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第十八話 別れ


朝目が覚め、いつも通りスマホを確認すると蓮くんからメッセージが届いていた。

《今日から暫く家の都合で学校を休む。こんな時にすまない》

高校に入ってから、一緒に登校しなかった日はなかったので少し驚く。

(そっか、豊穣祭が近いからかな)

お祭りでは毎年神社も協力していて、忙しそうにしている。その関連なのだろうと納得する。

ベッドから降りて、準備をして学校に向かう。

自転車を漕いで、海を眺めながら坂をくだり、

染谷神社の前で速度を下げる。

「あ、そっか、蓮くん居ないんだっけ」

何となくいつもの癖で、神社前に止まってしまう。

(いつも此処で、蓮くんが読書しながら待ってくれてるんだよね)

一緒に登校出来ないのは少しの間だけなのに、なんだか寂しく思ってしまう。

少し後ろ髪を引かれながら、再度自転車を漕ぎ出した。



学校に着くと、皆んながざわついていて、

リコとマコトが駆け寄ってきた。

「ひなこ!大丈夫?」

「え?何が?」

私が鞄から教科書を取り出していると、リコとマコトは顔を見合わせて、少し困惑気味に答える。

「……蓮先輩が、学校辞めたって」

「……え?」

私の手から、教科書が滑り落ち、床にバサバサと落ち、重なり合った。


「綾人くん!」

私は動揺しながら、綾人の教室に向かう。

綾人くんは私の様子をみて、何かを察したようで、場所を移動しよう、と呟いた。

今は使われていない教室に移動して、私は綾人くんに尋ねる。

「蓮くんが、学校を辞めたって……」

「ああ、俺も聞いた」

「それに、連絡がとれなくて……」

悲しそうな表情をしつつも、冷静な綾人くんをみて私は確信する。

「……綾人くん、知ってたの?」

「……ああ、蓮に聞いていた」

(私だけ、知らなかったんだ……)

急にひとりぼっちになったような感覚に陥りながら、問い続ける。

「蓮くんが、何で学校を辞めたのか、知ってるの?」

「……」

綾人くんはぐっと唇を噛み締める。

何か知っている様子だが、この様子だと蓮くんに口止めされているのかもしれない。

蓮くんが、1人で何かをしようとしている。

それに、学校を辞めたり、口止めしたり……かなり危険な事に違いない。

私は必死に頭を巡らせる。

そして、ふと蓮くんの言葉を思い出す。

『駄目だ、あそこは生半可な気持ちで近づいてはいけない』

私はまっすぐ綾人くんの目を見つめる。

「もしかして……海の祠が関係しているの?」

私に問いかけられた綾人くんの瞳には、ありありと動揺がみえた。

ーー蓮くんは、海の祠に1人で行ったんだ。

私は急いで祠に向かおうとするが、綾人くんに止められる。

「ひなこ!駄目だ。危険なんだ」

「離して!蓮くんを1人で危ない所に行かせられないよ!」

私の悲痛な叫びを聞いて、綾人くんは何か言おうとしてぐっと堪える。

「……お願い、綾人くん、蓮くんが何をしようとしているのか教えて……」

私は震える声を、必死に奮いたたせて、綾人くんに懇願する。

綾人くんは苦しそうな表情を強めて、絞り出したように、小さな声で話し出した。

「……蓮は、堕神を再封印する為に、人柱になることを選んだ。夕日が沈んだら、もう会うことは出来ない」

あまりに衝撃的な内容に、ふらつく私を綾人くんが支える。

私はすぐに時計を確認する。

もう日が沈むまで時間があまりない。

私は一心不乱に教室から飛び出した。



海の祠に辿り着き、夢でみた扉を開く。

そこでみた光景に、私は大きく目を見開く。


洞窟の中にある祭壇の前に、身体中を鎖で繋がれた蓮くんが佇んでいた。

鎖は四方に張られおり、祭壇に供えられた生贄にも見える。


「ひなこ……?」

蓮くんはひどく驚いた顔をしている。

後からついてきた綾人くんが、蓮、すまないと謝る。

「蓮くん!こんなの辞めて、帰ろうよ!」

私は必死に蓮くんにしがみつく。

「ひなこ、早くここから離れるんだ」

蓮くんは落ち着いた声で、私を促す。

「いや!蓮くんを置いて行けないよ」

私の目からは大粒の涙が零れ落ちる。

必死に腕を引っ張るが、蓮くんはびくともしない。

「綾人、悪いが頼む」

「……ああ。ひなこ、悪いが連れて行くぞ」

綾人に担がれ、無理やり洞窟の入り口に向かわれる。

「蓮くん!こんなのおかしいよ、どうして、蓮くんが!」

ーーこんな、生贄みたいなものじゃない。

「ひなこ、生きるんだ。ーー頼むから幸せになってくれ」

蓮くんは、いつもの優しい笑顔を私に向ける。

その声も、想いも、いつもずっとそばにいてくれた時と何も変わらなくて、私は必死に声を張り上げた。

「蓮くん!蓮くん……」

遠ざかる蓮くんに必死で手を伸ばす。

蓮くんの表情が、少しずつ、泣きそうな笑顔に変わっていき、胸が張り裂けそうになる。


ドン!

何処からともなく太鼓の音が鳴る。

その音に合わせて、蓮くんの周りに、薄らと光る人の形をした何かが現れる。

それらは、蓮くんの近くの灯籠の火を吹き消す。

それは、封印の儀式を始める合図のようにみえた。

「ひなこ、時間切れだ」

ドン!ドン!

次々と、入り口に向かって連なる灯籠の火が消えていく。蓮くんの顔はあっという間に見えなくなり、間一髪というところで洞窟の入り口に着く。


私は体から力が抜け、地面に座り込む。

そんな私を、綾人くんは後ろから強く抱きしめる。

私もその腕を力を振り絞り握り、大きな声で泣き続けた。



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