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北陸、車旅(生活感は隠せない)

作者: 鈴川愛夏

時刻は午前3時。

オーシャンビューの民宿で、優雅に波の音を聞きながら眠る…はずだったのに。

現実は「ガガガガッッ!」と工事現場みたいな騒音で目が覚める。

犯人は、漁師さんたち。船出の合奏が、耳元の目覚まし時計より爆音だった。


7:30。宿を出発。眠気より空腹の方が勝つ。目指すは氷見の漁師食堂!

久しぶりに来た魚市場食堂で「氷見浜丼定食並盛」を注文。


…ん?ロボットがツーッと走ってきて、そのたびに久石譲の「summer」が流れる。

なぜロボットにだけ、ジブリの祝福を受けているのか。謎すぎる。


お腹が満たされた私は、急に大人ぶって競りの見学へ。

海沿いにはアオサギがズラリと並び、人間からのおこぼれを虎視眈々と狙っている。

「あんたらも市場常連かい」と心の中でツッコミつつ、その姿が愛おしい。


市場を後にすると、昨日の鉛色の空が嘘みたいに晴天!

気分はドライブ映画の主人公。


ガソリンスタンドに立ち寄り、東京より単価が高いので、2000円分しか給油せず、信号待ちでは昨日のメスティンをウットティッシュでゴシゴシ。


走行中でも「生活感」を隠せない私である。


富山県美術館に上陸。

屋上へ行くと、なんとトランポリンが!年齢を忘れて飛びまくる。

子どもより跳ねて、周囲の視線を独り占め。

チケット購入前に学生証を出したら「無料です」。

…え、無料!?ここから私のテンションはマックスに。


横尾忠則先生!いきなり登場!

さらにピカソ!しかも写実のやつ!「うっひょー!」と声が漏れる。

ミロ、シャガール…もう教科書のスター選手たちが次々登板。

しかも富山美術館、やたらとピカソを持っている。ピカソ富豪か。


途中の体験ブースでステッカーも作り、「作品を生み出す側」になる。

いつもの日常やんけ。


展示室には武蔵美と同じ椅子があり、一瞬「今、東京?」と錯覚。

無料でこれだけ勉強できて、感謝しかない。


そして昼ごはん第二弾。富山ブラックラーメンを求め「翔龍」へ。

中に入ると、なぜかシャガールの版画が飾られている。

「いや、注文に集中できないんですけど?」と心で叫びつつ、やっとラーメン・味玉・餃子をオーダー。

最初の3口は神。だが、食べ進めるほどに味が不思議と、飽きてくる…。


結論:ラーメンも絵も音楽も、最終的には「好き嫌い」である。


さてさて、石川へ。

県立美術館には辻口パティシエのカフェがある。


兼六園?もちろん知ってる。けど、優先順位は


ケーキ > 美術鑑賞 > 宿でだらける >>> 兼六園

である。観光地のみなさんごめんなさい。

石川県立美術館到着。迷うことなくカフェ直行。

「Zen」という抹茶ケーキとダージリンティーを注文。

ひと口食べて、脳がバグった。


「お、おいしい…!こんなケーキ食べたことない!」

日本一のパティシエ、伊達じゃない。

甘さに圧倒されてから、美術館へ突入。

近代美術の日本画に感動。

油断していたら源氏物語屏風の本物が出現。あまりの迫力に「ひぃ」と声が出る。


駐車場では次の目的地を検索。

氷見港直送のお魚が売られるスーパーを調べると、19時まで空いてるのは一件のみ!

「行くしかない!」と田舎道を爆走。

スーパー大阪屋に到着。

魚?安っ!

ぱりんこ148円?サラダせんべい98円!?

コロッケ3つで90円!?

「ここは楽園か?」と動揺しつつ、カゴへ突っ込む。


19時頃、宿に帰還。

ジャンパーを脱ぎ捨ててお風呂直行。

そしてお風呂でパンツと靴下を手洗い。

……旅は非日常。でも、最後の締めはやっぱり生活感。

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