第十六話 覚悟(蓮視点)
ここ数日で、異形の目撃情報がぐっと増えた。
テレビでは獣が山から降りてきたのかと報道されているが、街では化け物をみたという噂で持ちきりで、みな怯えている。
「怪我人も出てきているらしいわよ。今は怪我人が出ただけで済んでるけど、今後どこまで被害が広がっていくかわからないわよねぇ」
「怖いわよねぇ」
そんな通行人の声に、足を止める。
街には、堕神の封印が解け始めている影響が出始めている。
今は噂程度で収まっているが……。
(……このまま本当に、すべての異形からひなこを守ることが出来るのか?)
祖父さんには、使命はある、だが最期はお前が決めなさいと言われている。
ひなこが腕に大怪我をして帰ってきたのをみて、生きた心地がしなかった。
……封印が解ければ、ひなこだけじゃない、祖父さんも、蓮も、学校のみんなも、街の人皆んなが死に至る。
あの日、強くなったひなこをみて、ひなこの隣にいるべきは俺じゃなくなったと確信した。
ひなこにとって必要なのは、側で守るだけじゃなくて、一緒に歩いて行ける人、
ーー綾人なんだと。
(馬鹿だよなぁ、今頃気がつくなんて……)
ずっと、妹のように思っていたひなこ。
いつからだったんだろう、そんなひなこを女性として大切に思っていたなんて……。
考えると、胸がちくりと痛む。
もしもっと早く気がついていたら、と頭をよぎるが、頭を振る。
今更考えても……意味はない。
この想いを、抱えた上で、幸せになってもらいたいと思う。
(そんな俺が、ひなこにしてやれる事は……俺が……)
俺は踵を返し、染谷神社に向かう。
襖を開け、祖父さんに向かい、深呼吸をしてから言葉を発する。
「覚悟が出来た。
ーー俺が人柱になって堕神を再封印する」
不思議なほど、その声に迷いはなかった。




