表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/157

72.造船不況?ナニソレ?

 


 新世界歴1年9月14日、中華人民共和国 山東省 青島市 中華人民解放軍海軍 青島基地


 つい1年程前までは正規空母や北海艦隊の主要艦艇が沢山係留されていた青島基地だが、今は中華人民解放軍海軍の栄光は見る影も無く、立派な軍の港湾施設に何も係留されていない。

 そんな青島海軍基地で、何も係留されてない埠頭を懐かし気に見つめる1人の男性が居た。


「司令員、こんな所に居られましたか。」


 司令部の要員と思われる担当官が走って向かって来た。

 つまり、彼は()()()()になった前司令員の代わりとして就任した司令員、つまり艦隊司令官である。

 普通ならば栄転である北海艦隊司令員の就任だが、今のこの時期の就任は左遷としか思えなかった。


 空母2隻のうち1隻と主要駆逐艦8隻のうち6隻が新大陸侵攻に向かって沈没したのだ。

 残ったのはソ連のお古である練習空母【遼寧】となけなしの駆逐艦2隻のみである。

 唯一の救いは12隻のフリゲートは10隻が残っている。

 この10隻は航続距離の短さから、新大陸侵攻に参加しなかった艦艇である。

 つまり、新大陸へ向かった艦艇群は全て沈んだのだ。


「ここも随分と貧相になったなと思ってな。」

「・・・そうですね。たくさんの戦友が亡くなりました。」


 出撃した艦隊に知り合いでも居たのかと思ったが、単純に約1万人の艦隊である。

 知り合いの1人や2人居てもおかしくない。


「あぁ、結果的に得た物は何も無かったがな・・・」


 そう言って司令員は建物の方へと歩き出す。

 これ以上の愚痴は共産党に対する悪口になってしまうので、自分の立場的にも不味いのだ。

 その悪口が原因で処分される可能性もあり、狭苦しい世の中になったな、と司令員は思った。


 しかし、司令部に戻った司令員は軍事通信を用いて北京の国防部からもたらされた通達に戦慄する事になった。

 それは・・・・・





 新世界歴1年9月14日、中華人民共和国 遼寧省 大連市 中華人民解放軍海軍主契約ドック


「30隻もの艦艇の建造計画!?」


 新大陸侵攻艦隊の壊滅の原因となった大津波の被害を奇跡的に受けなかった遼東半島の先っぽにある大連市。

 そんな大連市には造船大国中国の名前を支えた巨大な造船所が無数にあった。

 数十万t級の船舶が同時進行で多数建造出来る規模と言えば分かるだろうか。

 しかし、そんな巨大造船所でも中国共産党から降りて来た要望書(命令書)には驚きを隠せなかった。


「はい。中央政府は欠けた戦力の一刻も早い穴埋めを望んでいます。」


 驚く工場長とは裏腹に共産党員は共産党及び海軍からの要望を述べていく。

 海軍艦隊の壊滅で上層部は静粛の嵐と聞いていたが、どうやら組織はしっかりと動いているようだ。


「建造する艦艇はどの艦種ですか?一刻も早くならば新規開発は望めないと思えますが・・・」


 当然ながら艦艇、更には軍艦なので艦艇の設計やシステムの開発、兵装類などの開発には早くても1年〜2年はかかる。

 日本の【あさひ型】や中国の【広州級.052B】【蘭州級.052C】【昆明級.052D】などの発展版や改修版などはあるが、短期間での建造ならばそれは望めない。


「それは存じています。詳細な設計は現在行なっている最中ですが、恐らく057型駆逐艦の発展版になると思われます。」


【057型】駆逐艦は中国の最新鋭駆逐艦である。

 基本的には【052D型】の発展版でしか無いのだが、現在の中華人民解放軍海軍の主力駆逐艦であった。

 基礎設計が同じなら、船体だけ先に建造して、システムや兵装は後追いでも構わなかった。


「そうですか、また忙しくなりそうですね。」


 そう言って工場長は今はスカスカのドックの方向を見た。

 主な発注国であるヨーロッパ諸国との繋がりが一時的に切れてしまい、イベリア戦争でそれどころでは無くなってしまったのだ。

 その為、受注が大幅減少し、社内では人員削減計画も出ていた程だった。

 だが、高価な軍艦を大量に受注したならば、また全盛期程の忙しさになる。


「ではお願いしますね。」

「はい。こちらこそ。」





 新世界歴1年9月14日、日本国 長崎県 長崎市 M重工長崎造船所


 一時期は韓国と中国の造船業に押され国内の造船会社は合併を繰り返した時期があった。

 その結果、大きく4つの造船会社に纏った日本の造船業だったが、今はその造船業は未曾有の好景気となっていた。


 理由は競争相手(韓国)の焼失とミレスティナーレが発注する量が尋常では無かった事が挙げられる。

 特にミレスティナーレが発注した船舶が多かった。

 ミレスティナーレの造船技術が未熟だとして政府やミレスティナーレの船会社などが日本やスフィアナの造船会社に船を大量発注した事により現在、日本とスフィアナの造船所はパンク寸前だった。

 ちなみイギリスや台湾などにも造船所はあるにはあるのだが、海軍専用だったり、規模が小さかったりと日スと比べても非常に貧相だった。


「一昔前の不況が嘘のようだな・・・」


 長崎造船所の香焼工場内にある世界最大の100万t級ドック内で建造される4隻の大型船舶を見ながら呟いたのはM重工の役員である。

 ちなみ同じドック内で建造されている船はどれも20万tクラスや30万tクラスの大型船舶である。


「我が社の全てのドックの予定が埋まっています。唯一、余裕があるのは海上自衛隊用のドックでしょうかね?」

「そっちもこれからは余裕が無くなっていくがな。」


 12中期防の閣議決定により海上自衛隊の護衛艦定数は更に増える事になっている。

 となれば、今以上に艦艇を建造する必要が出て来る。

 更に言えばその建造した護衛艦の整備なども必要になる為、今以上にドックが必要になるのは民間にしろ自衛隊にしろ変わらなかった。


「・・・ドック不足で、新たにドックを建設ねぇ。」

「一体何処に建設するのでしょうか?」


 重工本社内で上がっている提案について「安易だなぁ」と思いながらも、必要だからなぁ、と割り切る。

 と言っても、既に重工のドックがある長崎と下関は新たにドックを作るスペースは無い。

 更に別の土地にしろ、造船などに向いている場所は既に製鉄や製油関連などの工場が立ち並んでおり、今更そんな広大な土地を使える場所は長崎と下関近辺には無かった。


「まぁ、製鉄所などの部品供給や大型船舶の為のある程度の深度は必要ですし、大阪湾岸?伊勢湾岸?そのどちらかかな?」

「いや、私に聞かれても・・・そういう社内の情報は貴方の方がいち早く知れるでしょう?」


 社の役員の男性の質問?独り言?に工場長がそう答える。

 まぁ、伊勢湾岸はともかく大阪湾岸は既に幾つかの造船所が点在しているので、候補としては最適だろう。

 ちなみにM重工にも神戸造船所という造船所があるのだが、造船不況時の再編により神戸造船所は自衛隊オンリー(潜水艦)となっているので、商船は何十年も建造していない。


「となると・・・大阪一択かな?」

「大体想像は出来ますよね。ところで、その提案はどのレベルの造船所なんですか?」


 工場長の問いに役員は「う〜ん」と少し考えて言った。

 多分、外に出しても良い事かと考えたのだろう。


「ここと同レベル規模。」

「ど、同レベルって・・・・・」


 余りの博打とも言える構想に工場長は唖然とした。

 この場所、香焼工場は世界最大とも言える100万t級ドックがある造船所である。

 そんな物を大阪湾岸なり、伊勢湾岸に建設しようとしたら、人工島丸々分の土地が必要になる。

 今は造船業が好景気で良いが、また不況になったら?

 どうしても工場長の頭から、あの中国と韓国に押されまくった記憶が抜けない。


「まぁ、計画だからなぁ。敵は中国じゃ無くてスフィアナかな?」

「そう言えばスフィアナもかなりの造船大国だと聞きましたね。」


 一部の(イギリス)を別として、基本的に島国は周りを海で囲まれている為、造船業が盛んな立地である。

 スフィアナ連邦国も島国の為、造船業が盛んでも何の不思議も無かった。


「受注を全部奪われないと良いですけど・・・」


 工場長のその言葉に役員は苦虫を噛み潰したような顔になる。

 過去に中国と韓国の造船会社に受注を奪われた前科があるので、否定出来ないのだ。

 と言っても、少なくともミレスティナーレが発注している分だけでもスフィアナ1ヵ国の造船業では賄いきれない。


 更に言うと地球世界の軍事以外の造船業は日中韓の3ヵ国で世界シェアの9割を担っていた。

 そのうち韓国が中国の八つ当たり(朝鮮半島侵攻)で壊滅、更には韓国と中国の湾岸部が大津波で壊滅的被害を被った為、アメリカやヨーロッパの船会社は日本に受注させるしか無いのだ。

 更に言えば、もし中国の造船所が復旧しても中国から北米、中国から欧州航路は未だ戦争中の危険地帯。

 とてもじゃ無いが、リスクが高すぎる。

 まぁ、慢心する理由にはならないが・・・


「まぁ、私達(現場)は船を造る事しか出来ませんので、お願いしますよ。同じ事は二度と繰り返さないで欲しいですね。」

「・・・・・」


 そう言って工場長は部屋から出て行った。

 残された部屋に1人ポツンと残された役員は呟いた。


「私・・・航空機部門なんですけどね・・・。」


 ・・・と。

 実はこの長崎造船所では航空機の部品も製作しているのである。

 造船所は敷地がかなり広い為、造船関連の工場だけある訳では無いのだ。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ