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#1《チート能力者》

 この世界には、能力というのがある。

 所謂(いわゆる)異能の力ってやつだ。

 それが使える人間もいれば、何も使えない人間もいる。

 というよりも、使えない人間が多いのが事実だ。


 ゆえに、能力者は貴重なのだ。

 …だが、少し問題がある。


 もしも、その貴重な能力を得た人間がどうしようもない人間だったら。

 そしてその人間が、暴れたりしたらーーーー

 その時はもう、大体の人間は止める事が出来ない。

 そう、同じ能力者以外は止める事が出来ないのだ。


 …そんな、二種類の人間が入り混じるこの世界で。

 僕こと……又理三(またり さん)は今を生きている。


     ***


「なんでお金を増やす能力が私には無いのかしらねぇ」


「…そんなんあったら色々と終わるぞ」


 と、僕は友達の博麗霊夢(はくれい れいむ)とそんな会話をしながら街を歩いていた。


「どう考えてもこんな妙な能力があったって金にならないんだからさぁ。だったら、そういう能力が欲しかったもんだわ」


「…また今月ピンチなのか?」


「当たり前じゃない。金持ってたらこんな事言わないわよ〜」


「確かにな、少なくとも金持ってる奴の発言じゃない事は確かだ」


「でしょ? つまりそういう事よ。なぁんで私には空を飛ぶ程度の能力しかないわけ〜? 意味わかんないでしょ」


「…能力を貰ってるだけ感謝だろ。この世界には能力を持てない人間がザラにいるんだからな」


「けど、アンタだって口癖のように愚痴を言ってるじゃない。…こんな能力いらなかったってさ」


「いやお前…僕の能力ならそう考えたって当然だろ……」


「それでも、能力貰えてるんだったらぐちぐち言わないほうがいいんじゃないの?」


「お前は空を飛べるっていう利点のある能力だからいいじゃないか。それに対して僕なんて…」


 ため息を吐きながら。


「確かに能力としてはめちゃくちゃ強いけどさぁ」


「強いんだったらいいじゃない。能力を使ってしまえばアンタが最強なんだからさ。ま、そんな事言ってたって意味ないし、この辺で辞めときましょっか」


「…だな、無駄な議論だしな」


「というかさ、なんか中途半端よね」


「…なにがだ?」


「能力者ってさ、それなりに少ないわけじゃん? …けど、全然いないわけじゃない。千人のうち一人くらいいるレベルってわけじゃん?」


「…まぁ、割合的に見たらそんくらいだろうな」


「なんか、それじゃあ特別感ないわよねぇ……」


「お前、そんなの求めてたのか」


「当たり前じゃない。十万人に一人とかならまだしも、千人に一人ってねぇ…なんか、結構希少価値が薄れてるわけじゃない?」


「そうかなぁ…千人に一人でも充分希少価値高いと思うけどな」


「アンタはそう思っても私はそうならないの。つまり、アンタはその程度の人間だって事よ」


「あれ…? なんで僕馬鹿にされたんだ?」


 流れるように馬鹿にされてしまった、なぜだ。


「子供の頃はテレビとかに出たりしてちやほやされてたけどさぁ、今となっては私の能力も薄れてきちゃってるし…ちやほやされなくなっちゃったのよねぇ」


所謂(いわゆる)過去の栄光ってやつだな」


「…悔しいけどそういう事なのよねぇ。私の能力なんてただ空を飛べるだけだし。それに…ありがちな能力だしね」


「だが、僕からしたらその能力めっちゃ便利だと思うけどな。だって空が飛べるんだぞ? …ロマンしかないじゃないか」


「…アンタだって同じ事できるじゃない」


「いや…できねぇよ流石に。空を飛ぶのは絶対無理だ」


「そうかしらねぇ…私は案外いけなくもないと思うんだけど。けどアンタってテレビに出たことないし、ちやほやもされてないし認知もされてないわよね」


「…まぁ、僕がそういうバラしてないってのもあるけど」


「ま、アンタのその能力がバレたら確実に引っ張りだこでしょうからね〜。そんなヤバイ能力…正直羨ましいわねぇ」


「…じゃあお前、僕の能力が欲しいっていうのか?」


「正直いらないわね〜。一日貸してくれる程度でいいかも」


「…はぁ、なぁんで僕はこういう能力になったんだろうなぁ」


 と、僕が肩を落としながら歩いていると…その瞬間。

 甲高い絶叫とともに、轟音が響き渡った。


     ***


「…おっと、ややこしい事が起きちゃってるみたいねぇ」


 音がした方向に視線を向けてみると、何故か建物が倒壊してしまっていた。

 普通の人間だったらこんな事ができるわけないし……


「…能力者が暴れてるっぽいなぁ」


「んじゃ、アンタ頑張りなさいね〜」


「…なんで僕に任せるんだ」


「だって私は空を飛ぶ程度の能力よ? 戦闘ってよりサポート的な性能をしてるんだから勝てるわけがないじゃない。それに対して…アンタは完全に攻撃に特化してるんだから、どう考えてもここはアンタが対処するべきでしょ」


「…なんだけどなぁ。わかるだろ? 僕は能力を使いたくないんだ」


「知ってるけど…じゃあこのままこの騒ぎをほっとくっていうの? …そんなことしたら、もっと被害が出るんじゃないかしらね?」


「…痛いとこついてくるな、お前」


「当たり前の正論を述べてるだけよ。…少なくとも私が強かったら対処はしてるけど、私弱いもの。だから私もアンタに頼るしかないって事……やってくれるわよね?」


「わかったよ…対処してくればいいんだろ。ま、大事になる前にパパっと終わらせるさ。だから、後の始末的なのは任せたぞ?」


「…ま、そんくらいはしてやるわよ。ほら、さっさと止めてきなさいって。能力者は、能力者にしか止められないんだからね。けど…アンタの能力は、能力者でも止められないヤバい能力なんだから……」


「止められる奴は止められるだろ。…まぁこれまでの人生の中で、僕を止められた奴なんていなかったけどな」


 予め宣言しておくと、僕の能力は多分最強だ。

 最強だし、誰にも手が付けられない、そういうもんだと思う。

 だからこうやって能力者が暴れていても、僕は自信満々に介入することが出来る。


 ゆえに僕はその暴れている能力者に告げた。


「こんばんわ。少し、手合わせをお願いしてもよろしいですか?」


 と、そっと一言。

 笑みを浮かべながら、僕は能力を発揮するのだった。


     ***


「……ふぅ」


 結局何の能力の使い手かわからなかったが、十秒くらいでコテンパンにする事が出来た。

 能力者はそこでノビてるし、多分駆けつけてきた誰かが捕まえるだろう。


 大事になる前にさっさと身を隠さないとな。

 これがばれると、やや面倒な事になるからなぁ…と。

 僕はそんな事を思いつつ、その現場から離れようとしてーーーー


「ちょっと待って…貴方、何者?」


 と、誰かから声を掛けられた。

 そちらを見てみると、見知らぬ少女が立っていた。


 極力時間を使いたくない僕はそれを無視して去ろうとしたのだが。


「逃げないで」


 と言われるもんだから立ち止まってしまった。


「…なんだ? なんか用でもあるのか?」


「いや…貴方の事が気になって。だって、さっき暴れていた男……どう考えても普通に強い能力者だったわけじゃん?」


「確かに、それもそうだな」


 まぁ、一瞬で終わっちゃったから僕は正直よくわからないのだが。


「それを一瞬で倒して…貴方どんな能力を持ってるの?」


「言いたくない、じゃあな」


「駄目! 絶対に逃がさない!」


 するとその少女は僕の手を掴んできた。


「確かに貴方は今回能力者を倒したのかもしれない! 正義を執行したのかもしれない。だけど、能力ってのは使い方を誤ってしまったら……」


「色んな奴に迷惑が掛かる、だろ? そんな事理解してる。だから僕はこれまでこの能力を使ってこなかったんだ」


「使ってこなかったって証拠はないでしょ? …まぁ、立ち話もなんだしついてきてよ」


「…どこに連れて行く気だ?」


「警察署だけど?」


「…幼い顔をしてお前そっち側の人間かよ」


 能力者が何か問題を起こした時。

 それを止めるのが警察の役目だ。

 最近じゃ、普通の人間の犯罪は能力者のお陰でかなり減り、逆に言えば、能力者しか殆ど犯罪を犯さなくなってしまっていた。


 それゆえに、最近じゃ警察は能力者を取り締まる立場にある。

 …ゆえに、警察からしたら僕みたいなやべー奴はマークしておきたいんだろう。

 だがまぁ、警察がマークしようが僕を倒すことはほぼほぼ不可能だと思うが……


「ちなみに言うと、警察署には行かないぞ、絶対に」


「…別に、貴方悪い事をしてるわけじゃないんだし、悪く扱うつもりは一切ないよ? というか、今回は逆に正義を執行してるわけだからね」


「だとしても…だ。お前が僕を警察署に連れて行こうとしてるのは僕の能力が危なそうだから、だろ? そんか誘いに乗るつもりなんて一切ないし、生憎(あいにく)と用事があるもんでな」


「駄目だよ、貴方をここで逃がすわけにはいかない……なんとしてでも、私は貴方から事情を聞くし、能力も聞きだす。だって貴方は…それだけヤバい能力を持ってるんだから」


「…結局、僕の能力が危険視されてるから連行されそうになってるんだろ? …はぁ、人助けしたつもりがまさかこんな面倒な事になるなんてな」


「正直、それは悪いと思ってる。貴方は善の行動をしてくれたのに、こうやって疑ったりして……けど、少しでも危険があるようならその危険を未然に防ぐのが私たちなの。だから、私たちの事も考えて色々と話を聞かせてほしい。絶対に、悪いようにはしないから」


「…しつこい奴だな、お前も」


 僕はため息を吐いて、僕の腕を掴んでいたそいつの手を強制的に振りほどいた。


「嘘!? なんでこんなあっさりと……!?」


「そりゃ普通に男と女の力の差だろ」


「そ、そんなことあるわけない! だって私結構力あるもん!」


「へぇ、そうなのか。じゃあ僕の力が強すぎるってだけか?」


 というか、考えてみたらこいつ警察の手先なんだったら間違いなく能力者だよな。

 …ま、どんな能力でも僕には関係ない、か。


 そろそろ時間だし、立ち去らないとマズい。

 だから僕は苦笑して。


「悪いな、また今度会えたら会おう」


 そう言って、僕は全力で走り去った。


     ***


 十分程度走り続けてようやくあの少女の気配がなくなったところで僕は足を止めた。


「こうやって、危険視されるから僕の能力は誰にも言えないんだよな」


 あまりにも強すぎる能力だから。

 だからこれを隠し続けないといけない。

 だが、警察に見つかったとなれば面倒な事になりそうだ。


 だがまぁ……


「人生、なるようになれってやつだな」


 と、僕は空を見上げながらそう呟くのだった。

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