第七十四話「消えた約束」
消えた約束は、
風に消えることもある。
だが、記憶の迷宮で、
真実はひとり歩き続ける。
東京の片隅、古い喫茶店の窓際に座る俺のもとに、一通の封筒が届いた。
差出人は、十年前に音信不通となった幼馴染・美咲からだった。
中には手紙と、一枚の写真。
写真には、二人で笑い合う姿が写っているが、どこか暗い影が差していた。
手紙にはこう記されていた。
「覚えてる? あの夏の日、私たちが交わした約束。
あの場所で、また会おうって。
でも私は来られなかった。
ごめんなさい。真実はここに書けないけど、いつか話す。」
記憶を辿り、俺は二人がかつて訪れた郊外の廃屋へ向かった。
そこは、忘れられた約束の場所だった。
廃屋の壁には古びた落書きと共に、かすかに記された文字があった。
「真実は影の中にある」
探索中、俺は美咲の声を聞いた気がした。
だが、それは風の音か、それとも――
調査の末、俺は彼女が消えた真相に近づく。
それは、人間の都合で隠されていた事実だった。
そして、幼馴染の行方は、自らの意志で選んだものだった。
手紙は真実の一部に過ぎず、
残された謎を解く鍵は、まだ影の中に隠れている。
次回・第75話「闇夜の誘い」では、
謎の黒衣の男からの招待状。
探偵は暗闇の中で、未知の闇と対峙する。




