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第八話 作戦会議


「祖父さんに、稀血について聞くことができた」

そう蓮くんから連絡が来て、染谷神社にまた皆んなで集まることになった。

「稀血について、昔の伝承に書かれていたんだ」

時代を感じる書物を机に広げ、蓮くんはとあるページを指さす。

そのページには、怪我をした人に、自分の血を垂らしている人物が描かれていた。

「これによると、昔神様は旅人のふりをして人里に降りてきて、村人をその血で癒したという逸話が残っているらしい。それが稀血だと書かれている」

「俺の傷がたちまち治ったのと状況が似ているな。神か……納得はできる」

「納得?」

私は綾人くんを見る。

「ひなこの血に触れた時、何か懐かしいような、許されたような暖かさを感じたんだ」

綾人くんはその時の事を思い出しているのか、自分の唇にそっと触れる。

「俺たち吸血鬼の始祖は、ある堕ちた神から生まれた存在だと言われている」

「堕ちた神様?」

「あぁ、元々はこの地を守っていた神らしいが、深く絶望して堕神になったと。吸血鬼は、その絶望という感情から生まれたらしい」

神様が絶望する程の出来事……私は書物に描かれた神様に目線をやる。

一体、何があったんだろう……。

「俺たちには堕神の血が流れている。それがひなこの稀血に反応したんじゃないかと思う」

私は天を仰ぐ。一点納得がいかない所があるからだ。

「でも、うちは普通の家だし……蓮くんみたいに歴史ある家系でもないんだよね」

「そうだな……確かに。だけど、綾人や異形の反応をみるに、どこかで神様の血が混じった可能性がありそうだな……」

蓮くんは顎に指をあてて、考え込むが、今はまだわからないな……と呟き、綾人くんに質問する。

「異形も同じなのか?」

綾人くんは頷く。

「ああ、殆ど同じだ。ただし、異形は人の絶望などの強い感情からもうまれる」

「それって、絶望してる人がすごく増えたってこと?」

綾人くんは、表情を曇らせる。

「いや……これはそんな増え方じゃ説明がつかない。もっと大きな力が動いていると思う」

「俺も、この街の禍々しい気配が強くなってきているのを感じる」

蓮くんも綾人くんに同意する。

二人の話を聞いていると、見えない何か、沢山の腕が後ろから私を……稀血を捕まえにくるような、妙な気味の悪さを感じた。

ーー妄想だ、そう頭を横に振る。

そんな私の手を、綾人くんが力強く握る。

「大丈夫、俺が絶対ひなこを守るから」

確信めいた瞳と、力強く握られた手のひらに、少し動揺がおさまる。

そんな私達に視線を向けつつ、蓮くんは今後のことについて話す。

「引き続き稀血について調べつつ、異形の増加の原因も探ろう。数が増え続けるのは危険だ。俺は今日得た情報を元に、祖父さんに聞いてみるよ」

「吸血鬼社会には兄貴が詳しいから、何か情報がないか聞いてみる」

2人がこれからについて話している中、私は堕神について考えていた。

最近、似たような話を聞いたような……。

堕神……悪い神様……そうだ海の祠の悪い神様の話に似ているんだ。

「海の祠の悪い神様の噂、まだしてなかったよね」

「悪い神様?そうだな、聞いてないな」

蓮くんが頷く。

私は噂について話す。

「友達が言ってたの、その子はおばあちゃんに聞いたって。綾人くんが話していた堕神の話とすごく似てた。近づいてはいけないって」

その祠に何かあるのかも……と言おうとすると、蓮くんに止められる。

「駄目だ。あそこは生半可な気持ちで近づいてはいけないと、俺も祖父さんに言われてる。直接調べるにしては情報がまだ足りない」

「じゃあ、私は祠のこと、もっと知ってる事ないか調べてみるね」

「ああ。頼む」

何か、まだ何もわからないけれど、少しだけ自分を覆うもやがうっすらと晴れつつあるのを感じる。

(怖いけど、目を背けちゃだめだ。後悔しないように、私自身が向き合わないと)

ーー何故私が稀血のなのか、その答えを知りたい

私は深く深呼吸をし、真っ直ぐに前を見据えた。



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