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第九話 記憶(綾人視点)


「お帰りなさいませ、綾人様」

「……ああ」

家に帰ると、いつものようにメイドに迎えられる。

西園寺家は昔から続く名家だ。

堕神から生まれた吸血鬼たちは、人間社会に溶け込み、その人を超越した能力を活かして財を成したという。

「あらお帰りなさい、綾人」

「ただいま、母さん」

自室に戻る途中であろう母とすれ違う。

冷めた目で母さんを見るが、既にその視線は俺を見ていない。

後ろを見ると、また見目麗しい女を数人引き連れている。

彼女達の表情は高揚しており、吸血した後なのだろうと察する。

「また異形と遊んでいたのかしら?程々になさいよ」

すれ違いざまに、俺の肩にそっとふれ、すたすたと歩いて行く。

母さんは俺に興味がない。

正確には子供にも、父にも興味がない。

ただ、本能のままに生きている、吸血鬼らしい人だ。

この家には、愛というものはない。

ただ、欲望だけが渦巻く閉じられた箱庭だ。



……俺はこの家が好きではない。

小さい頃から人間は下等生物だと、家畜だと言われて育ってきた。

だが、実際に人間に会い、共に日々を過ごす中で違和感は大きくなっていった。

優しさや愛情に触れさせてくれたのは、人間だけだった。




久々に母さんをみて、その変わらない態度に無駄に感傷的になった自分に呆れる。

(未だに期待してるのか?……感傷に浸ってる場合じゃないだろ。兄貴に話を聞くためにきたんだから)

自分自身に言い聞かせて、俺は兄貴の部屋に向かう。


ノックをすると、どうぞ、と言われたので部屋に入る。

兄貴は1人がけのソファに座りながら、ぱらぱらと本をめくっている。

視線をちらりとこちらに向ける。

「綾人か。どうしたんだい?」

本を閉じると、にこりと笑いかける。

「最近、異形の数が急激に増えている。何か知っている事ないか?」

そう尋ねると、兄貴はにぃっと笑う。

「明確に知っていることはないよ」

そう言いながら、だが……と呟く。

「最近自分の中の吸血鬼の血が激しく巡っているのを感じる。一族の中でも異変を感じている人が多くてね」

兄貴は少し、こちらに顔を寄せて、意味深に声を顰める。

「もしかして、自分たちの根源が呼んでいるんじゃないかって話がでている」

「根源って、……堕神てことか?」

俺は少し動揺しながら、尋ねる。

兄貴はニヤッと笑う。

「そう、堕神はまだ何処かに居るみたいだ。

とっくに滅んだと思っていたのにな」

「異形が増えたのは、堕神のせいってことか?」

俺の言葉に、兄貴は頷く。

「ああ、異形が大量発生しているのも頷ける。吸血鬼すらうみだす堕神なら可能だろう」

何らかのきっかけで、活動を再開したんだろう、と続ける。

「他の吸血鬼も、その情報知ってるってことだよな?」

「ああ。今の所静観するつもりだが、今後どうなるかはわからない。

吸血鬼は日本各地で根を張っている。

稀血も関わっているんだろう?気をつけることだな」

兄貴は俺の肩をたたいた。


ーー堕神がまだ生きている。

その言葉を、俺は反芻する。

……その事実に、自分の中の血がざわつくのを、どうしても抑えられなかった。



読んでくださり、ありがとうございます!

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