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15.根室攻撃と上陸

 


 新世界歴1年1月8日、日本国 首都東京 総理官邸


 総理官邸地下1階にある危機管理センターで総理や関係閣僚、そして与野党の議員達が観ているのは根室市に設置された多数の監視カメラの映像である。

 いつもは人が行き交う駅前の市の中心部も映像を見る限り動く物は全く見られない。

 既に根室振興局の全域から自衛隊の頑張りにより人は誰一人として避難しており居ない。


 ちなみに監視カメラの音声はカットしている。

 何故なら、今の根室市は攻撃を受けているからだ。

 今も爆弾が監視カメラのあった前で爆発し、別の監視カメラの映像に切り替わった。

 既に根室市郊外にある航空宇宙自衛隊第26警戒隊根室分屯地は徹底的に攻撃され、破壊されている。


 そして街中にあるオンラインの監視カメラが全て途絶し、画像は離れた山中にある気象庁の観測カメラからの映像に切り替わった。

 そこから見える根室市の街は数十ヶ所で黒煙が上がっていた。

 そして総理は映像を写していた大型ディスプレイの電源を切った。


「我が国は正体不明の敵により明確な攻撃に晒されています。私は現時点を持って自衛隊に対し防衛出動を命じます。」


 この会議室には与党と連立与党、比較的与党と同じ考えを持つ野党だけでは無く、与党とは安全保障など様々な項目で正反対の考えを持つ野党の党首や議員達も参加している。

 普通ならば総理の防衛出動発言に対し明確な反対などを行うが、あの映像を見せられては反対出来なかった。

 もし、反対すれば北海道の選挙ブロックで二度と支持を得られなくなるからである。


「野党の皆様もご協力下さい。」


 協力、つまり、防衛出動命令の1週間以内に行われる国会での防衛出動の継続を問う議決で賛成して下さい。

 という事である。

 既に与党と協力関係にある野党で衆参両院で議決に必要な過半数以上の議席は有しているが、審議妨害されると非常に面倒だった。


 出席者達に見せたこの映像は各報道機関を通じて国民にも伝えられる。

 その映像を観て、防衛出動に賛成か反対か判断するのは国民である。


 そして議決の時、各政党が防衛出動に賛成したか反対したか国民はしっかりと見てるだろう。

 そして、その結果は内閣の支持率や次の選挙などに明確に反映される。


 とりあえず、現在は全ての装備を使用可能な防衛出動の戦後初の命令により、自衛隊が敵部隊に攻撃を加える事が出来るようになったのである。





 新世界歴1年1月8日、イギリス連合王国 首都ロンドン ダウニング街10番地


「ほぅ、未知の国家が日本の北海道に上陸したか・・・それで?日本はどうしている?」


 (首相)は日本が未知なる国から攻撃を受けたのを普通に聞き流した。

 ここ最近、余りにも驚いた話を聞き過ぎた為、日本が侵攻されたくらいでは驚かなくなったのである。

 だが、日本、しかもイギリスに近い北海道が侵攻されたのは非常に重要な事だった。


「防衛出動命令で自衛隊が北海道中部に展開しています。敵部隊が上陸した根室市を含む根室振興局では住民7万5000人の避難は全て完了しています。」

「はっ!?1日で7万5000人もの住民を避難させたのか!?」


 これまでの地球の歴史で経った1日で7万5000人もの住民を避難させた例は過去に一度も無い。

 最も、この成功の裏には根室市に大型船舶が入港出来る港が2ヶ所あった事、付近に自衛隊の分屯地があった為、ヘリコプターによる輸送が可能だった事が大きい。


「はい。人口が少ない都市とは言え、田舎と言ってもいいような場所から7万5000人もの住民を1日足らずで避難させるのは流石としか言いようが有りませんね。まぁ、一部我が国にも来てますが首相、どう致しますか?」

「ん?どう致しますかって、私に何を判断しろと?」

「日本と我が国はビザ無しで渡航可能ですが、一時的に避難してきた住民の中にはその、パスポートを持っていない人も居まして・・・」


 当然ながら、国に入るにはEUなどの一部の地域を除きパスポートが必要である。

 道東からイギリス本土までは数百kmしか無く、大型船舶が入港可能な港もある為、一部の船舶がイギリスに入港してきたのである。

 そして、当然ながらその避難民の内、パスポートを持っている人は一部どころか殆ど居なかった。


「まぁ、仕方がないな。別に難民として逃げてきたわけじゃないんだ。その辺りは人道的配慮とかいうやつで対応しておいてくれ。それで?敵艦隊の概要は?」


 もしこれで駄目と言えば日本との関係は間違いなく崩れ、連日首相退陣のデモが起きるだろう。

「どう致しますか?」と聞かれてはいるが、彼に選択肢などないのである。

 これが難民なら身分確認や警察を出動云々の話になるが、別に経済的に困窮した訳でも無く、ただ一時的に来てしまっただけなのだ。


「衛星が使えませんので日本側から提供された情報によりますと、1950年代〜60年代の軍艦16隻、空母2隻、輸送艦20隻程の40隻を超す大艦隊です。現在、根室港から地上部隊を揚陸しています。」

「そうか、日本の防空警戒も大した事無いな。」


 そう首相はふんっと鼻で笑うが国防大臣が異議を唱えてきた。


「その理由は間違いなく我が国に有りますが・・・」

「どう言う事だ?」

「我が国が実施した第二次ブラックバック作戦により日本の早期警戒機を我が国に分派する事になったので、その分警戒が薄れたのだと思います。」

 

 そう、イギリスは自国の警戒監視を日本に丸投げして全ての早期警戒管制機を周辺捜索に回しているのだ。

 もちろん日本にもメリットがある為、文句は言わないが、その為、日本の防空警戒が薄くなったのは事実だろう。


「・・・・・・そうか。」

「ちなみに日本の海上保安庁からの通達で我が国の貨物船1隻がその艦隊の艦載機と思われる機に攻撃され撃沈、乗員全員は海上自衛隊のUS-3救難機が全員救助したそうです。」


 そう言った時、何処かの官僚が「US-3欲しいな」と呟いたのだが、司会進行役の官僚はその呟きはなかった事にした。


 『US-3』とは新明和工業が開発した高性能な水陸両用救難機である。

 『US-2』の低コスト版として開発され、インドやギリシャ、タイ、インドネシアに輸出されている。

 低コスト版ではあるが、性能は主には変わらず、少し小さくなっている。

 30機程作られた機体でもあるが、全機輸出用で海上自衛隊は1機も保有していない。


 ちなみに、この1ヶ月後、イギリス空軍海難救助隊は日本より『US-3』を4機購入する事になる。


「ちょっと待て、我が国の船が攻撃された?」

「はい。乗員14名は全員無事です。」

「そ、そうか。我が国が参戦する必要性は?」


「政治的以外有りませんね。国籍不明艦隊が上陸した北海道には陸上自衛隊の4個師団が配備されています。その兵力は5万人で、イギリス陸軍の約半分にもなります。海上、航空戦力に関しても下手に我が国が介入しても邪魔でしょう。ただ、日本は敵基地を攻撃するのを躊躇するでしょうから、それを我が国が行うのもアリですね。当然、スフィアナは参戦しないと思います。自国艦艇が攻撃されたならともかく、現状は国交を結んだ程度ですので・・・」


 そもそも北海道には陸上自衛隊の第2師団、第5旅団、第7師団、第11旅団の総兵力4万弱が配備されている。

 元々、北海道は冷戦期にソ連からの侵攻が想定されてた為、陸上自衛隊唯一の機甲師団である第7師団などが配備されてるなど、陸上戦力は強いのである。


 更に海上自衛隊の戦力はイギリスを大きく上回る。

 もし海上自衛隊とイギリス海軍が衝突したら、間違いなく海上自衛隊が勝つ、質は同じでも数は海上自衛隊の方が上なのだ。

 その為、イギリスが援軍として行うのは政治的以上のものは無い。


 ちなみにスフィアナも自国が攻撃されたりしたら、反撃はするが、国交を結んで1週間程の国家の為に軍隊を派遣するような国家では無い。

 別にスフィアナは戦争国家では無いのだ。

 戦争が無いのならそれに越した事はない。


「そうか、では海軍艦隊に出撃準備を進めておいてくれ。航空部隊は、まぁ日本と調整してくれ。当然だが第二次ブラックバック作戦は一時的に中止だ。」


 もはや名前が第二次ブラックバック作戦となってしまったが、この方がしっくり来る為、訂正する人は誰もいない。


 こうして当初は当事者達だけだったが、次第に戦争が拡大する事になる。





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