運動をすることにした。健康管理は大切だぞ。



 アキレス腱を伸ばしてる時、いい匂いがしてきた。匂いだけなんだよなぁ…。



 その中の2匹を平らげると、残りを手に持ち移動を始める。


 確かあっちのほうだったよなぁ?



 昨日の記憶を思い出しながら歩く。こんなことになるなら目印付けておくんだった。



 焦りながら、迷いながら歩いて行くと、さっきの森とはなんというか…雰囲気が違う森に入った。



 (なんだここ…なんだこの感じ…)



 じぃーっと見られているような不快感と、それでいて神聖な様な感じ。居てはイケない様な…例えるなら、体育で一人ポツンと余る様な…うぅぅぅ…。





 (駄目だ、引き返そう)



 奥に行ってなにかアクシデントに遭い、死にましたじゃ死んでも死にきれん。


 俺が踏み出した足を戻そうとしたその時。



 「………………ゃぁ」




 小さくだが確かに聞こえた、この奥から女の人の悲鳴が。

 どうする…どうする…?行くか…?でも俺が行った所で…



 そこであの盗賊から助けた女の人を思い出す。



 俺が行ったところで結局は…。と、そこまで考えた後自分頬をぶん殴る。何考えてんだよ!女の人が困ってるようなら助ける!それでいいだろ!


 少しのけぞった身体を、足をそのまま一歩踏み出す。でもちょこっと見て判断するだけ…な?






▼△▼△▼△






 周りに細心の注意を払い、少しづつ進んでいくと、窪んだ穴の様な場所に獣の様な耳をくっ付けた女の…子が倒れていた。

 いや、人?耳が付いてても人っていうなら人だな。



 近くに何も居ないのを確認して、近づいていく。




 亜麻色の髪の毛に同じ色の耳、胸は…む!Cだな。スラッとした太ももからの綺麗な足首へのライン、完璧だ。パーフェクト!

 体には葉っぱで出来た服みたいなのを纏っている、正直眼福です。



 「こりゃぁ誤って胸を触っちまってもしょうがない、よな…?」



 ひとまずここは危険だと判断して、手に持っていた魚をその場に置くと、お姫様だっこで来た道を戻っていく。もしかしたら、もしかしたらだなこの子とそういう風な感じになるかもな!

 途中胸に集中し過ぎて木に当たりそうになるが、無問題だ。木に当たっただけで胸を揉めるとか一万回ぶつかるぞ。



 そろそろ抜けられるといったところで、強烈な違和感を感じさっと身を屈めると何かが真上を通過した。ゴォォォウ!という音とともに。



 なんでそんなことが出来るのかと思ってそうだが、俺が一番驚いてんだ。むっ!殺気!なんて普通出来ねーよ。あ、俺もう普通じゃないのか。



 飛んできたものを伺うと、全長3mはあろうドでかい斧だった。歯の所がギザギザとしており、日の光を浴びてキラリと光るそれは一振りで俺の命を狩ってしまいそうで、ブルリと身震いをすると後ろを振り向く。



 "ソレ"は居た。俺と大して変わらない身長なのに、一目で敵わないと分かる。なぜか知らないがソイツとは対峙してはいけないのが脳から伝わってくる。



 (早く逃げなきゃ、早く、もっと、速く、ハヤク!)



 びびって動かない足を胸の感触を思い出し、無理に動かせるとさっきよりも速く足が動いてるような気がする。いや、お前は動かなくていいんだよサム。



 気分は野球のそれで大体この辺かな?という辺りまで来たらズザーとヘッドスライディングをかます。


 っふ…どうやら撒いたようだな…。



 後ろを向くがアイツは居なかった。あの聖域っぽいところから出てこないなら安心なんだけどな。


 ………今日は街を探すのをやめよう。この子も居ることだしな!安全第一だ安全第一。決してやましい事は考えていないぞ。




 と、いうわけで今日はまた洞窟に戻ることにした。




▼△▼△▼△







 もうこないと思っていたが早い再会だったな、我が第二の仮宿よ。



 そこら辺に落ちている木の枝や枯れ草を拾い、魔法で火を付けると熱くならない程度の所に女の子を置き魚を獲りに行く。


 昼飯のつもりだった魚は置いて来ちまったし、女の子が起きた時腹が減ってたらいけないからな!




 いくつか魔法の練習をしながら歩くと、すぐに川へ着いた。感じがする。



 多めに5匹獲ると、ぱぱっと下ごしらえをしていく。称号って便利!




 木の棒に魚を刺したまま洞窟へ帰る。女の子はまだ気を失っているようだ。


 女の子の対面に座ると順繰り魚を突き刺していく。




 「にしても何時起きるんだろーなぁ」



 いい加減暇になってきた。紳士の所業ではないけど、視ちまうか。




 名:????

 種族:人間/シルファング/バッフィー/エルフ

 状態:気絶14%

 称号:クオーター 野生の勘→命の危険を感じると回避率15%UP


    サバイバー→野外での行動力30%UP






 14%ならもうすぐ起きるかな。にしても種族が大変な事になってるな。名前も分からないし…どうすっぺか。



 やっぱ俺がおかしいのかなぁ、称号が少なすぎる。丁度いいのでチラリと手をかざして視ると、また称号が増えていた。






  名:斎藤浩太

 種族:人間

 状態:普通

 称号:冒険者→判断能力UP小 狂戦士の心得→一定の条件で基本能力UP中


    モンスターへの愛→テイム率上昇中 無差別凌辱 鑑定眼力→判断能力UP中


    魔王の心得→能力全体UP小 <異界者> 優しい心Lv2→敵、敵愾心減少中


    天性の顔つき(不)→相手の好感度減少率大 鉱石玄人→鉱石の扱いUP中


    毒薬見習い→全毒耐性UP小、毒効果時間、ダメージ減少小


    言語マスター→言葉理解100% 紳士 威風堂々→動揺率減少中


    比重の心理→仲間に対して相手の良さが濃く伝わる 体術家→体捌き40%UP


    心がイケメン→相手の好感度UP特大(要ニ年一緒にいること)


    不屈の心→精神力UP中 火事場の馬鹿力→命の危険を感じると全能力UP中


    ポジティブシンキング→精神力UP中、判断能力低下小 


    戦闘狂→戦闘になるとテンションが上がる 四面楚歌→精神力UP大


    体内魔素100突破→ボーナス>魔法使用許可1、能力全体UP小


    レンジャー→野外での行動力50%UP夜目UP大


    モンスターハンター→モンスターとの戦闘時基本能力UP中その他能力UP小


    エスコート→♀の好感度上昇率UP小 魔法使い見習い→魔法の扱いUP小


    絶体絶命→命の危険を感じると判断能力UP大 鷹の目→目の良さUP中


    漁師→魚の扱いUP中 称号コレクター→全称号の能力UP補正小、習得率上昇小


    野生の勘→命の危険を感じると回避率15%UP 諦めが悪い→精神力UP中


    低燃費→魔法使用時消費魔素20%削減 ヘタレ エロの権化 


    カウンター→大雑把な戦闘能力が分かるようになる 


    命を賭ける代償→特定の♀の好感度上昇率UP特大(しかし相手が確認できる状態にあること)



 また増えてる。ヘタレとエロの権化いらねーだろ絶対。不名誉だ!にしても野生の勘に低燃費、命を賭ける代償ね…どんどんバケモノに近づいてくな。俺は今更別に構わないけど、こんなので夢の実現が出来るのかねぇ。




 「うぅ…」



 そうこうしている間に女の子が起きたようだ。気絶していたから命を賭ける代償は意味ないかな…残念だ。



 「ここは…。!がうるるる!」



 俺を確認するや否や飛んで距離を置き、威嚇してきた。失礼な子だな全く。生チラは頂きました。



 「一応命の恩人みたいなもんだぞ?その態度、失礼過ぎないか?」




 もう2度とあんな奴に追われたくはない。追われてたのかも分からないが、奴に背を向けたくはない。

 すると女の子が何を言っているのか分からないといった顔をしているので、あの聖域で起こったことを細かく話して言った。











 「ん、たひかに。奴はそういう奴だが、んぐ。どうして追はれなかったんら?」



 只今お魚3匹目。相当おなかを空かせていたらしい。



 聞いた話によるとアイツはあそこの主みたいなもので、毎年この時期に生贄を欲するらしい。女であれば何でもいいので、生まれた所を追い出され途方に暮れたこの子を見つけて丁度いいと生贄にされたんだとさ。この近くの村や町などじゃ有名な話らしい。




 「んじゃなにか、お前名前もなくて帰るところも無いと?」



 赤ん坊だった頃は温情で暮らしていたらしいけど、親が他界してからは相当酷かったと言った。その他界が最近だってさ。




 「そうだ。お前話を聞いてよくそんな言葉が出てくるな」




 「いやぁー、あははは。それよりも、これからどうすんの?」




 笑って誤魔化し話を逸らす。これでうまく一緒に行動するってなったらもうけものだな。女の子は頬をポリポリ掻いて、どうしようかなぁといった表情をする。ここだ!!



 「じゃあ俺と一緒に行かない?何かと便利だと思うよ」



 一か八か魔法を見せる。ギルドで魔法使いっぽい恰好の奴が居なかったので、珍しいと踏んでの行動だ。指先からは小さな火。それを見て女の子は目を輝かせていた。




 「なにそれ!魔法!?すごーい!いいなぁー」



 予想より斜め上の反応だったので少し鼻が高くなる。褒められるのって悪くないよな!女の人からの扱いが酷かったのも相まって、調子に乗ったら魔法が出なくなってしまった。




 「ありゃー?今日はお終いか。んで、どうするお嬢さん」



 昨日の夜もこんな感じに急に出なくなったので、エネルギーみたいなのが切れたんだと思う。きっと一晩寝れば使えるようになるだろう。




 「んー。(顔は悪いけど、今のところは大丈夫な感じだし…服も乱れてないし)いいわよ、一緒に行ってあげる。」




 「…………………」



 「どうしたのよ?一緒に行くって!」




 むー…アイツと、あの子と同じ顔だ。大体何を考えているのか分かる。値踏みし過ぎだっての、顔を見ながら。でも…んむぅ…まぁ印象変わるかもしれないし、キッカケがあるかもしれないし!あわよくば…ぬふ。




 「おう、それじゃあよろしくな。名前どうする?無いと呼びにくいぞ」



 「んー適当に付けて(どうせすぐ別れるし、なんでもいいでしょ)」



 ふーむ。これはネーミングセンスが問われる選択肢だな。ここで一発、俺のいいとこ見せてやるか!



 「ウォルなんてどうだ?」



 シルファングのうなり声に似てたから狼を連想してみました!反応は如何に。



 「まぁそれでいいわよ(普通ね)」




 まぁ普通ねみたいな顔された。街の奴らみたいに変な眼で見られないのが嬉しすぎて、ちょっと喜び過ぎてしまった。



 「それじゃあ、もう寝るから。ここよりこっち、入ってこないでね。入ってきたらズタズタにするわよ」



 おっかねぇな。女の子だったらもうちょいお淑やかにだな…



 「はい」



 なんて言う勇気もなくて。だってせっかくこんな子に会えたのに、変な目で見られるのに戻るなんて嫌だよ。



 一度薪を集めに行って帰ってくると、すでに寝てしまったようだ。



 お尻からは可愛らしい尻尾が覗いている。寝る前に毛繕いでもしたのだろうか。




 少し距離を置いて、新しい薪を火にくべるとゴロンと横になる。



 まぁなるようになるだろう。でも今度はもうちょっとうまく立ち回ろうかな。



 そう決めて一言。



 「おやすみ」



 返してくれる相手は居るのだが、当然返事は無し。明日も生きていられます様に。








新たなるヒロイン候補登場。どうなる主人公!次回へ続く!

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