3 必殺ジャーナリズムパンチ!!
理事長の学園戦争計画は、最初こそは大騒ぎになったもののそこまで大きな影響は出なかった。平和島が率いる生徒会派と松永擁するレジスタンス側が事前に根回ししたことで、既に大半の生徒が知っていたのである。
駅前のサ〇ゼリヤ。
「うん、十分すぎる」
「でっしょ?私も頑張ったんだから」
テーブル席の一つを占領し、レジスタンス側の4人はこちらも作戦会議を開いていた。
「学園高等部の約6割、1200人以上の同意が得られたわけか」
「すっげーなおい!」
「さすが新聞部員ですね。しかし、新聞部は生徒会の傘下に入っているのでは?」
「そうよ、だから今の私は新聞部員としての北島みやじゃなくて、レジスタンス諜報部の北島みやだから」
むふん、と自慢げな顔をするみやだが、黒田は渋い顔をしたままだ。
「僕はね、まだ疑っているんですよ。いくら松永の知り合いだからって、あまりに都合がよすぎる。新聞部出身だって言うし、その情報収集能力だって実は裏で新聞部とつながってるから得られるものっていう可能性もあるんです」
「うーん、みやはそんなことするやつじゃないんだけどねぇ…」
「ん、まあそう言われるのもしょうがないわよね」
「おいおい、いまさらになって実は敵方でした、なんてのはねーだろうな」
青崎はにらみつける。しかしそれを簡単に受け流すと、みやは手帳を取りだした。
「いいでしょう。なら、私個人で集めた情報を公開いたしましょう。それで信用できないのならここを去ります」
「ああ、それでいいでしょう」
「あー、みや。一応手加減しろよ?」
「いーや、ここまで言われちゃったら引き下がれないわよ。ガツンと一発食らわせてやるわ。ジャーナリズム精神舐めんなっての」
松永は黒田にかわいそうに、とでも言いたげな哀れな視線を送った。
「それじゃいくよ」
「はい」
「黒田涼太、2年4組13番。神奈川県出身のどこにでもいる普通の男子高校生」
「ふん、それくらい学籍名簿を見ればわかることだね」
「そうね、じゃあ次。趣味は勉強、クラシック鑑賞で、教室でも、休み時間は静かに自習する姿が見受けられる」
「そうだよ、本来学校は勉強する場所だからね」
「しかし、本当の趣味は某ネットサイトにて、自慢の百合小説を投稿することである」
「へ?」
「ペンネームは百合スキー、代表作は、『華のJKの乱れた姿』」
「ちょ、ちょっ」
「これは、高校2年生の主人公黒田はなが女子高にて、なんと10人ものヒロインから攻められるというそう受け本であり、屈指の人気を誇る。授業中にもこっそり百合小説を書いており、先月はそれに夢中になりすぎて社会科の川崎先生にばれた挙句取り上げられたノートを苦笑いで返され不問にされるという事件も起こっている」
「やめろおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉおぉ!!!!!!!!!!!」
「うわぁ…」
松永は顔を背け、青崎はスマホを取り出して『百合スキー』と検索をかけた。
「ふふん、どうよ」
「やめ…ああ…うぅ…」
黒田は赤面して机に伏し、動かなくなってしまった。
「もし新聞部がこの記事をつかんでいたのなら、『期待の百合作家現る!!~すました顔で脳内百合色ゲロ甘注意報~』こんな見出しで速攻記事にするわよ」
「確かに、あの新聞部ならやりかねないよね。ってか、絶対やるね」
「百合スキー、これか」
「調べるな!!!!!!!!!」
「これは何かあったときの脅しとしてとっておいた情報なんだけど、ここで使っちゃったわね。まあ、材料としては半永久的に使えるからいいけど」
「悪魔か君は!!!!!」
「それだけこいつは恐ろしい存在だってことだ」
「あ、ちなみに青崎君のそういうエピソードもあるわよ?」
「い、いや、結構です。俺は疑ってたとは言ってないだろ」
青くなって震える2人を見てみやはさらに自慢げな顔になった。
「まあ、これで信用してくれたか?こいつはスパイとかじゃないってことだよ」
「「はい…」」
生徒会室。
「まったく、面倒なことをしてくれるものです!いったいどれほどの生徒が向こう側についたことか!!」
生徒会室では、毎日のように作戦会議が行われていた。
「一週間でどうやってあそこまで仲間を集められるんです!?」
「多分、向こう側にも情報戦のプロがいるんだろうね」
「新聞部はこっちが抑えたのにね」
頭を抱える小牧をよそに、平和島はスマホから目を離さない。
「学園掲示板は問題なく稼働している、それに、こちら側の流した情報が乗っ取られているというわけじゃない」
「どうなんだろ?友達に聞いてもいい感じな情報は見つかんなかったし」
「まさか、一人ひとり仲間に引き込んでいるというわけではないだろうな?」
「それはないと思うよ。高等部だけでさえ生徒数が4桁以上なんだ。そんなことをするには効率が悪すぎる」
煮詰まってしまったか、3人とも黙り込んでしまう。
コンコン。
「失礼します」
生徒会の腕章をつけた生徒が入ってきた。
「君は、生徒会事務部の町田君か」
「はい、会長に面会を希望する者がおります」
「うん、ちょうどよかった。会議も詰まっていたんだ」
「では、通しますか?」
「そうしてくれ。名前とかは言ってたかい?」
「はい。松永雅人、というものです」
「え…?」
「こんにちは、生徒会長さん」
理事長室。
「ねえサッチー」
「なんでしょう」
「装備類は準備できたんだけどさ、参加しない生徒の措置はできてるのかな?」
「一応、別棟で自習ということになっています」
「うん、それならいいや」
「理事長」
「なに~?」
「しゃべることがないならわざわざ私たちの出番用意しなくってもいいのでは?」
「言うな。婚期逃すぞ」
「関係ないです!!!」
「もう逃してたかwww」
「うるさい!!!!」
どうもどうも、最近は二次創作ばっかでしたね、松永です。早くも3作目です。ですけど更新は遅いほうなので覚悟してください。
この作品に出てくる人名団体思想およびその他一切の事象はすべて架空のものです。本気にしちゃだめだぞ。
青春連合
平和島雄一(へいわじま ゆういち)2-4生徒会長
永谷華那(ながたに はな)2-6生徒会副会長
小牧修平(こまき しゅうへい)2-2生徒会広報
リア充絶対殺す同盟
松永雅人(まつなが まさと)2-5同盟代表
黒田涼太(くろだ りょうた)2-4外交部長
青崎友哉(あおざき ゆうや)2-5総司令官
北島みや(きたじま みや)2-1諜報部長
学園関係者
大原史郎太(おおはら しろうた)学園理事長
南原幸枝(みなみばら さちえ)秘書