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9.戦争の足音

 


 新世界歴1年1月4日、アルテミス人民共和国 首都リガルノ 国家主席官邸


 ユーラシア大陸の東に出現したアルテミア大陸。

 その大陸を全て支配しているのがアルテミス人民共和国である。

 そんなアルテミス人民共和国の国家主席官邸で主席は国防部長官からある報告を聞いていた。


「ほう?未知の国の航空機を撃墜しただと?」

「はい。北西部の森林地帯上空にて国籍不明の大型偵察機と見られる機体を我が国の戦闘機が撃墜しました。」


 この国が元々居た世界では、北西に国家が無かった事もあり、大陸の北西部はシベリアのような自然が広がるだけでだった。

 よって都市もほとんど無く、その為戦力も殆ど配置されていなかった。

 ただ、人が住んでいない広大な土地が広がる為、パイロットの訓練に最適で、訓練空域として使用していた。


 今回は早期警戒機の訓練飛行中にIFF(敵味方識別装置)に反応しない国籍不明機がレーダーに移った為、戦闘機が出撃し、無線で警告したが、反応は無く撃墜した。


 そもそも文明が違う為、IFF(敵味方識別装置)や無線が繋がったり、反応する筈が無い。

 しかし、結果的に危険性が有ると判断され、中華人民共和国空軍の『H-6B』偵察機は出撃したアルテミス人民共和国空軍の『J-16』戦闘機の発射したミサイルにより撃墜されたのである。


「ならば、大陸の北西方向に航空機を作るだけの文明レベルを持つ国が存在すると?」

「恐らく、撃墜したので何らかの接触が有るかと。如何なさいますか?」

「・・・人民委員達は?」


 人民委員は中国で言う中央政治局常務委員会、日本で言う国会に当たるのだが、委員は全員で12名しか居らず、その12名が人口4億人のアルテミス人民共和国を動かしている。

 中国と違うのは国家主席は人民委員の委員では無く、人民委員会議には出席出来ない。

 だが、一応選挙は実施されており、その選挙により人民委員は選ばれる為、その辺りは中国よりマシだろう。


「既に議決済みです。後は首席の許可のみとなります。」

「ふむ。派遣戦力の詳細は任せ・・・「失礼します!首席、緊急事態です!!」」


 主席が発言しようとした時、突然扉が開かれ、走ってきたのか息を切らした軍の将校がやって来た。


「何事だ!?つまらない事なら軍法会議だぞ!!」

「大陸西部の都市、アムルスが正体不明の敵の攻撃を受けました!アムルス空軍基地は壊滅。空軍西部方面隊の保有している作戦機の約5分の1が失われました!!」


 その報告を聞き国防部長官は蒼ざめた。


 アムルス空軍基地は地球で言う沖縄にある嘉手納空軍基地サイズの超広大な空軍基地である。

 この1ヶ所で西部方面隊の戦闘機の約5分の1に当たる200機程が駐留していた。

 更に爆撃機から輸送機、早期警戒機まで配備しており、3500m級の平行滑走路が有る、付近地域で最も規模の大きい空軍基地だった。


 当然その為、防空装備も充実しており、戦闘機は当然、ミサイル攻撃すら防げる程の防空体制だ。


「な、なんだと!?敵は?敵は何処だ!?」

「分かりません。ただ撃墜した正体不明の機体に描かれていた赤い星のマークと同様のマークが攻撃していた戦闘機に描かれていました。」


 つまり、その撃墜した事に対する報復攻撃である。

 ちなみに攻撃を行ったのは撃墜された『H-6B』偵察機の爆撃機バージョンである『H-6A』爆撃機である。


 発射したのは『DF-21』、一般的に『東風-21』と呼ばれている中国人民解放軍の準中距離弾道ミサイルである。

 正確には『DF-21D』対艦弾道ミサイルだが、中国はそれを対地攻撃に使ったのである。


 理由はただ単に北斗(中国版GPSシステム)が使えなかったからである。


 中国軍はこの『DF-21D』をアムルス空軍基地に各2発の計24発撃ち込んだのである。

 弾頭は通常弾頭だったが、結果的にアムルス空軍基地は基地機能を喪失し、廃墟となった。


 報告によれば隣接する都市にも数発のミサイルが着弾したようである。


「陸上戦力は?」

「現在は確認出来ません。」


 現在は、と言う事は今後は分からない。

 いや、空軍基地を攻撃して陸上戦力を派遣しないという方が可笑しいだろう。

 空軍基地を破壊する理由は上陸時に障害となる為であるからだ。


「クソッ!仕方がない。空中巡洋艦隊を派遣しろ。」

「な!?あ、あれには莫大な予算が掛けられている我が軍の虎の子です!もし撃墜されれば兵士達の士気に影響が・・・」

「基地を1つやられているんだ!いいか!これは命令だ!直ぐにかかれ!!」


 国防部長官が異議を唱えるが、目の前にいる人はこの国で最も偉い人(国家主席)である。

 下手に逆らえば適当な罪をでっち上げられた処刑されるだろう。

 長官は主席の機嫌がこれ以上悪化しないうちに大急ぎで部屋から飛び出していった。


「は、はいぃぃぃぃ!!!」


 国防部長官が飛び出して行って1人残った執務室で主席は呟いた。


「クソッ!何処のどいつだ?まさかスフィアナか?いや、あの国は我が国に攻めてくるような事はしない筈だ。・・・まぁ、空中巡洋艦隊はやられんよ。アレは化け物だからな。」


 そう言う主席の顔には笑みが溢れていた。

 しかし、その笑みはどこか不穏な空気を誰もいない周囲に醸し出していた。





 新世界歴1年1月4日、ユーラシア大陸東方の海上


 何も無い広大な海を20隻を超える大艦隊が突き進んでいた。


 五星紅旗(中国旗)と人民解放軍海軍旗を掲げているのは6隻の【071型】揚陸艦と12隻の【072A型】揚陸艦(玉亭型揚陸艦)の18隻の揚陸艦。

 そして護衛の4隻の【052D型】駆逐艦(昆明級駆逐艦)と2隻の【055型】駆逐艦(南昌級駆逐艦)の6隻。

 計24隻の大艦隊が前世界より狭くなった旧太平洋を航行していた。


 この艦隊の目的は新大陸に侵攻し、中国の領土を広げる事。

 既に障害となる為に敵航空基地は『H-6B』爆撃機の対艦弾道ミサイルの攻撃により破壊されている。


 18隻もの揚陸艦を含む24隻の大艦隊を経った3日で準備した中国は恐るべしだが、急を要した為、軍管区や派閥を完全に無視した編成の為、上層部は現在カオス状態となっている。

 だが、彼等が今その事を知る筈も無く、目的地へ向かって航行を続けていた。


 軍管区や派閥を超えた中華人民共和国創立以来最大となる揚陸作戦の司令官となった中将がのんびりと艦橋で海を見ていると、北京からの報告を若い将兵が大急ぎで報告しに来た。


「司令、ロシアが自国の無人機を撃墜された事を理由に新大陸の国家に対して攻撃を加える事を発表した模様です!」

「ロシアか・・・ウラジオストクにはそんな大量に艦隊は無かった筈だ。精々潜水艦くらいだろう?」


 艦隊司令はロシアを脅威では無いと判断した。


 現実、ロシア海軍は艦隊を北方艦隊・太平洋艦隊・バルト艦隊・黒海艦隊・カスピ小艦隊の5つに分けられており、潜水艦はともかく水上艦艇は多くなかった。

 例え、新大陸に最も近いウラジオストクの太平洋艦隊を総動員しても2000名も輸送する事は出来ないだろう。


 ロシア海軍の主力はアメリカとも渡り合える程の潜水艦部隊であり、太平洋戦争の日本(伊400型潜水艦)や南米の麻薬密輸ならともかく潜水艦は輸送には使えない。


「し、しかし。ロシアには空挺軍がありますが・・・」

「あっ・・・」


 すっかり司令は忘れていた。

 何も船だけが輸送の手段では無い事を。

 

 ロシア空挺軍は陸海空軍に次いでロシア第4の軍隊で、世界で唯一の空挺部隊の独立兵科である。

 その人員は3万5000名で、増強した陸上自衛隊の第1空挺団でも3500名と10倍である。


 と言ってもロシアにおける空挺軍の位置付けは陸上自衛隊の空挺団のような特殊部隊では無い。

 ロシアは国土が広大な為、部隊の展開に非常に時間がかかる。

 つまり空挺軍は陸上自衛隊の機動旅団・機動師団である。


 更にロシアは世界で最も空挺降下可能な車輌を開発している国であり、MBT(主力戦車)以外の車輌は全て空挺可能な物を開発している国でもある。


「・・・新大陸で衝突なんて事は起こってほしく無いな。」


 司令はそう呟いた。

 もしそうなればロシアと中国の大国同士の戦争で、最悪核の撃ち合いとなる。


 彼としてもそれだけは避けたかった。


「そう言えば最近欧州で何か動きがあるようですね。」

「欧州でか?ふむ、アメリカが居ないとはいえNATOとして動くと面倒だな。だが、大した事は無いだろう。」

「恐らく。」


 アメリカの居なくなったヨーロッパ及びNATOは軍事的に脅威では無い事で彼等は一致した。


 新大陸まで残り1000kmである。




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