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7.スフィアナ連邦国軍の戦力

 


 新世界歴1年1月3日、イギリス連合王国 首都ロンドン ダウニング街10番地


「ほう、日本が異世界の国家と外交関係を結んだか。」


 イギリスの首相は今年に入ってから毎日行われている定例会議で外務大臣よりそう伝えられた。


「はい。先程、駐日大使から通達がありました。駐英日本大使によりますと我が国を紹介したところ前向きに検討したいと伝えられたそうです。」

「成る程、なら期待出来るかな?」


 京都で「前向きに検討する」は拒否する事と同じらしいが、外交で「前向きに検討する」は「是非行いたい」と同じである。

 いわゆる外交言葉というものである。


「それで日本は領海侵犯で捕縛した艦と乗員を無条件解放したそうです。」

「ほう、それで?その日本が新たに外交関係を結んだ国はなんて国だ?国家体制は?どれくらいの規模だ?」


 首相からその国について矢継ぎ早に質問が飛んでくるが、外務大臣は手に持っていたタブレットを操作し、該当のページを探す。

 そして、お目当てのページが見つかり、それに記載されている内容をそっくりそのまま発言する。


「日本が外交関係を結んだ国の名前はスフィアナ連邦国。日本の南東約1000km程の地点にある島国だそうです。主に3つの大きな島とその周辺の島嶼部から成り立っており、国土面積は約48万㎢、人口は約8600万人、国王を君主に置く議会民主制の立憲連邦君主政の国家です。」

「我が国より大きいな・・・」


 この星が地球より大きいのは水平線などの距離から既に分かっている。

 地球での水平線は約19kmだが、この惑星は30km以上ある。


 そのスフィアナ連邦国がこの星の国家か、イギリスや日本と同じように別の星から飛ばされたのかは分からない。

 しかし、それだけの人口を抱える国が近くにある事は経済的には喜ばしい事であった。


「そうですね。ですが、うち1つの島の約8万㎢を聖域としており自然保護区として指定して一般人の立ち入りは極めて厳しく制限されているようです。」


 その事実を聞いて外務大臣以外の首相を含む周りの出席者は言葉も出なかった。

 8万㎢と言ったら日本の北海道と同じ程の大きさである。

 そのような広大な土地を開発せずに自然保護区として人の立ち入りを厳しく禁止しているのは土地が狭い島国としてはある意味異質だった。


 そして、同時に自然環境の保護に積極的な国民性な事も推測できた。


 しかし、ここである大臣がある事に気付いた。


「聖域という事はそのスフィアナ連邦国とかいう国家は宗教国家か?」


 もし宗教国家ならその宗教に影響を受けた憲法や法律が定められている恐れがあった。

 例にあげればイスラム圏の石打ち刑やイスラム圏及びキリスト圏の宗教戦争などである。

 そうなると、その国との付き合いも少し考えなければならなかった。


「データによるとそのスフィアナ連邦国はセレスティア教という宗教を国教としているようですが、信教の自由は憲法で保障されているそうで、国としての政教分離は行われているようです。その聖域というのは、ん?」

「ん?どうした?」


 報告をしていた外務大臣が言い淀んだのを不審に思った首相が尋ねるが、外務大臣は言いにくそうに話した。


「い、いえ。その聖域はえっと、精霊が住んでいるそうなので自然保護区として人の立ち入りを制限しているそうです。」

「精霊?宗教的なアレだろ?」


 精霊というとあのラノベや小説に出てくる自然の化身である。

 現実に居たら、などとラノベや小説を読んでいたら一度は考える代表格だが、現実にそのような者がいるはずが無い。

 首相は宗教的な言い回しだろうと判断した。


 しかし、後にイギリスや日本はこの精霊という存在を嫌と言う程認識する事になるのだが、この時まだ誰も分かっていなかった。


「恐らく、そうでは無いかと思われます。」

「まぁ、その聖域だが自然保護区の事は今はいい。スフィアナの軍事力は分かるか?」


 首相がそう言った時、真っ先に反応したのは国防大臣であった。

 もしかしたら安全保障上では敵になる可能性があるからだ。

 逆に安全保障上のパートナーとして装備の共同開発や合同訓練などを行う可能性もあった。


「まだ、詳しい事は分かりませんが、彼等の艦艇を見た感じ保有している兵器レベルは同等レベルのようです。次に彼等から聞いた主な軍事情報です。スフィアナ連邦国は前世界の我が国や日本の位置にある国と領土を巡って過去に何度か戦争をしていたようですので、軍事力は極めて高いです。スフィアナ連邦国軍は四軍体制で陸軍が18万、海軍が7万、航空宇宙軍が5.5万、戦力・基盤軍が1.5万の総兵力は約32万人です。」


 その言葉に国防大臣は衝撃を受けた。


 イギリス軍は三軍編成で陸軍に10万、海軍に3.5万、空軍に4万の計17万5000人。

 これに予備役や準軍事組織なども合わせても約36万程である。


 一方の日本の自衛隊もそこまで多くはない。

 自衛隊は陸上自衛隊が15万、海上自衛隊が4.5万、航空宇宙自衛隊が4.5万の計24万人。

 これに予備役や準軍事組織なども合わせても32万程である。


「常備兵力だけでそれか、予備役なども入れたら我が国と日本、スフィアナだと2:3:5くらいの比率か?」

「そんなにか?4:5:7くらいだろ?」


 常備兵力だけ見るとイギリス:日本:スフィアナで2:3:4だが、軍事の世界はそんなに単純では無い。

 スフィアナが核を保有していないなら5:3:4くらいの差だろう。


 最も、使えない兵器の代名詞である核を保有していても、という思いはあるが、少なくとも攻撃を躊躇する理由にはなる。


「では、説明を始めますが、スフィアナの主戦力は海軍戦力で、スフィアナ連邦国海軍は2隻の中型空母を保有しています。その空母を含めた2個空母打撃群と3個水上打撃群、そして各基地に配備されている5個地方隊で編成されています。

 空母艦隊群及び通常艦隊群は2個艦隊で1個艦隊群。地方隊は各1個艦隊で1個地方隊です。予備も含め計16個艦隊で、1個艦隊が4隻編成で、単純計算で64隻の主要艦艇を保有している事になります。」


 イギリス海軍は2個艦隊の24隻プラス地方隊で編成されている。

 海上自衛隊は4個護衛隊群(艦隊群)プラス地方隊&予備の計14個護衛隊(艦隊)の計54隻である。

 つまり、海上自衛隊より少し多いレベルという事である。


「多いなぁ。それだけの艦艇があれば潜水艦も当然あるだろう?」

「はい。潜水艦は3個潜水艦隊で練習用潜水艦を含め計26隻になります。ちなみに、その潜水艦が原子力かどうかは不明です。」


 イギリス海軍は11隻の原子力潜水艦を保有しており、全て原子力動力であるが、潜水艦戦力は大きくは無い。

 一方、日本の海上自衛隊は22隻の潜水艦を保有しており、2010年代の16隻より増強したのだが、スフィアナには遠く及ばない。


「やっぱり敵対するにはキツイ戦力だな。航空戦力はどれ程だ?」

「どうやらスフィアナも我が国と同様に海軍の空母の戦闘機部隊は空軍管轄のようです。それも含めて戦闘機数は500機弱程ですが、戦闘機の性能は未知数です。」


 最も、同じ程の文明力ならば戦闘機の性能も大差無いと思われる。


 しかし日本の隣国の韓国では日本ではとっくに退役した『F-4』戦闘機と同世代の『F-5』戦闘機を未だに100機以上運用している。

 その為、スフィアナもそういう可能性があった。

 最も、直ぐに戦闘機を更新する日本が異常なだけで、別に韓国がおかしいわけでは無い。

 むしろ、それが普通である(耐用年数などはあるが)。


「まぁ、当然か・・・」


 そもそも、スフィアナ連邦国の居た世界と地球の世界が同じ技術発展をしたとは限らないのだ。

 戦闘機も現在はステルス性能やハイパークルーズ、無人化などに移行しているが、スフィアナは違った方向に移行しているかもしれない。

 その為、外務大臣は「未知数」と言ったのだ。


「それで?陸上戦力は?20万弱も兵力が居るんだ。相当な戦力だろう?」 

「そうですね。資料によりますと陸軍は2個機甲師団、3個機動師団、4個機動旅団、5個基幹師団、1個海兵遠征旅団、2個外征旅団の計17個師団・旅団で構成されています。基本構成は日本の陸上自衛隊の拡大発展版ですね。機動力を重視した編成です。」


 イギリス陸軍は総兵力10万で5個師団編成。

 日本の陸上自衛隊は総兵力15万弱で15個師団・旅団編成である。

 1個師団辺り2万人程居るイギリス陸軍とは違いスフィアナ連邦国陸軍の編成は日本に似た編成である。


「まぁ、もし何かあっても日本という防波堤()があるからまだマシか・・・」

「その前に衝突しないよう考えて下さい。」


 国防大臣が睨むような目で首相を見てくる。

 その余りの眼圧に首相はスッと目を逸らした。


「分かってるよ。ただ、安全保障環境が変わり過ぎて。ねぇ。」


 当然ながらそれぞれの軍隊はそれぞれの地政学上に基づいた軍隊編成及び配備を行なっている。

 それは末端の兵士が使用する小銃に至るまで全ての装備であり、いきなり別の場所に転移する事など想定すらされてない。


 まだ、宇宙人が攻めてくるという仮想の方が現実味があっただろう。


「全くですな。防衛計画を1から練り直さないといけない。まぁ、これに関しては日本や世界中の国々が同じでしょうが、まだ見つかってる地球の国が日本と台湾、アイルランド、アイスランドでは、捜索範囲を広げても海しか見つかりませんし、太平洋より広い大洋のど真ん中にでも飛ばされたんですかねぇ。」


 現在、イギリスは近くに日本という世界でもそれなりに軍事力を持っている国があり友好国の為、特に問題は無いと判断したのか有り得ない作戦(ブラックバック作戦)を行なっていた。

 『E-3D』早期警戒管制機と『ボイジャーKC.2/KC.3』空中給油輸送機をフルに投入して、航続距離を延伸し、一気に広範囲を捜索していた。


 これを聞いた日本は一部の『E-2D』早期警戒機を今やイギリスと日本の間となった日本海やイギリス本土に展開させていた。

 だが、この作戦のおかげで新たにアイスランドを発見した。

 ちなみにアイスランドとイギリスの位置関係は転移前と全く変わっていなかった。


「まぁ、これまで通り周りを海に囲まれた島国なのは不幸中の幸いですかね。来年度の国防予算は補正予算も含めてそれなりに上げてもらわないと・・・」


 栄えある連合王国(イギリス)を導く首脳陣達の会議はまだまだ続く。




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― 新着の感想 ―
[一言] おお、スフィアナの軍事力は日本とほぼ同じか、質的な面では一部上といったところですか。しかし今のイギリス海軍の凋落ぶりには泣いた…
2020/12/24 21:17 退会済み
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