ここからが本番だ(3)
「・・・・。」
長い沈黙。
(出来ないのか?なんなんだ・・。)
反応がないことに、イラつき始める。
将軍の後ろからは、ざわめきが聞こえる。
どうすんだ?、いや無理だろ。、あの急斜面だぞ、俺は行くぞ。
口々に呟いていた。
確かに、尋常のないほどに崖を降りるのは辛そうだ。
でも、俺には自信があった。
(こいつなら、やってくれる)
長年の勘、付き合いの長さからくる自信だろう。
正面を見た。
そこには、敵にすると1番恐ろしいであろう我が軍の魔王の笑みだった。
「ふっ、そうか。このベーベル国最大の軍隊がこの崖ぐらいで恐れるわけがなかろう。」
(堂々と言い放ったじゃないか。)
顎を上にあげながら首を振った。
「ロイ、どうせお前のことだ。何か勝ち手となる策なんだろう。」
「あぁ。これが成功したらな。」
この一言を聞いて安堵したのか、声を張り上げる。
「お前らぁーーーーーーーーー。この私がいる軍にできない事などないっ!
準備しろーーーー!!」
将軍の声に答えるように、おおおおおおおおおおおぉぉーーーーーーーーーーっ。と騒ぎ出した。
その様子を見て、苦笑いする。
(お前の軍は、士気が馬鹿なぐらい高いんだよ)
五月蠅いテント内から、逃げるように出ていく。
(これで、準備は完了したな。前線に行くとするか。)
マントを翻し戦場に戻った。
*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・
私が守っている陣地を通り、いよいよ1軍にたどり着いた隊長が乗り込む。
「戻った。」
一言宣言した。
すると、仲間の動きが変わる。
深重に戦ってた1軍と2軍が、隊長に尽いていくようになだれ込む。
(こんなにも、ロキ隊長が居るだけで兵の士気も変わるのね。)
妙に納得する。
反対に、悔しくも思う。
(私にはこれだけのカリスマ性や、統一を指揮できない。)
自然に手に力が篭もる。
眉間に皺ができているような気分。
尊敬と嫉妬が入り混じっている。
(私はこの人に一生ついて行こう。)
自分の胸に決心がついた。
(隊長には、どれだけの重力が掛かり、負担が圧し掛かっているのだろう?)
せめて、私にできることは成し遂げてみせる。
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後ろで自分の背後を守ってくれているリランがいる。
「大丈夫か?尽いてこいよ。あと少しここを持たせるぞ。」
なるべく、優しく伝えようとした。
目の前の敵を斬りつけ
「気にしないでください。貴方の部下ですよ。尽いてきます。」
リランの言葉を聞き、いつも尊敬する。
(女の身でここまでできるとは、初めは思っていなかった。)
目を再び見開き、敵の真正面に突っ込んで行く。
「さぁ、誰か俺に挑める奴はいるか?」
小馬鹿にしたような音色だった。
(我ながら、やな奴だな。)
誰にも見せないように笑った。
ーーーーさぁ、誰が最初の犠牲になるのか?
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