ここからが本番だ(7)
かなり短くなりましたが、お付き合いください。
(俺が剣を落とすなんて…)
剣が手から落ちた感覚。
もう二度と味わうことのない体験。
――――繰り返してる場合じゃない・・・。――――
猛毒の影響で、手足が痺れてくる。
微かに残る自我にすがりそうになっていた。
自分の体の状況が把握し切れてなかった。
はっきりしない意識の中で精神を正そうとする。
意外にも、男の剣に塗られていた毒は強く周りの外気に接触、接近するだけで毒に耐久性がない者は
気絶するほどの代物だ。
そんな中、剣を手で探した。
視力が霞みつつある中で、右手で剣を掴もうとしたその時、右手が動かなかった。
(っっづ…!?)
右手に力を入れる。
渾身の力を右に込める。
血管が浮き出るほどにだ。
だが、右手は本人の意志に逆らった。
(右手が動かない。)
毒が右手全体に広がっていた。
じわりじわりと毒が体に回っていることが実感する。
(致命的なミスだ。)
「ふっ、私の勝ちだな。そこそこやる貴殿に教えてあげよう。」
目の前の男が一歩前に出てきた。
ジャリジャリと左耳で聞こえ耳障りに鳴る。
片足をどんっと踏み出し大きく息を吐いた。
(・・・。)
「私たちが仕えているのはサラフ゛国の英雄、ナバルト様だ。」
まるで自分を自慢しているように聞こえた。
男は本当に心酔してるのだ。
誰にでも解るような目の輝きぶり。
普通の人が見たらドン引きするレベルだ。
とても見ていられなかった。
昔の自分を見ているようで、気持ち悪い。
辛い苦しい思い出が頭の中をフラッシュした。
(…………)
だが、ほっとした自分がここにいた。
自分でも驚きだ。
顔の筋肉が緩みそうになる。
だが、敵の前では油断した顔を見せるわけにはいかない。
(もうそろそろいいか。)
さっきまでの苦しい顔ではなく、悪意の含んだ笑顔を見せる。
のし上がるように立ち上がる。
敵は目をおもっきり開いた。
「おい、なんで立てるんだ!?」
素直な感想を述べてきた。
普通の人なら死んでるはずの戦い方だった。
そう考えるのも不思議ではない。
(まぁ、妥当な意見だ。)
剣を右手で持ち直す。
「な!?」
またもやいい表情。
次は口まで開いている。
なんか可哀想にもなる顔だ。
しかたがないな、お前は俺を討てたと思っていたのだから。
俺は手を叩いて拍手をした。
感心と失敗に対して。
「大丈夫か?俺は平気だがな…」
見下ろす様に立ち上がる。
我ながらに、口説い戦いだったな。
ねちねち回りくどい戦法で時間は食ったが、すべての準備が終わった所だろう。
そしてこれにて終了。
(だいぶ、疲れたが・・・。)
男と周りに散らばっていた家臣を確認する。
(俺の任務は完了だ。おっさん、情報ありがとうな。あとはあいつにかかっている・・・・。)
空を見上げると、あの日と同じ曇りだった。
なぜ、死なないのか?
過去に秘密があるんです・・。
次回も見てください!!
感想・意見・指摘などぜひぜひお願いします。




