60.空母建造会議
新世界歴1年6月25日、日本国 首都東京 防衛省 海上幕僚監部 航空機搭載護衛艦建造委員会
3ヶ月前の令和12年度中期防衛力整備計画に記載された『固定翼機運用を前提とした全通甲板型大型護衛艦の建造』の内閣での了承により、防衛省海上幕僚監部内で立ち上げられた航空機搭載護衛艦建造委員会、通称空母委員会は海上自衛隊だけでは無く陸上自衛隊や航空宇宙自衛隊の人間も入って建造計画を決めていた。
だが、海上自衛隊の中でもタカ派の人間はイギリスの【クイーン・エリザベス級】やスフィアナの【スイレート級】よりも大きい、言ってしまえば海上自衛隊の象徴のような大型空母建造を押していた。
一方のハト派とまではいかない人間は3万t〜4万t級の小・中型空母建造を押していた。
結局は予算の問題と与党内の(流石に大型空母はマズイだろ。)という1人の議員の意見で却下された。
「では新造する予定の航空機搭載護衛艦は基準排水量4万t級の中型空母で決定致します。」
「次に、どの程度のRoRo機能や輸送機能、病院船機能を用いるかについてです。」
「クイーン・エリザベス級と同程度で良いのでは?」
「船体の大きさから考えてもそれが妥当だろう。」
基本的に海上自衛隊の建造予定の航空機搭載護衛艦はイギリスの【クイーン・エリザベス級】を参考にしている。
海上自衛隊内には極秘に空母建造の為の委員会が存在し、航空機搭載護衛艦建造委員会はその委員会の拡大発展版である。
その為、既に大まかな建造計画書が何通りか用意してあって、今回の会議はその細部を煮詰める会議でしかない。
「では、次に艦載機です。現在アメリカはイベリア戦争によりF-35BもしくはF-35Cの生産は全て国内向けに振り分けると通達してきました。よってF-35Cを調達しようとしたら初号機の納入はは令和20年程になります。」
「遅過ぎる!1番艦の就役は遅くても17年だぞ?」
F-35戦闘機調達担当官の説明に海上自衛隊の人が却下する。
現在『F-35A』と『F-35B』がライセンス生産されており、当初は『F-35C』のライセンス生産も直ぐに行えると思われていた。
だが、日本とアメリカの距離が離れ、アメリカ政府が日本に自国の最新兵器を提供する事に難色を示し始めたのである。
前世界では日本は対中国や対ロシアの防波堤として最新兵器を売却する必要性があったのだが、今アメリカ政府はその必要性を感じていないのだ。
「では艦載機はどうするのだ?艦載機が無くては空母もただの鉄の塊だぞ?」
「現存、空自機の改修は?」
「望み薄だな。F-15は艦載機としてはそもそもの設計が向いていない。F-2は改修すれば可能だが、そもそも2040年程までしか使えないとなると、改修するだけのメリットが無い。」
「F-3はどうだ?」
「可能性としては、それしか無いな。確かイギリスがテンペストの艦載機への転用の研究を行っていた筈だ。情報提供を要請しよう。」
という訳で艦載機は『F-3』戦闘機の艦載機版となる事が仮決定したのだが、正式決定にはイギリス政府の回答を待たなくてはならない。
最も、テンペスト計画で日本とイギリスの立場は同等で、双方自由に改修や改造を行う事が認められていた。
唯一、相手政府の承認が必要なのは日英以外に売却する時のみである。
また、新造する航空機搭載護衛艦はCTOL型空母となる事も決定した。
ちなみに艦載機版『F-3』の完成までは、少し古いがアメリカ製の艦載機『F-18』をリリースする事がこの会議で決定した。
こうして日本国初の正規空母建造に向け、順調とは言えないものの、着実に一歩一歩進んでいったのである。
新世界歴1年6月25日、アメリカ合衆国 カリフォルニア半島 南東沖合1000km
沖に停泊した強襲揚陸艦やドック揚陸艦から多数の『LCAC』や『AAV7』が発進し、上陸地点を目指して突き進んでいた。
『AAV7』はかなり古い車両で、後継の『ACV1.1』の配備も進んでいるのだが、今回の作戦には『AAV7』が投入されている。
理由は今回の作戦で上陸する島がインフラのイの字も無い未開の地の為、装輪式の『ACV1.1』よりも履帯式のAAV7の方が都合が良かったからである。
今回、アメリカ海兵隊が上陸した島は転移当初、沿岸警備隊が発見しており、その後も偵察機や哨戒機などを投入して調査を行っていた。
そしていざ上陸しようとなった時にテルネシア戦争が始まり、イベリア戦争も始まった。
そして今回、テルネシア戦争が終わり、イベリア戦争も落ち着いてきた事により上陸となったのだ。
島の大きさは台湾島と対して変わらない比較的大きな島の為、かなり念入りに調査されたのだが、文明のカケラも見つからない未開の地である事が確認された。
「上陸した後、上陸地点付近を確保して橋頭慕を確保する!直ぐにヘリから大型機材が運ばれてくるから直ぐに陣地構築を開始するぞ!」
上陸地点に向かう『AAV7』の一群の中の1両、『AAV7』の指揮通信型車両の中で隊長が今回の作戦を何回も確認している。
ちなみに『AAV7』は乗り心地など気にしていない軍用車両の為、非常に揺れている。
「降車!!」
上陸地点に上陸した『AAV7』から海兵隊員が降車して『M4』小銃を構えながら付近の安全を確保していく。
上空では強襲揚陸艦から発進した『AH-1W』や『AH-64E』などが飛び交っていた。
何故人が居ない島なのにこんなに敵地上陸の完全武装なのか?と言うとただ単に未知の島だからである。
新大陸に上陸した日本国陸上自衛隊水陸機動団やスフィアナ連邦陸軍海兵遠征旅団なども完全武装であったように未知の島にはどのような敵が居るか分からないからである。
実際に新大陸、アルテシア大陸でも上陸3日目にクマのような生物が襲いかかって来た為、スフィアナ連邦陸軍隊員が射殺したり、航空支援の為展開していた陸上自衛隊の『AH-64E』が射撃する事も起きている。
そして、この島でもそういった事は直ぐに起こった。
『クマらしき生物がそちらに向かっている。地上部隊は注意されたし!』
上空の『AH-1W』からの報告に付近に居た海兵隊員が森に向かって一斉に『M4』小銃を構えた。
上陸した『AAV7』に搭載されている『M2』重機関銃や『40mm自動榴弾銃』などが森に向けられる。
そしてその数分後。
「撃て!!」
中隊長の掛け声と共に各海兵隊員が構えた『M4』小銃や『AAV7』の『M2』重機関銃などが火を吹き、森から飛び出してきた3頭のクマ?は一瞬で身体中から血を吹き出し息耐えた。
「ふむふむ、12.7mm弾は過剰か?」
「5.56mm弾も十分に効いてますね。」
撃ち殺して動かないとみるや否や、十数名の海兵隊員がクマの周りに集まり銃創などを確認していた。
地球にいる熊などを狩る猟銃はだいたい7.62mm弾を使い数発で倒している。
弾の直径が小さくなったところでそんな物を数十発も撃ち込めば死ぬに決まっていた。
実際にアルテシア大陸でクマらしき物を射殺したスフィアナ連邦陸軍海兵遠征旅団隊員の持っていた銃は7.62mm弾だった。
「なら装備は今のところコイツで問題無さそうですね?」
「あぁ、一応はな。このクマらしき獣以外に危険な生物が居るのなら話は別だが、今のところは問題無いかな・・・」
中隊長の問いにそう答えたのはアメリカ陸軍感染症医学研究所の調査員である。
もしこの島で危険な細菌やウイルスが発見された場合に上陸した彼等を隔離する為の報告をする任務を与えられており、最終的にはナパーム弾で感染者毎焼却する事を視野に入れていた。
現状では危険なウイルスや細菌などは確認されてないが、本土に帰国する前に検査される手筈であった。
流石のアメリカ国防省もこの台湾島程の面積のあるこの島を短期間で占領出来るとは考えておらず、幾つかのシーケンスに分けて占領政策を実行する手筈であった。
現状、アメリカ付近に転移した島はこの島だけである為、多数の島や諸島が転移した新太平洋とは大きな違いである。
この半年間だけで日本は約3000にも及ぶ新島を領有しており、スフィアナ、イギリスも多数の島を領有していた。
「先が思い遣られるなぁ。」
そう言いながら倒した熊モドキにガソリンを掛けて焼いていく。
今は占領政策が優先され、学術研究は数頭のサンプルを厳重に封をしてアメリカ本土に送るだけである。
この日だけで百頭を超える生物を射殺したが、何名かの隊員が犠牲になってしまった。
日本ならその時点で野党が煩く言うのだろうが、アメリカの場合は英雄視され、付近に作られる通りの名前になる。
その辺りの思い切りの良さがアメリカの良い所でもあるし、悪い所でもある。
『第2次上陸シーケンスが完了した。第3次上陸シーケンスを実行する。実行にあたっては・・・・・』




