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40.新たな発見と交流

 


 新世界歴1年3月1日、アメリカ合衆国 首都ワシントンD.C. ホワイトハウス


「は?なんだその戦力大移動計画は?」


 大統領は国防長官から渡されたイベリア戦争への参戦計画書を見てそう言った。


 何故ならその計画書には国内のアメリカ陸軍の約4分の1もの兵力をヨーロッパに移動させるという事が記載されていたからである。

 確かにイベリア戦争ではアメリカ陸軍が中心となるのは当たり前だったが、あまりにもその戦力は大きかった。


「ところで、なんで連中は侵攻を止めたんだ?」


 一時、反撃しジブラルタルまで追い込んだNATO軍だったが、敵国家レムリア帝国軍の反撃を受けスペイン・フランス国境まで撤退していた。

 というよりNATOはフランスの都市トゥールーズを(米軍参戦が大前提の)絶対防衛線として布陣していた。

 残存全スペイン軍や残存ポルトガル軍もトゥールーズに布陣しており、防衛線より南にある部隊は撤退を命令していた。


「単純に兵站の問題かと。こちらをご覧下さい。」


 そう言って国防長官が見せたのは2枚の衛星写真だった。


 そして、そこに写っていたのはオーストラリア大陸並みの大きさを誇る大陸だった。

 イベリア半島の下に新大陸が繋がっており、都市が確認出来た。

 そして別の写真では見慣れた場所、アラビア半島で戦争が起きている写真だった。


「確認の結果、その国籍不明国家はレムリア帝国と判明しました。そしてそのレムリア帝国はイベリア半島だけでは無く、サウジアラビアにも侵攻を行っているらしく、兵站は相当キツイ筈です。」

「つまりなんだ?そのレムリア帝国とやらは二正面作戦を行なっているという事か?」

「はい。」


 アメリカですらなるべく避けた二正面作戦をそのレムリア帝国は行っている。

 そしてその片方の戦力だけでヨーロッパ諸国の軍は大苦戦している。

 恐ろしい程の物量だった。


「現在はどうかは分かりませんが、日本やイギリスの近くに現れたスフィアナという国の大使曰く、レムリア帝国は総兵力350万の軍事国家で、前世界でも偶に戦争を仕掛けているヤバイ国だそうです。ちなみに前世界で防波堤役だったのは我が国が戦争を仕掛けたテルネシアという国です。」


「戦争を仕掛けた」と発言する国防長官の発言に顔を歪める大統領だったが、事実なので仕方がない。

 つまりレムリアはそのテルネシアという防波堤が居なくなった事で周辺国に攻めているのだろう。

 総兵力350万というインドや中国よりヤバイ国相手に通常戦力では厳し過ぎる。

 諦めて核使おうか?と大統領は思った。

 しかし、その考えは国防長官が差し出したある空撮写真により無くなった。


「これは?」

「ジブラルタル上空で撮影した偵察衛星による画像です。」


 そこには飛行船らしき物が写っていたのだが、地球の飛行船と違うのは飛行船にミサイル発射機や砲塔がついていた事である。


「これは・・・飛行戦艦とかいうやつか?」

「恐らく、ちなみに重量などから考えましてもどうやって動いているのか不明です。」


 飛行船みたいな形ではあるものの、飛行船ならヘリウムガスが入っている場所が本体らしく映画ラピ○タに出てくるゴリアテのような姿だった。

 何より目を引くのが艦の前後に搭載されている大型砲塔であるが、通常砲塔である限り脅威では無い。


「意外に速度が出るらしく、時速300km/h程度で飛行しているのを確認しています。また、同じ艦艇の空母型も確認出来ており、F-15に似た戦闘機が駐機しているのも確認してます。」

「搭載数は?」

「単純に考えて150〜200程かと・・・」


 それを聞いて出席者達は「マジか」と下を向いた。

 アメリカ海軍の主力空母である【ジェネラル・R・フォード級】が約70機程の艦載機を搭載出来る。

 単純に考えてその倍なのだから、その大きさが実感出来るだろう。


「空軍部隊の増派が必要かもな・・・」


 そもそも彼等は全て合わせても600機程度しか無いヨーロッパ諸国の空軍戦力には期待していない。

 戦争前で800機なのだからスペインとポルトガルが壊滅した今は600機程度になっててもおかしくは無い。

 1番戦闘機を保有しているドイツ連邦空軍でさえ150〜200機ほどしか戦闘機は保有していないのだ。

 アメリカ空軍どころかアメリカ海軍航空隊にも数で負けている空軍組織には何の期待もしていない。


「それで、この敵戦闘機には勝てるのか?」

「空軍の見解ではF-4ファントムレベルだと。実際にNATOのF-35は未だ1機も撃墜されていませんし、EF-2000でも対応出来ています。数以外では。」


 敵空軍はNATOが50機で向かったら100機単位で迎撃に上がってくるのである。

 カナード翼の為格闘戦に強いEF-2000なら空中戦でも何とかというレベルだが、F-35なら間違い無く無理であろう。


 もしアメリカなら中・遠距離からのミサイル発射と離脱で何とかするしか無いだろう。

 制空権を確保しなければ陸上戦力など派遣出来ないのだから。


 とりあえず制空権を確保しようというのが結論だった。





 新世界歴1年3月1日、中華人民共和国 朝鮮省


 人民解放軍海軍は前世界ではアジアの脅威となり、日本や韓国、東南アジア諸国にとっても脅威であった。

 しかし、今や主力の空母のうち2隻を壊滅され、残ったのはロシアから購入した古い練習空母のみとなった。

 自然災害(精霊の怒り)という不確定要素により壊滅したのであって戦争で潰した訳では無いのだが、中国政府にとってそんな事は関係無かった。


 海軍上層部や陸軍上層部では静粛の嵐が吹き荒れ、残った海軍の僅かな艦艇は再編成された。

 これまで三軍の上下関係は無く、同等とされていたが、この敗戦で海軍の位置は陸・空軍の下となった。

 中国国防部は現在、海軍の再編計画を進めているが、早くても再建は10年近く掛かる。


 また、海軍艦隊の壊滅により新大陸侵攻作戦は有耶無耶となり、手っ取り早く戦果が期待出来る朝鮮半島侵攻作戦が実行に移された。

 元々味方?だった北朝鮮はともかく韓国にはアメリカ軍が駐留していた。

 しかし、転移の影響で在韓アメリカ軍が完全撤退してしまい、韓国に外国軍は居なくなった。


 1月24日には北朝鮮軍が韓国に侵攻、朝鮮戦争が再開された。

 2月12日には、辛うじて維持されていた前線が崩壊した。

 結果的に2月20日に1ヶ月と経たずに韓国政府は降伏し、北朝鮮が韓国を統一した。

 しかしその後に中国軍部隊が北朝鮮の指導者達を暗殺、治安維持名目で中国軍が国境を越え侵攻、朝鮮半島全域が中国の支配下に入った。


 北朝鮮の北部はロシアに譲渡されたが、殆どの朝鮮半島は朝鮮省として中国の一部に取り込まれた。





 新世界歴1年3月1日、インド共和国 首都ニューデリー 大統領府


「しかし大国だね。」

「大陸の3分の1を有する国家ですからね。面積は我が国の約1.5倍の450万㎢、人口は我が国の3分の1の約4億人。軍事力も高いです。」

「海上戦力では日本並みとアメリカ程は高く無いですが、戦争すれば我が海軍艦隊は間違い無く敗北します。」

「幸か不幸か接触出来て良かったのかな、そのルクレール王国という国とは・・・」


 丁度、中国が新大陸に向けて核攻撃を行った頃、インド洋沖合2000km地点でインド海軍の艦艇が国籍不明艦艇と接触した。

 様々な言語のうち、英語が通じたので話してみると、別大陸のルクレール王国という国の新大陸調査艦艇との事だった。

 その後、紆余曲折あったものの、何とかルクレール王国とインドは友好的に国交を結ぶ事に成功した。


 その後分かったのはそのルクレール王国という国は当初想像していた以上に大きな大国だと言う事だった。

 大陸の3分の1もの国土を誇っており、人口は約4億人、中国が戦争を仕掛けた新大陸の南東にある大陸だった。


 典型的な陸軍国家であるものの、海軍戦力もそれなりに高く、日本の海上自衛隊並みの海軍戦力を保有しており、海軍戦力が弱いインド海軍と戦争になれば間違い無く敗北すると思われた。

 技術レベルは非常に高く、日本やイギリスと国交を結んだスフィアナ連邦国は元々ルクレール王国の沖合にあった国家だったようだ。


 既に日本の位置は分かっている為、ルクレール王国の事をスフィアナ連邦国に伝えるのには時間はかからなかった。

 その際にインドはスフィアナ連邦国とも国交を結んだ。


「とりあえず、経済的に貿易出来る国が見つかって良かったぁ。」

「ルクレール王国のあるミレネア大陸まで9000km程離れてますが?」

「前世界のアメリカより近いだけマシでしょう?」


 その途中に中国が戦争を仕掛けた新大陸があるが問題なんですが?という疑問はインド海軍及びルクレール王国海軍が護衛を出す事で解決されるのだが、この時まだ彼等は知らなかった。




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