10 神の采配
「神ですって。そんな方法で私を呪ったの?私を妬んだの?酷いわ。私は貴方に赦しを与えたっていうのに。私の幸せを返して、返してよ」
騒ぎを聞きつけ、野次馬が集まってくる。
カシェルは何が起こったのかと目を白黒させ、ジネヴラは後ずさる。
「神様を使ってアデラ王女を妬んだとは、恐ろしい」
「あんなものが神殿にいるのか」
人々の手がジネヴラのヴェールにかかり、剥ぎ取る。
「みろ、金の目だ」
「呪われるぞ」
ジネヴラはバルコニーへ駆け出す。
「不届きな女だ、追放しろ!」
「殺せ!」
追随していくもの達の手を払い、カシェルはジネヴラと人々の間に割って入るように飛び出した。
「やめろ」
「カシェル。あなたも騙されているの。いってはダメ」
「アデラ様」
「ダリル王子はもう夢から覚めているようよ」
ダリルの姿はバルコニーから確認はできない。
アデラは泣いている。
見も世もなく泣き崩れて、貴族や護衛のもの、侍従達が殺気立つ。
「それでも」
「カシェル、貴方が大切なの。いつも私を見守ってくれている優しい貴方。目を覚まして」
普段気丈であるアデラの涙は、庇護欲をそそるものだ。
そのアデラが、ただただカシェルを求めている。
「それでも僕は」
「そばにいて。心細いの。貴方がいなくては私は立っていられないの。貴方が必要なの」
「僕は。ただ貴方に憧れていて…」
カシェルにとっては憧れの、追い求めていたただ一人の女性だ。
求められて応えない理由が何処にあるのか。
ジネヴラは自惚れそうになっていた自分を叱咤した。
最初からカシェルはアデラを求めていた。
「彼女を」
「これからは貴方だけを見つめるわ。だからどうか」
二人が結ばれる。
それで心置きなくジネヴラは神に仕えられる。
「ジネヴラ、愛しているんだ」
「どうして」
ジネヴラは、足元が崩れるようだった。
カシェルはジネヴラを引き寄せる。
「可哀想な子」
怨嗟のように響いたそれは。
「アデラ様が愛してあげなければあなたを誰が愛すというの。父親に捨てられたあなたを。母親殺しのあなたを!!!」
破裂したように捲し立てたのは、アデラの側付きの侍女だ。
アデラは泣き崩れたままだ。
「アデラ様」
カシェルがアデラに向ける眼差しは、ジネヴラが初めて見る類いのものだった。
侍女はそんなカシェルに憎悪の目を向けた。
「王女を裏切る親殺しの騎士だ!纏めて始末しろ!」
侍女だけではない。
近くにいた兵達は腰のサーベルに手がかかっている。
侍従のあるものはテーブルのナイフやフォークをもち、貴族も帯剣を許されているものはその感触を確かめるように鳴らして迫ってくる。
「ジネヴラ。僕から離れるな」
彼が死んでしまう。
ジネヴラは直感し、カシェルだけでも逃げてほしいと喉を引き絞る。
「私は、アデラ様のように努力していないのです」
息が、苦しい。
ジネヴラはカシェルを振り払う。
「貴方にふさわしくありたいと、朗詠師になったわけでもない」
だから、ジネヴラはカシェルには相応しくない。
アデラに相応しくあろうとした彼に、相応しい努力家ではない。
「僕もだ。ただ剣が僕に生きる道をくれただけだ」
「貴方のためにしてきたことなんてない。ずっと私に出来ることなんて何もないと思っていたのです」
自分の好きなことをして、易きに流れる。
何かを変えようともがいたわけでもない、ただそこで生きるのに必死だっただけの、何もない人間なのだと。
「君が何もしていない?何時も僕は君に救われてきたのに。君はそのままでいい」
なのに、カシェルはただありのままのジネヴラでいいと。
必死で彼を拒絶する理由が。
カシェルには意味がないと。
カシェルはジネヴラに手を伸ばす。
「ジネヴラ。君が聞かないならそれもいい。だが、今は君を守らせてくれ」
誰かの狂気が凶器を引き起こす、前に。
→→→→→ジネヴラの次の行動を、次に表示されている、タイトル名のどれかから選んでください




