第十五話 堕神が生まれた日
ちゃぷちゃぷ
耳元で水が揺れる音がして、私は目を覚ます。
周りを見渡すと、以前夢にみた、蓮くんに似た人が繋がれていた海辺の洞窟に似ている場所にいた。
(また、あの夢……みたいね)
ずる……ずる……
何かを引きずる音が聞こえ、音の方をみる。
そこには、いつもの男が歩いている。
その腕は、何かを重いものを引き摺っている。
(何を、引き摺っているの……?)
目を凝らすと、それは無惨に殺された人間のようだった。骨は飛び出し、皮は剥がされ、あらゆる苦しみを与えた後に殺されたのだろう。半分しかない顔には、苦悩に満ちた表情がみえた。
その顔に、見覚えがあった。
(あの女性の、父親だ……)
愛する人を殺された憎しみが、彼を狂わせたのだろう。そのことに胸が痛む。
男が向かう先には、彼が愛していたであろう女が横たわっていた。
彼女は清められたのか、体や着物についた汚れはなく、眠るように横たわっていた。
男は「君達に酷いことをした男には、同じ目にあわせたよ」と話しかける。
しかし、彼女は既に事切れている為、何の反応もない。
少しの沈黙の後、男の嗚咽が洞窟に木霊する。
彼女の手を握り、お腹をさすり、彼は懺悔する。
「助けてやれなくてすまない。守れなくてすまない。君達を幸せにするはずだったのに……」
涙声で、詰まりながら、気持ちを吐露する姿に、胸が痛む。
徐々に嗚咽に混じり、男の憎悪の感情が、多く言葉になって溢れ出した。
男の涙がぼとぼととこぼれ落ち続け、そこには黒い大きな水溜りができた。
水溜りは男の足元を覆い尽くし、彼が言葉を溢すと、波打った。
そして、どろりと音を立ててながら、水溜りから手が伸びだし、洞窟の床に這い出した。
それは、人ではなく、異形だった。
(ここから、異形は生まれている……?)
異形の体は濡れていて、そのまま洞窟の入り口に向かってズルズルと這っていく。
男は泣き続け、恨みを呟き続ける。
その度に、水溜りからは異形が産まれつづける。
私は確信した、彼が『堕神』なのだと。
ーーそして理解した、彼が堕ちた理由を。




