2 よくあるグループの闇
駅前のサ〇ゼリヤ。
一番奥の席を男女ペアが陣取っている。松永雅人と北島みやだ。
「で、まず何をするのよ」
「情報収集だって言っただろう?」
「取材なんていっつもやってるわよ。もっと過激なものはないの?」
「いっつもやってんのかよ」
「当たり前よ。新聞部を舐めないで頂戴」
松永はドリンクバーのコーヒーをすすった。
「うわ、ブラックなんてよく飲めるわね」
「慣れてみると意外といいもんだぞ」
「ブラック飲める自分かっこいいって酔ってるだけでしょ」
「どうしてそんなこと言うの?泣くよ?」
「勝手に泣いてなさいよ」
「こちらご注文のたらこパスタと和風ピザになります」
「どうもー」
「ごゆっくりどうぞ」
よっしゃと言って、さっそくパスタを食べる。
「あんた、ここ来ると毎回パスタとピザよね。食べすぎじゃない?」
「育ち盛りの男子高校生なめんな」
「中身はおっさんでしょ」
「青春真っただ中だっつーの」
「陰キャのくせに青春とか言うな」
言ってからみやはしまったという顔をする。
「ご、ごめん、バカにしてるわけじゃ」
「ん」
それから松永は静かになってしまった。
(しくったー!!今まさに問題になってるのに!なーんで自分から油ぶち込みに行くかね私!?)
食べ終わっても、お互い無言の気まずい時間が過ぎる。
「あーえーっと、ね?ほら軽い冗談というか」
「みや」
「ひゃいっ」
松永の目は、まっすぐみやを見つめる。
「どうしてこちら側についた?」
夜遅く。
「だから、とにかく数が必要なんだよなぁ~。どうしたもんかね…」
『我々程度の人脈じゃ数多く集めるどころか10人も集まるかどうか…』
「うーん…。あんな暴挙、腹立つ人はいっぱいいると思うんだけどな~」
早速作戦を立てていた一行だが、ここで大きな問題が発生した。
そもそも陰キャの松永達では十分に仲間を集めることができないのだ。
「そもそも人脈あるような奴は陰キャにはなれんからな~」
『極度のコミュ障や孤高の人、果ては引きこもり予備軍まで。どうも誰もその道には向かないね…』
「まあ、こっちもこっちで探しとくから、最悪ゲリラ戦でなんとかしよう」
『旧日本軍かな?』
通話を切り、スマホを投げだす。
「ああ~、どうすっぺやほんとに」
ついつい地元訛りが出てしまう。
「仲間が集まらなかったらいよいよだぜ。あんな全体主義まがいのモンに少数で勝てる気がせん」
相手方が全体主義かどうかはともかくとして、このままでは数で押されて即退学コースである。
「味方味方…いい感じに人脈を持った味方はおらんかねー…って、出てきたらいいんだが」
スマホが鳴った。LINEの通知音だ。
「んや、誰か…って」
『北島みや:退学するの?』
「…いるじゃん。味方」
『あっ、もしもし~?元気してる?』
「元気してるわけねェだろうが」
『まあそうよねー。で?退学するの?』
「するかボケ。高校中退はいろいろマズいだろうが」
『そっかぁ』
その言い方ではどうしても退学してほしいみたいに聞こえる。
「そうそう、学園新聞のあの記事は何だ?」
『あー、あれね?まあ、新聞部は生徒会側についてるってことよ』
「だろうよ。お前もそっち側なのか?」
うーん、と電話の向こう側では唸っている。
「違うのか?」
『そう、その件で電話したんだけどね~。ちょっと待って、話すことまとめるから』
「おん」
ぼそぼそと何かをつぶやく声が聞こえるが、あいにく何を言っているのかわからない。
「長ぇな」
しばらく待っていると、ごめんね?と返事が返ってきた。
「おう、で、なんだ」
『私、そっち側で行こうと思うの』
「…そっか」
『あれ?反応薄っ』
「そうかそうか。こちら側ってことは、味方になってくれるのか?」
『うん。そうする』
「一応、理由を聞きたい」
向こう側の罠ということもある。慎重になるのは当然だろう。
『それは、あとで話すよ』
「んだそりゃ」
『でも安心して?スパイとかそういうのじゃないから』
「絶対?」
『絶対』
「分かった、とりあえず明日、作戦会議があるから顔出せるか?」
『了解』
「あー、そういえばまだ話してなかったわね」
「ああ、それを聞かないとほかのやつらからの信用は獲得できない」
「そうよね。んじゃ観念しますか」
コーヒーをすすって、みやはしゃべり始めた。
「あたしね?生徒会長に言い寄られてて」
「ほう?あのクソさわやかイケメン野郎にか?」
「そう。で、あの人ってモテるじゃん?」
「おん」
「会長狙いの女からの嫌がらせがひどいのよ」
それは…。
「超くっだらねぇ…」
「ちょっと、これでも大変なんだから」
「いやいやいや…くそ下らねぇなおい」
なにかと身構えていればこれだ。松永からすればそんな話題はキーボードのF12キーと同じくらいどうでもいい話だ。
「でもなんでそれが理由になるんだ?」
「ただ嫌がらせを受けるだけなら問題ないのよ。そいつのスキャンダル盾にして脅せばいいし」
「こえーよ」
「何回かやったわよ?」
新聞部とはいえそこまでやっていいものなのだろうか?
「でよ」
「でよ?」
「問題なのは嫌がらせの首謀者よ」
「んー誰だかわかったんだな」
「雑魚に吐かせたわ」
「ひぇ」
「そしたら、副会長がやれって言ってるらしいのよ」
「副会長?新しくなった奴か」
「そう。副会長、永谷華那」
「読めた。そいつが陽キャ女子グループのトップなんだろ。で、自分でやると会長にばれてやばいから手下にやらせてるとか」
んんー、と何とも言えない表情をされてしまった。
「あんた、そこまでわかるのね。ちょっと引いたわ」
「勝手に引いとけ」
「まあ、おおかたその認識であってるわ」
「おおかた?そいつに仕返ししてめちゃくちゃにしてやりたいんじゃないのか?」
「そこまで言ってないわよ!?」
やりそうだがな、とは言わない。
「まあ、そうしてもいいかしら。でも目的はもう一つあるのよ」
「ほぉん」
「私、会長好きじゃないのよね」
「はン」
「なんなのよあのキラキラ陽キャオーラ。ウザいだけだし、わたしもっと寡黙な人が好きなのよね」
「おっふ」
「第一あいつあの演説の後新聞部まで来て記事まで書かせて。『これからよろしくね』って手も握ってきて。イケメンだから全員に好かれてると思ってるところがもうダメ」
「……」
なんだかかわいそうだ。まあ、割とどうでもいいが。
「でなに、要はあいつらウザいからこっちの味方になってやるよって事か?」
「そうねってそこまで偉そうにはしないわよ」
「ほーん、分かった」
「で?私は何をやればいいのよ」
「だから情報収集…」
「だからそれはもうやってるわよ」
「…と言いたいところだが、もう一つ頼みたいことがある」
「よっ、待ってました」
「実はこちらの陣営は今、第一次世界大戦ごろのバルカン半島よりも大きな問題を抱えている」
「何よ」
「仲間だ」
松永は現状を話した。まったく仲間の当てがないこと。数で押し切られて負けは必至だということ。それから、理事長の用意する戦争について。
「確かに、あまりにも無謀ね。どうにかする算段はあるの?」
「今のお前の発言でできた」
「私の?」
先ほど、みやはこちら側につく理由は生徒会の2人が嫌いだと言った。
あの2人は、現状学園のトップだが、完全に歓迎されているとは思えない。
松永たちのように、思想の違いから対立する人もいれば、みやのように個人的なやっかみから対立する人もいる。
「お前みたいな人を集める」
「は?」
「お前の話が正しければ、副会長はなにかしらの権力で女子を統率していると思うんだ。当然不満を持つ奴もいると思う」
「そういう人をこちら側につくように説得するのね?」
「そうだ。男子も同じような人がいるだろう。なんなら打倒さわやかクソイケメン野郎って言っても結構味方に付いてくれる奴もいると俺は考えた」
「それは完全に嫉妬だと思うけど」
「理由は何だって良い。今は頭数さえ集まればいいんだ」
「なるほど。じゃあそういう人をかたっぱしからスカウトしていけばいいのね?」
「そうだ。頼めるか?」
「お安い御用よ」
「よし、俺らも何とか集めてみる。頼んだぞ」
同時刻。生徒会室。
「学園長も面白い人だね…」
「それどころじゃないですよ!?どうするんですか会長!?」
「まあ落ち着きなよ」
「そうだよ小牧君。負けないから大丈夫だよ。ね?雄一君?」
しかし平和島は静かに首を振った。
「いや、一人だけ、バカにできない生徒がいる」
「え?」
「彼は、きっと僕たちにとって大きな脅威になるよ…」
「そうだろう?松永雅人…」
理事長室。
「ほらこれ、かっこよくないか?中世騎士装備!」
「はいはい。かっこいいですから。遊ばないでください。ってかそれどこに置くんですか」
「いや?指ならせば消えてなくなるけど?」
「なんで!?」
「言っただろ?22世紀の技術と科学とオカルトとをねりねりして作ったって」
「いやわけわかりませんが」
「オカルトなんてわかんないほうがいいさ。いよいよ結婚できなくなるから
「うるさい!!!!!!」
どうも松永です。あ、作者のほうね。はよう続き書きたかったんだけどもね。ほら、いろいろ忙しいんだよ。ゲームとか。
嘘です。めっちゃ寝てました。寝る子は育つからいいよね?
はい。次はいつ上がるかわかりませんが。気長に待っててください。
あと。声に出せば伝わるって誰かが言ってたんで、面白かったら拡散してくださいお願いします。めちゃくちゃいろんなところに拡散してくださいお願いします。
この作品に出てくる人名団体思想およびその他一切の事象はすべて架空のものです。本気にしちゃだめだぞ。
青春連合
平和島雄一(へいわじま ゆういち)2-4生徒会長
永谷華那(ながたに はな)2-6生徒会副会長
小牧修平(こまき しゅうへい)2-2生徒会広報
リア充絶対殺す同盟
松永雅人(まつなが まさと)2-5同盟代表
黒田涼太(くろだ りょうた)2-4外交部長
青崎友哉(あおざき ゆうや)2-5総司令官
北島みや(きたじま みや)2-1諜報部長
学園関係者
大原史郎太(おおはら しろうた)学園理事長
南原幸枝(みなみばら さちえ)秘書