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コント「山登りしてたらやけに礼儀正しい熊に出会った」

掲載日:2022/04/09

男「ずいぶん登ったな。ここらへんまで登れば……」


熊「……」


男「熊!? やばっ、死んだふりしなきゃ!」


倒れ込む。


男「……」


熊「あ、人が倒れてる! 大丈夫ですかーっ! ダメだ全然動かない!」


男「……」


熊「そうだ、人工呼吸だ! いや熊がやるから熊工呼吸か!」


男「……」


熊「それより救急車呼んだ方がいいか。ええと119……」


男「呼ばんでいい!」


起き上がる。


熊「うわっ!?」


男「救急車なんか呼ばなくていい!」


熊「よかった、生き返ったんですね!」


男「生き返ったんじゃないよ。俺は元々生きてたんだよ」


熊「どういうことです?」


男「死んだふりしてたんだよ!」


熊「なぜそんなことを?」


男「お前が出てきたからだろ!」


熊「ああなるほど」


男「てかお前熊だよな?」


熊「熊です」


男「なんで言葉喋れるんだよ」


熊「なんでと聞かれても、くまっちゃうんですよね」


男「くまっちゃうとか言うな」


熊「すみません」


男「ったくおかしな熊だな」


熊「ああそうそう。熊に死んだふりってかえって危険ですよ」


男「そうなの?」


熊「熊は死んだ動物も食べますからね。あまり意味がないんです」


男「知らなかった」


熊「熊と出会った時は視線を合わせたまま、ゆっくり後ずさるのが一番いいんです」


男「勉強になるわ~」


熊「ってネットに書いてありました」


男「ネットかよ! 熊なのにネットするのかよ!」


熊「熊がネットやっちゃダメですか……?」


男「そんな悲しそうな顔すんな! 悪かったよ!」


熊「ところでなぜあなたはこの山に? 登山する格好にも見えませんが」


男「……別にいいだろ」


熊「よろしければふもとまでお送りしましょうか? 僕に乗って下さい」


男「え、いいの?」


熊「はい」


男「……待てよ」


熊「え?」


男「熊のくせに優しすぎる。なんか企んでるだろ」


熊「企んでるなんてそんな」


男「いーや怪しい! 例えば俺を逃げられないところまで運んで食うとか」


熊「そんなことしませんよ」


男「俺には分かるんだ! この世の中、優しい奴はだいたい怪しい!」


熊「疑り深い人ですね。こりゃくまったな」


男「くまったなって言うな」


熊「僕は肉嫌いなんで、あなたを見ても食欲湧きませんよ」


男「じゃあなに食べるんだよ」


熊「野菜中心ですね」


男「ベジタリアンかよ」


熊「あとハチミツも好きですね」


男「プーさんかよ」


熊「失礼な! ちゃんと働いてますよ!」


男「そっちのプーじゃねえ!」


熊「ああ、あの赤いシャツ着てる彼ですか」


男「その彼だよ」


熊「彼、下半身丸出しですけど恥ずかしくないんですかね」


男「お前は全裸じゃねえか!」


熊「そういえばそうでした。くまったな」


男「だからくまったなはやめろ!」


熊「失礼しました」


男「ってちょっと待て。お前働いてるの?」


熊「ええ、まあ」


男「へぇ~、何やってんの?」


熊「カフェを経営しています」


男「カフェ?」


熊「ほら猫カフェって流行ってるじゃないですか。なら熊カフェもイケるかなと思いまして」


男「便乗の仕方が雑!」


熊「我ながらそう思います」


男「で、どんなカフェなの? 本物の熊と話せるのをウリにする感じ?」


熊「海外の厳選されたコーヒー豆を仕入れて、お洒落なジャズを流して……」


男「本格的!」


熊「そうですか?」


男「うん、正直熊カフェ舐めてた。雑なんて言ってごめん」


熊「いえいえ」


男「結構お客さん入ってるんじゃないの?」


熊「おかげ様で」


男「どんな人が来るの?」


熊「サラリーマンや女性の方が多いですね」


男「女の人も来るんだ」


熊「僕を見てキャーキャー言ってくれる人もいますよ」


男「それ悲鳴じゃね?」


熊「猟師の方が来たこともありますね」


男「え、大丈夫だったの?」


熊「狩りの後のコーヒーは美味いと喜んで下さいました」


男「平和か!」


熊「保健所の方が来たこともあります」


男「ほらやっぱり熊がやってるカフェなんて目ぇつけられちゃうよ」


熊「この地域の店で一番清潔だと褒めて下さいました」


男「人間もっと頑張れ!」


熊「それから……」


男「もういいよ。熊カフェが成功してるのは分かった」


熊「そうですか」


男「熊なのに人と共存してるなんて大したもんだよ」


熊「ありがとうございます」


男「それにひきかえ俺は……」


熊「?」


男「人なのに人と共存できなかった……」


熊「何があったんです?」


男「俺は優しかった奴に騙され、金も仕事も全て失った。この山に来たのも死に場所を求めてたからなんだ」


熊「そうだったんですか」


男「それなのに熊にビビって……情けない話さ」


熊「あの……もしよろしければ僕のカフェで働きませんか?」


男「え?」


熊「ちょうど人手が欲しかったんです」


男「いや、俺はもう死んだような人間だし……」


熊「さっきあなたは死んだふりをしたでしょう。あれで今までのあなたは死んだんです。生まれ変わったつもりでやり直してみませんか?」


男「俺なんかが……いいのか?」


熊「ぜひ」


男「ありがとう……熊ぁっ!」


熊に抱きつく。


熊「あの、僕オスなんですけど……くまったな」


男「最後までそれかよ!」






少しでも笑って頂ければ嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あけましておめでとうございます。 優しくて礼儀正しい熊と人間のやり取りが面白くて読んでいて楽しい気分になりました。くまったなとか熊ギャグ(?)を連発する熊にもクスリと笑いました^^
[良い点] つい、日本の干支に『熊』がいないのは何故か?と、真剣に考えてしまいましたが、ハッピーエンドで、ほっこり温まりました(*´∀`*) 赤いチョッキを着た黄色い肥えた熊のディスりも面白い! あ…
[良い点] しいなさんのスコップから来ました。 十分笑いました。 書いた文字だけなのに、テンポがいいってのは・・・。 [気になる点] その秘密、ちょっと研究してみたいかも・・・。
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