第十一話 憎悪の記憶
「やぁぁあ!!!!」
耳を劈くような悲鳴で、私は目を開く。
何があったのかと慌てるが、周りの風景から、これはまた夢だと気がつく。
悲鳴は屋敷の中から聞こえており、急いで向かう。
そこでは倒れた女性が、男性に何度も何度も蹴られていた。
女性は、以前幸せそうに笑っていた人だ。
傷一つなかった顔は、あざだらけになり、吐血したのか血が垂れている。
顔は血の気が引いており、殆ど反応がなく、小さく呻き声だけが漏れていた。
男は女性の父親のようで、酷く激昂していた。
「この阿婆擦れが!!何にも使えないから、僻地で療養させてやっていたのに、我が家の地位を落とすような事を!」
その近くで、使用人らしき人物が大泣きする赤子を抱いている。
産まれたばかりのようで、まだ肌が赤黒い。
男が叫んでいる内容から察するに、女性の産んだ子のようだ。
その割れんばかりの泣き声は、
自分が生まれた事を否定されながらも、
生きたいと、必死に訴えかけているように聞こえた。
暫くすると、女性は動かなくなり、男はチッと舌打ちをする。
そして、赤子を抱く使用人に視線を向ける。
「阿婆擦れの子は殺して捨てろ。こいつもその辺に埋めておけ」
そう言って、血で汚れた手のひらを手拭いでぬぐい、地面に落とした。
(ひどい……どうして、こんな残酷な事ができるの……)
余りの悲惨な出来事に、私は手で口を覆う。
刹那、強い風が吹き、気がつくと男が女の亡骸を胸に泣いていた。
以前、仲睦まじくしていた男だ。
男は震える手で、女性の顔に触れ、その後お腹を撫で、力強く抱きしめた。
その様子に、私の胸は強く締め付けられる。
(あんなに、幸せそうだったのに……)
ーー愛してる人達を奪われた。
それは、どんなに絶望的な事なんだろう。
男の泣き声は、少しずつ聞こえなくなり、急に空気が張り詰め始める。
上手く体が動かなくなるほどの、重い空気に戸惑っていると、男が、腹の底から響くような低い声で呟いた。
……愚かな人間達を許さない。
そして、男はゆっくりと、私のほうに振り向く。
(どうして?これは、夢のはずなのに)
見えているはずがないのに、男と視線が合う。
その憎悪に満ちた目に、表情に、悲鳴をあげそうになる。
刹那、まるで夢から追い出されたかのように目が覚める。
体は汗でぐっしょりと濡れ、鼓動は恐ろしくはやく鳴り響いていた。
いかがでしたでしょうか。
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