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何かを手に取る

ジネヴラは、手にとった何かを投げた。

それは、天秤。

その天秤は、カシェルと人々の間で均衡を保っている。


『なんということだ。私の情けゆえにこの国は乱れてしまった』


バルコニーに雷鳴と共に現れた白い影。

それと共に周囲の人々の時が止まった。

白い影は、白鳥に姿を変えてバルコニーに降り立つ。


『ジネヴラ、約束であろう。私を永遠に信奉すると。彼と共にいるということは、信仰を捨てること。それはならん、神との約束をたがえるということは、神の呪いを受けるということ』

「そんな」

『私は妬む神なのだ。そなたはその男を喪って、神を呪った。なればと思い、その男を救う手助けをしたというのに、お前はまた私を捨てようというのか』


燦然と光輝くその鳥は雷雲を轟かせ、ジネヴラに迫る。


「彼女は僕を助けるために運命に逆らった。それを神が罪というなら、僕は神を殺す」

『なんと罰当たりな』

「カシェル。剣をおさめてください」


白い影へ抜き身の剣を向けるカシェルを、ジネヴラはその腕にしがみついて止める。


「駄目です、私は。貴方に幸せになって欲しかっただけ」

「僕も、そうだといっている。ここは譲れないな」

「約束は、約束なのです。確かに私はそう約束したのですから」


カシェルを止めて、ジネヴラは神に恭順を示す。

神は満足したのか、雷鳴を放つことをやめた。


「ただ、どうかお願いです。彼の無事を祈ることをお許しください」

『…よかろう』






神殿で神のために祈るジネヴラは、しかし片時もカシェルの事を忘れたことはなかった。

ただ、カシェルの無事を。


カシェルはアデラ王女が残した火種、つまりアイザック王子のおこした紛争の鎮圧に駆り出されている。

幽閉されたアイザックは、自国に帰るや否や過激派の手引きにより解き放たれ、ゲリラ戦を展開した。

アデラの名声は地に落ち、アデラ自身がマヨルカを捨てアイザックのもとへ合流したという。

賢姫と呼ばれただけある彼女の合流で、紛争は激化し、鎮圧に向かう国々は疲弊していると聞く。


だが。

神が降臨した神殿だけは静寂を保ち、切り取られた世界のように存在している。

神殿には、ジネヴラしかいない。

皆、戦に駆り出されていった。

箱庭の中での自給自足の生活。

そうして数年が過ぎた。



ジネヴラは、何かが切れるのを感じた。

いつもと違う光が差し込んだ気がして、ジネヴラは庭園に出た。

何時もは吹いていない風を感じる。

懐かしい気配に振り返る。


「ジネヴラ」


それは、夢に見た藍色。


「すまない。お前の神を殺してしまった」

「え?」

「紛争を終わらせていたら、遅くなってしまった」


彼のとなりには、小さな子供がいた。

何処か老成したような、不思議な子供。


「こんにちは。ジネヴラ」

「君と分かれてから僕についてきてる、守護神とか言うやつらしい」

「神、様?」

「はじめましてじゃないよね」


子供はくるりと回ると、にこりと笑う。


「言っただろ。譲っちゃいけないときは、ちゃんと言わないと、って」

「あなたは、あの時の」

「君が、最初から彼を選んでいたから。あの神は洗脳をするのに、君はその多幸感のなかに、君だけの答えを出していた。神の多幸感に流されながらも、それ以上の感情を抱いていると気づいていたよね。君がそれを選んだときから、僕は彼に力を貸そうと思った。時間はかかったけど」

「どういう事だ?アンスール」


カシェルには応えず、子供、もといアンスールはジネヴラに目配せした。

ジネヴラの頬が紅潮する。


「神っていうのは、人の祈りを糧に生まれた存在。人に求められて初めて神は神足り得るんだ。妬み祟るものではあるけれど、けして脅迫して私欲を満たして良い存在じゃない。あれは、その事を忘れて、色々面倒を起こしていたみたいだからね。人類の未来に恣意的に干渉する。そうすれば神は神でなくなり、この世界のバランスは崩れていく。早々に退場して貰えてよかった」

「神、でなくなる?」


ではあれはなんだったのか。

ジネヴラを支配した、ひとならざるものは。


「あれは、力をもちすぎた超越的な存在だった。最初から、祈りがなくても存在していたから、正確には初めから神ではなかったんだけど」

「神に近づきすぎた存在、というやつらしい」

「不遜だね。君のそんなところが気に入って、私も見守っていたんだけど」


木漏れ日に風が通り抜ける。

さわさわと葉を揺らしたそれは、花の匂いを届けていた。


「さて、君たちはもう自由だよ」

「自由?」


薄桃色の花が舞い、光りを反射しながら天へ地へと滑っていく。

それを素直に綺麗だとジネヴラは感じ、見上げた樹木はかつて目にしたより大きく聳えていた。

カシェルがジネヴラに手を差し出す。

あの時のように。


「もう神はいない。誰も君たちを妨げない」


ジネヴラは今度こそカシェルの胸に飛び込んだ。

カシェルはジネヴラを優しく抱き止める。

薄桃色の花弁が、二人を包み込むように舞い上がった。


「さて。カシェルに巣食う毒ももうない。ああ、神力を使いすぎちゃったから、しばらく僕は寝るよ」


そう言うと、アンスールはカシェルの剣の中に吸い込まれる。


「正義の天秤は神と人を測る自然の装置だからね」


そう溢したのは、誰の耳にも届かなかった。



ーー神殺しの騎士カシェル。

ジネヴラの新しい神。

世界の調停者。


二人がマヨルカを救った英雄としてモレネと共和国を作り上げていくのは、また別の話である。






HappyEND

《trueEND! Congratulation!!!》



最後に、実はフルネームがあった人々のネタを。


アデラ・キャンベル・フォーサイス

アイザック・ケリー・デルヴィーニュ

アルヴァレズ・ガルシア・フォーサイス→マヨルカの王様

ベイリー・オンサーガー→王様の乳兄弟。王様とお話ししてた人。


名前があるなら出してやれよ…

なんだか要らない情報だと思って省きました。


分岐点によって、ちょっと小出しにしてたネタ回収も入ってるつもりなところがあります。

正規エンドまでお付き合いくださり有り難うございました。






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