表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/157

51.各国の現状

 


 新世界歴1年5月20日、ベルギー 首都ブリュッセル NATO本部 会議室


「敵部隊は概算で約60万の兵力でNATO各部隊と相対しています。」

「例の空中戦艦と見られる機体が40隻程確認されています。」

「前線は現在膠着状態でレムリア軍は態勢を立て直しているものと思われます。」


 ブリュッセルにあるNATO本部にある大会議ではNATO加盟国のイベリア半島派遣軍の将達が報告会議を開いていた。

 現在、NATO加盟国でイベリア半島多国籍軍に参加しているのは自国が戦場になっているスペインとポルトガル、そしてNATO加盟国のアメリカ・カナダ・フランス・イタリア・ドイツ・トルコ・オランダ・ベルギー・オーストリア・ポーランドの計12ヵ国である。


 現在、前線は各国の頑張りとアメリカの援軍のおかげでレムリアと陸続きとなったジブラルタルとタリファまで押し返している。

 双方とその周辺の都市は未だにレムリア軍の支配下だが、それ以外での北部の都市では一般人が入れる程戦況は落ち着いて来た。


 現在、国境周辺に展開しているNATOの地上部隊は約23個師団・旅団。

 内訳はアメリカ8個旅団、フランス4個師団、トルコ2個師団、スペイン3個師団、ドイツ2個師団。

 そして、イタリア・ポルトガル・カナダ・ポーランドなどの各国が残りとなっている。


 特にフランスは自国の危機だとしてイタリア・ドイツ・スイス・ベルギー方面の部隊を全てスペイン方面に配置し、約10個師団がスペイン方面に張り付いていた。

 今では4個師団まで減ったが、それでも他の方面には殆ど部隊は戻っていない。


「アメリカ空軍の爆撃機部隊がフランスのトゥールーズブラニャック空港に展開している。」

「アメリカ海軍の2個空母打撃群が大西洋に展開している。」


 アメリカ軍から派遣されている将校がそう発言する。

 だが、


「敵の戦闘機の数は膨大だからな・・・」

「レムリア国内に多数の大規模空軍基地が確認されている。パッと見ても1000機以上は居るな。」

「どんだけ居るんだよ!」


 現在、アメリカは必死に打ち上げた偵察衛星の殆どをテルネシアとレムリアの2ヵ国に振り分けていた。

 それによるとジブラルタルから半径2000km圏内に12ヶ所の空軍基地が確認され、1ヶ所だけで100〜200機近い航空機が配備されていた。

 軍事の常識として1ヶ所に戦力を集中させるのは余り良い事では無いが、どの基地にも同じ数の部隊が配備されているなら、彼等の中では戦力を分散しているのだろう。


「敵の戦闘機ですが、一部第4世代型戦闘機も出てきました。」

「形状はF-16戦闘機に似ており、様々な装備を搭載しています。」


 そう言ってフランス軍将校が見せた画像にはアメリカの『F-16』戦闘機に似た戦闘機が映っていた。

 ただ、『F-16』戦闘機とは違い機体前部にガナード翼が取り付けられており、『F-16』戦闘機より格闘戦能力は高そうであった。


「そっちの方が主力部隊か?」

「だとしたらマズイですね。」


 現在の航空戦力では、数は多いが性能の劣るレムリア空軍と数は少ないが性能で勝るNATO空軍で、釣り合いが取れていた。

 だが、数が多く性能の高い戦闘機なら間違い無く現在の均衡が崩れて、奪還したイベリア半島を再びレムリアに奪われかねない。


「アメリカ空軍の更なる増派は来月の中頃か・・・」

「・・・テルネシアとの戦争での被害が凄まじくてな。」

「テルネシア?・・・あぁ、成る程。」


 アメリカ空軍はテルネシアとの戦争でグアムのアンダーセン空軍基地とアラスカのエルメンドゥルフ空軍基地という2つの大規模空軍基地を失っていた。

 地上撃破なども含めると失った戦闘機は200機近くにも登り、その殆どが『F-35A』戦闘機や『F-15X』戦闘機などの最新鋭機だった。


 アメリカ以外の各国はアメリカが喧嘩を吹っかけて返り討ちにあった事を知っているのだが、わざわざ不機嫌にさせる必要は無いとあえて触れなかった。

 ここに居る人間はみんな大人なのだ。


 更にレムリアの戦闘機は大多数が第3世代、一部は第4世代のようだが、わざわざステルスを意識して搭載量の少ない第5世代機など必要なかった。

 オランダやベルギーの『F-35』も外装を取り付けてステルス性能は全く無視して運用している。

 例え第4世代でも欲しかったのだ。

 今のヨーロッパは50機の第5世代より100機の第4世代を必要としていた。


 とりあえず、アメリカからの援軍待ちで計画を立てる事となった。

 相手が数で攻めてくるならば、こちら側もそれなりの数を揃えなければならないからだ。

 最早、ヨーロッパ各国は経済も軍事も完全にアメリカ頼みとなっており、転移前のEUのアメリカや日本に対抗するという理念は既に消え去っていた。





 新世界歴1年5月20日、中華人民共和国 首都北京 中南海 会議室


「で?結局の損害と再編成計画は終わったんだろうね?」

「・・・はい。」


 中国の各長官(大臣)達や中国を動かす7人の政治局乗務員などが集まる会議で中華人民共和国国家主席は抑揚の無い声で中華人民解放軍海軍29万人の長である海軍中将に聞いた。

 普段から抑揚の無い声の国家主席だが、今回は一段と感情が無く、誰が見ても不機嫌だった。


「空母は何隻失ったんだね?」

「・・・2隻です。もう1隻は1年程修理に時間を要します。」

「はぁ・・・」


 これまでの想像を遥かに超える超巨大津波により失った空母やその他艦艇は中国軍に取って非常に痛い損害だった。

 自然災害(中国・ロシアはそう思っている)という仕方が無い事とは言え、仕方がないで済ますには痛すぎた。


「2隻失って1隻ドック入りという事は今うごかせるのは・・・」

「はい。練習空母の遼寧のみです。」


 恐る恐る海軍中将が答える。


 中国は練習空母1隻と正規空母3隻の計4隻の空母を保有していた。

 正規空母を北海艦隊・東海艦隊・南海艦隊に各1隻づつ配備し、練習空母を北海艦隊に配備していた。

 しかし新大陸沖に展開させた空母【重慶】【山東】の2隻のうち、片方の東海艦隊の空母【山東】の交代として南海艦隊の空母【福建】は派遣された。

 幸いにも交代し終えた後だった為、東海艦隊の【山東】は【重慶】【福建】よりは離れており、その為沈む程の損害にはならなかった。


 と言っても空母【山東】は他の艦艇に曳航してもらわないと航行する事すら出来なくなっており、十数mの津波が直撃した事により、艦内で艦載機燃料による火災や浸水も発生していた。

 多数の艦載機が接触して損傷を受けており、再び飛べるようになる機体は全体の3分の2程しか無いだろう。

 死傷者の数も膨大で、艦内の医療設備ではどうしようもなく、急ぎで派遣された病院船でなんとかというレベルだった。


「空母の事は分かったが、その他の補助艦艇の方はどうなんだ?空母でさえ沈んだ津波だ。大方想像は出来るがな。」

「派遣した地上部隊15万との連絡は途絶え、揚陸艦隊も壊滅、残っているのは退役間近の旧式艦艇のみだ。」

「単純な被害だけでも数千億から数兆元になるだろうな。」


 既に分かっているだけで出撃した北海艦隊と東海艦隊の艦艇の殆どは帰ってこなかった。

 部隊を揚陸した揚陸艦や民間の船舶との連絡も途絶えたままである。

 更に言えば侵攻準備をしていた約15万の人民解放軍、全部隊との連絡が途絶えた。

 総兵力180万人の中国軍からしたら15万など誤差にしか入らないが、艦艇や航空機、特に空母艦載機パイロットの損失が大きかった。


「更に軍の損失も大きいですが、聞く限り40mを超える津波が襲ってきたんです。沿岸部の被害も甚大ですよ。」

「どの程度だ?」

「5m程の津波が襲ってきた朝鮮省の釜山は死傷者1万名、他にも多数の海岸線の都市が被害を受け概算だけでも10万名程度は死傷しています。経済的な損失も大きいですよ。」


 本来、太平洋側から津波が襲ってきたならば釜山や上海などのユーラシア大陸の沿岸都市では無く、日本列島が防波堤となって日本海側には津波は殆どこない筈だった。

 だが、不幸にも(日本にとっては幸運にも)異世界に転移してしまい、日本列島が消えてしまった。

 その為、ユーラシア大陸の沿岸都市は被害を受けてしまったのだ。


 更に転移当初なら釜山を有する韓国は独立国で津波による被害を受けても韓国軍が救出にあたっただろう。

 更に韓国はそれなりの規模の国家の為、支援なども行えた筈だった。


 だが、中国の新大陸派兵が失敗してしまい、その憂さ晴らしか他の成果を欲していたのか、中国人民解放軍の北部戦区の部隊が北朝鮮軍と共に朝鮮半島南部に流れ込んできたのだ。

 その為、韓国軍は2週間程で降伏し、北朝鮮と韓国を合わせ朝鮮省となった。

 更にその戦争の被害で行政も大混乱しており、救出や復興などは一切行われてなかった。 

 韓国にしてみれば今回の異世界転移は正に悪夢だっただろう。


「ならばロシアも被害を受けたんだろう?ウラジオストクも太平洋側だった筈だ。」

「詳細は知りませんが、ウラジオストクは湾の内側にある港です。5m程度の津波では被害は殆ど無いかと・・・」


 震源地は新大陸沖の海底、単純に距離で見ても明らかにロシアより朝鮮半島や上海などの中国東部の方が近かった。

 その為、ロシアの津波の被害としては漁村の一部が被害を受けただけで国としては殆ど無いと言っていい規模だった。


「クソッ!ウチの戦力が大きく減っただけか!」


 出席者の1人の発言がこの場にいる人全員の気持ちを代弁していた。

 実際にはロシアも空挺軍1万5000を失っているのだが、海軍は無傷とはいかないまでも無事だし、中国程酷くは無い。

 更にはインドのお陰で南東のルクレール王国との貿易に噛む事も出来た。


 結局は中国の一人負けというのが今の東アジアの現状だった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ