揺らぐ気持ち
グサッ・・・
重い者が地面に落ちる。
その姿を見守る。
いや、見守るではないかもしれない。
見送るのだ。
地面に血が滴る。
生臭く、生温かい。
ベタリとした感覚。
汚れて、流れ落とせない。拭っても落ち切ることのない、恐怖。
体に冷汗が伝う。
尋常ではないほど、流れ出す。
(また一人、罪のない人を殺してしまった・・・)
この気持ちは、後悔なのか焦りなのか?
誰にも理解しきれない気持ち。
気持ちに反映されるように、手から汗が湧き出る。
危うく、剣を滑り落としてしまいそうになる。
(剣を手放す・・・それは命を人生を捨てること。国を裏切るということ。)
「はぁ、」
苦悶の滲みでる呼吸。
辺りは、闇に包まれてる。
太陽が沈み、光が消える。
(ここが、俺の居場所)
人生の定理。
自分の役目から、逃れられない。
自分の役目から、規則から、縛られた。
これが当たり前なのだ。
そのはずなのだ。きっと?
(なのに、俺はどうしたんだ?)
自分の気持ちに追いつけない。
整理ができていないのだ。
辺りをまた見回す。
(敵が探りに来るかもしれない。はやくこの場から姿を、痕跡を消さなくては・・・)
足元に転がっている死体に目を向ける。
(ここらへんに、埋めておくか。)
顔にかかっていた血が乾いて固まっていた。
擦る様に、両手で拭う。
髪を掻き上げ、気合をいれなおす。
(最後の仕事だ。)
穴に埋めいれようとすると、遠くから忍び足で近づいてくる。
(あと、30秒)
埋めようとした死体を、草むらに放り投げた。
そして、跡形もなく闇に消えた。
ーこれが、自分の役目
ーここが、俺の居場所だ
心を抉られる痛みが、胸を刺した。
これでは、人を殺すのではなく、自分殺しではないか。
空から不気味な笑い声が響いた。
ーなんなのだ。この気持ちは?
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