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魔王が出来る3つの条件  作者: かずあ
魔王のマ!
3/29

魔王のマ!その3!



 「×××××―!!」



 「うっわぁあああああああああああああ!!?」




 あの変な泣き声によって強制起床ね…ははっこれで目覚まし要らずってか。そのうち狩ってやる絶対にだ!



 「くっはー…眠いけどさっさと用意しなくちゃ」




 持っていくものはまとめてある、用意とは墓の事だ。そこら辺からケルスを見つけてきてケルスとケルスをかち合せる。さすがに自分と同じ硬度じゃ、割れないなんてことはないだろう。




 スコップの代わりに、少し尖ったケルスを片手に簡単にだが穴を洞の近くに掘っていく。もちろん周りに注意しながら。あの泣き声のやつが近くにいるかもしれないからな。



 「さてっと、これくらいで全部埋まるかな…」



 直径40㎝深さ80㎝くらいの穴ができた。これなら全部埋まりそうだな、っしょと。



 カロカロンと手当たり次第に放り込んでいく。これで…手紙はどうしようか?…有名人っぽいし持っておこう、後でキーアイテムになるかも。



 「これで終了っと!」



 仕上げにケルス同士で名前を彫ったやつを墓標代わりに刺しておく。名前は手紙からの見よう見まねだ、うまく彫れているかは分からない。




 薬にはお世話になりました、あなたはめっちゃすごい人でしたよ。後手紙持っていきますね、では。手を合わせ数秒ナムナムした後。



 「そろそろ行くか」



 うまく町、村が見つかるといいけど。川沿いには村とか出来やすい言うし、可能性としては高いよな!



 持ってくものはこれで全部かな…薬草は尻ポケットに、鉱石類はそれぞれ左右の、小瓶は手に持つ形だ。うっかり割れてましたじゃ肝心な時ヤバいからね。












 「ほいほいほいっと、…少し練習しただけでこんな出来るもんか?」



 ジャグで身軽にオールの実を採っていく。今では口で…なんてこともできそうだ。



 ちょっと多めの4つでいいかな。朝飯分の2つを取り出し口へ運ぶ。この養殖されたってやつ食ってみたいよなー正直、他に食えるもんないからこれ食ってるだけだもんな。中身の汁も違わずちょっと酸っぱいし。




 「ま、文句は言ってらんないんだけどさ」



 そう言うと果汁で濡れた口元を手で拭い、昨日付けた目印を辿って川を目指す。出来れば何事もなく着きます様に。って言うのは嘘でフラグじゃないからね!



 時すでに遅しとはまさにこの事、目の前にはプルプルプルとブルプルー。周りには気を配っていたはずだがどうして…とりあえず昨日と同じ作戦で。




 「ほら、こいよ!」



 伝わっているかわからないが罠にはめるために挑発する。飛び込んできたらセリリを食わせてやるよ!デザートにノキアもいかがってな!



 

 飛び込んでこないな…さっきからプルプルしているだけ。なんか食ってんのか?とりあえずセリリをシュート!ブルプルーに触れたセリリはその場所から溶かされていく。



 「これでひとまず安心っと…お?」



 ちらりとブルプルーを伺うと




 名:ブループルー

 種族:スライム

 状態:損傷78%

 説明:ブルプルーが長い月日を経て力をためた結果、有酸無酸を切り替えられるようになった種。また、ある程度の人語を理解し、捕食時の停滞もないので非常に厄介。ブルプルーと同じく核が弱点。また、採り込んだ物質の形状を1回に限り真似できる。成分は同じく水。




 ほえーブルプルーの上位互換か。説明を見た限りじゃ、今の俺に相手できそうな奴じゃないな…ここは逃げるが勝ち…?




 名:ブループルー

 種族:スライム

 状態:損傷82%

 説明:ブルプルーが長い月日を経て力をためた結果、有酸無酸を切り替えられるようになった種。また、ある程度の人語を理解し、捕食時の停滞もないので非常に厄介。ブルプルーと同じく核が弱点。また、採り込んだ物質の形状を1回に限り真似できる。成分は同じく水。




 あら、損傷の部分が増えてる100になったら死ぬってことか?…ふむ




 「よーしよしよし、俺は敵じゃないからな!ほほいっと」




 尻から薬草を取り出しそのままブループルーに与える。昨日のブルプルーよりも、一回り小さかったのでオールの果汁も与えてみた。予想通り、果汁がそのまま核のまわりの酸になるらしい。



  名:ブループルー

 種族:スライム

 状態:損傷34%

 説明:ブルプルーが長い月日を経て力をためた結果、有酸無酸を切り替えられるようになった種。また、ある程度の人語を理解し、捕食時の停滞もないので非常に厄介。ブルプルーと同じく核が弱点。また、採り込んだ物質の形状を1回に限り真似できる。成分は同じく水。





 ずいぶん落ちついてきたな…お、動くか…?




 「ってぶねええええええええ!」



 やはりまだ敵だと思っているのか俺の顔目掛けて飛んできた、が、やつも本調子ではないらしく、横をかすめ飛んでいく。危うく顔が爛れる所だったぞ…



 「これでおしまい!助けてやったんだから襲おうとか思うなよな!」



 最後の薬草を投げつけて言い放つ、人語を理解できるならこれくらいは必要だろう、もっとも従うかどうかは別だけど。





 名:ブループルー

 種族:スライム

 状態:良好、テイム可能

 説明:ブルプルーが長い月日を経て力をためた結果、有酸無酸を切り替えられるようになった種。また、ある程度の人語を理解し、捕食時の停滞もないので非常に厄介。ブルプルーと同じく核が弱点。また、採り込んだ物質の形状を1回に限り真似できる。


 




 そろそろ逃げ出さないとな、ダメージはきれいさっぱり無くなっている。それとテイム…?ゲームみたいに仲間にできるってか?けど方法を知らないしな…



 まぁさっさと、トンズラこきますかっと。そう思い背を向けた時だった、突然背中に衝撃を感じ顔から倒れ込んでしまった。何をやってんだ俺…!動ける敵を前にみすみす背中を見せるなんて!溶かされる前に退かさないと!



 「んの!離れろって!」



 背中に張り付いているだけあって中々取りにくい。…?もう1分もそうやって、くるくると回っている訳だけど溶かされている感じがしてこない。



 取れないしまわるのを諦め、その場にドスンと座る。ブループルーはそれに満足したのか背中から肩に移動してきた。




 「お前なんで俺を溶かさない?」



 理解できているのならなんらかの、アクションがあるだろう。しばらく肩の上でプルプルしていたブループルーが顔に覆いかぶさってきた。ほんとなんなんだよコイツ…と思っていたら、口の中に何かが入ってくるのを感じた。




 「んぐ…んっ…ごぼっ…ぐる…」



 先ほど与えたオールの実の果汁のせいでいくらか酸っぱい味がする。俺にそんな趣味ねーっての!



 「んが…ぼらぁ!…けほっけほ…あ゛ぁーしんどっ」



 覆いかぶさっているブループルーの核を、手探りに探し少し力を加えてやると逃げるように離れて行った。




 「はぁーなんなのお前?なにがしたいわけ?」




 そう問いかけるが答えは無し。しゃべれないんだから当たり前か。もしかしてあれか?ブループルーは起き上がり仲間になりたそうにこちらを見つめている!とか?




 「…こいよ、ほら」



 右手を差し出し肩に乗りやすくすると、ブループルーは器用に飛びつき、スルスルと登ってきた。スラリンが仲間になりました!ってか。



 「…っこら、やめろってば…酸っぱいだろ」



 機嫌をよくしたのかプルプルとしたものを顔に擦りつけてくる。でもまぁ仲間になるんだったら頼もしいよな、長い年月って事はこの森のことを良く知っているかも、それでいて人語をある程度理解って運良すぎだろ…ご都合主義なのか…?




 「よし、じゃあジル、それがお前の呼び名だ。ブループルーじゃ長くて呼びにくい」




 とりあえず名前付けてみるよね!犬とか猫感覚で!もっとも相手はモンスターだけど。すると気に入ったのかそうでないのか、横にプルルッっと震えまた口の中にゼリー?を入れてきた。




 「っだから、やめろ、っが…んぐ…っぱぁ!」




 し、死ぬ、せめて甘くなってくれ…。しかしさっきから、なんで口の中にゼリーを入れてくるんだ。当事者からしてみたらたまったもんじゃないぞ。いや、そういう趣味の人はいるかもしれないけど俺は違う。




 「あ、ジル、お前この近くに人間が沢山住んでる場所って知らないか?」




 知ってたら、教えてくれたら、伝わっていたら、随分と楽になる。それだけで生きていける確率が上がる。もうジルに背を向けるような失敗はしたくない、なるべく早く情報がほしい。



 ジルは俺の肩に乗りプルプルとした後、いい感じの場所を見つけたのか一瞬動かなくなると、ゼリーを川上の方へと向けた。川まではまだ距離がある、少しショートカットしていくか。



 「さんきゅージル、それじゃ行く…なんだよ…?」




 何を考えているのか、歩きだした俺の頬をぺちぺちとゼリーで叩いてくる。ひんやりしてて気持ちいいけど、なにを伝えたいのかわからない。




 「だからなんだって…ん?」




 ゼリーを俺の頭までもってくると撫でるような動きをして、こちらを窺うように上下にゼリーをぐにぐにし始めた。撫でてもらいたいってことか?んや、ほめてほめてー!か?




 「…ありがとうな、ジル。ホントに助かったよ」



 そう言いながらジルの頭?上らへんを撫でる。あぁ…気持ちいい…。ぷよぷよしてるぅうう、癒しだ…唯一の癒しだ…。ジルはお気に召したのか、興奮した様子でゼリーを伸ばしながら上下左右に揺れている。




 とりあえず川についたけど…うーん…今は昼ちょっと過ぎくらいか…?どのくらいの距離なんだ?もうすぐ着く?それともまだかかる?せめて夕方には着きたい。ばーちゃんやじっちゃんの田舎に遊びに行った時、夜、街灯が少なくてめっちゃ怖かった覚えがある。こっちにあるのかは分からないけど、森にはないだろう。そんな暗闇でモンスターにおびえながらなんて、いくら優秀なサバイバーでも辛いと思う。ましてやそんな知識もない一般人の俺が…なんて無謀もいいとこだ。




 「ジル、ここからどっちだ?それとどれくらいで着きそう?」




 川で水を吸収しているジルを呼びながら、自分も手で水を掬い一口。やっぱ水はサイコーだな、一口飲むとついいっぱい飲みたくなる。




 「おっとと、もういいのか?」



 肩に飛びつき定位置に付くと、うなずくように上下に揺れる、ゼリーをさらに川上の少し左斜め前へ指さしブルブルブルと揺れた後、フルルッと身体を震わした。なんのサインだ?まだ川上に行けってのは分かった。うーむ…




 「急がないと着かないぞってことか?」




 思ったことを伝えると違うと言わんばかりに、頬をぺちぺちしてきた。…かわいいけど冷たいんすけど。どうやら違うらしい。となると




 「もうすぐ着くからあまり急がなくていいってことか?」




 今度は正解らしい。上下に揺らすと、よくできましたと頭にゼリーを伸ばしてくる。子供じゃねーっつの…あ、でもジルからしたら全然子供か。なんか複雑だな。撫でられ続けるのも恥ずかしいので、今度はこっちが撫でることにした。少し冷たいが我慢できないほどでもない。撫でられると嬉しいのか、頭へ伸ばしたゼリーを戻して手にすりすりしてきた。やっべぇ、めちゃくちゃいいんだけどなにこれ。




 「もうジルと結婚してもいいわ」




 おっとつい言葉に出てしまった。メスかオスかもわからないのに、つか性別なんてあんのか…?細胞分裂するんじゃね…?




 「お、え?なんだなんだ、わっぷ、ジル、なんだって」




 急にぶるぶるし始めたと思ったらぺちぺちと顔を叩き頭の上に登って行ってしまった。まさか理解できたってことか?いやぁ…でも…なぁ?まぁいいか。町、村に着いて宿をとれたらどれくらい理解できるのか試そう。




 「さって、行くとしますか」



 もう休憩も十分だろう。こっちに来てから疲れにくいな、これも要検証か。自分の能力は把握しておきたい、細かいことでも、わかってる事があるだけで有利に進むことだって、あるからさ。




 「―――見てろよ、後悔させてやるから」




 頭を振り考えを散らすと走り出す。なんかよくわかんないなぁ…チクショウ。泣きたくないのに涙が出てきた。目の端に出来た涙溜まりを親指で拭っていると、ジルがゼリーで反対の目を拭ってくれた。




 「ありがと、ジル。これからよろしくな」




 そういえばまだ言ってなかったなと思いだし、口に出す。情けねーなぁ俺。もっと強くならないとな。聞こえたのかわからないけど、ジルはゼリーで拭った後、肩に戻り胸を張るように上に伸びをするとぺちんと叩いてきた。ははっ頼もしい相棒だこと。





 「そろそろか、言葉、大丈夫かな…ジルにも通じるし平気かな?」




 見えてきた門?を見る限り村らしい。木を細く切り、先を尖らせたやつを上とこちらに向けて設置している事からたまーにでもモンスターが襲ってくる、せめて何かしらの障害が向かってくるだろうという事が伺える。




 「よし、ジル。なるべく大人しくしていてくれよ?」




 暴れだしたらやっと見つけた村なのに、歓迎どころか追い出されてしまう。それだけは避けなくてはならない。とりあえず身体洗いたい…川が遠いから洞から出て探索して、採取してってしてると時間が無くなって結局飲む位しかできないんだよね。



 「わかったわかった、ごめんって」




 抗議するようにペチペチと叩いてきたので撫でておく。こうすると大抵は大人しくしていることがわかった、たまーにゼリーの中に手を入れるから、ヒヤッってする。いや、冷たさ的な意味じゃなくて手が爛れる的な意味で。




 「よっしゃ、第一印象が大切だからな、張り切っていくぞ!」




 今できる精一杯の笑顔を顔に張り付けて、門番をしている兵士に近づいていく。こっからが出発点、俺たちの戦いはまだまだこれからだ!!心の中でそう呟くと、肩で静かになってるはずのジルが顔に覆いかぶさり、口にゼリーを入れてきた。最後くらい締めさせてくれジル…頼むから…。ホントに、切実に。








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