大祭司アンガスと話す
ジネヴラの信仰心は薄い。
だからこそ神は現れて、ジネヴラを叱咤したのだ。
神はかくてありき、と。
神を信じている。
だがそれは彼女にとって何を差し置いてもという訳ではない。
では神よりも信じるものを頼ってはどうかと、ジネヴラが考えるのは自明の理だった。
そう、彼女は信じていた。
彼女の命を拾い上げ、冤罪から救ってくれた、大祭司アンガスを。
アンガスはジネヴラの人生そのものであったし、彼無しにはジネヴラはなかった。
ジネヴラは早足で回廊を進み、執務室を目指した。
空は茜色で、ちょうど日が沈んだところだった。
普段であれば外出を控える時間だったが、先程アデラ王女の婚約者の姿絵を見たことで、ジネヴラは気が高揚してしまい、とても眠れそうになかったのだ。
その姿はジネヴラが夢見たその人だったのだから。
アンガスは夜分に訪れたジネヴラを、驚きと共に歓迎した。
ジネヴラはことの発端を全て話した。
神の預言を受けたこと、未来に起こる国の悲劇と、その顛末。
そして、淡い恋心を。
アンガスは静かにジネヴラの話を聞き、時に励ました。
そして今日は休みなさい、後で送ってあげるから、ちょっと待っていなさい、と執務室を出ていった。
「大司祭様?」
ガチャリ、と鍵を閉める音がした。
ジネヴラはすぐにノブを回したが、びくともしない。
すると執務室の奥で、ガタンと物音がした。
ジネヴラは部屋の奥に進む。
祭壇から落ちたのか、天秤が壊れていた。
音は、クローゼットの方から聞こえている。
ジネヴラがそこを開くと、狂ったように跳ねる女性がいた。
アリスだ。
金属がすり合う音にも構わず、ジネヴラは彼女に近づく。
血走った彼女の目に、ジネヴラが映る。
その後ろには。
「ああ、あんな子供に大切なあなたをとられるなんて」
音もなく、アンガスがそこに立っていた。
視界が暗転する。
「ジネヴラ、貴方は私のものなのです」
BadEND




