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10.ヨーロッパの異変

 


 新世界歴1年1月4日、ロシア連邦 首都モスクワ クレムリン


「大統領、新大陸派遣部隊の空挺軍第一陣がハバロフスク地方のコムソモリスク・ナ・アムーレの空軍基地から経った今、離陸したと報告が入りました。」


 クレムリンの大統領執務室で政務を行なっている大統領に国防相が報告を入れた。


「ふむ、護衛は?」

「近海に展開している太平洋艦隊の空母【アドミラル・シトルム】から戦闘機が展開する予定です。」


 空母【アドミラル・シトルム】は空母【アドミラル・クズネツォフ】の後継として建造し、2026年に就役した最新鋭航空母艦である。

 当初10万t級の原子力空母を想定していたが、財政難により【アドミラル・クズネツォフ】と同様の5万tの通常動力型空母として建造された。

【アドミラル・クズネツォフ】が退役した現在、ロシア海軍唯一の航空母艦であり、ロシア太平洋艦隊としてウラジオストクを母港としている。


 転移当時オホーツク海で訓練の予定だった為、訓練を変更し、そのまま新大陸沖を遊弋している。


「なるほど。ところで懸案の中国に関しては?」

「こちらは新大陸の南側に揚陸する者とみられています。我々は北側ですので衝突する可能性は低いかと。」


 中国空軍の『H-6B』爆撃機が撃墜されたのは大陸西部の北側だが、中国軍が攻撃したアムルス空軍基地がある都市アムルスは大陸西部の南側である。

 中国軍揚陸艦隊もロシアと衝突する事だけは避けたいのか南側の海岸線へ向かっている。


「そうか・・・」

「ところで大統領、インド大使との会談はどうでしたか?」


 国防相が大統領に数時間前に終えた駐露インド大使との会談結果を質問する。

 前世界の時からロシアとインドは利害関係が衝突し難い事も有り、非常に仲が良かった。

 アメリカともロシアとも仲が良い国家はそうそう無い。

 基本的に親米の国は反露国家で、親露の国は反米国家であるからだ。


「それなんだが・・・インドは今、中国とパキスタンの二正面だ。それで我が国と組んで両国に圧力を加えたいそうだ。具体的には海軍艦隊を我が国の新大陸への支援として派遣してくれるそうだ。」


 インドとパキスタンはカシミール地方を巡り昔から関係が悪い。

 更にインドは中国とも領土問題を抱えており、敵の敵は味方という理論のもと、中国は積極的にパキスタンを支援していた。

 十数年前までは中国の経済成長もあり年々差が空いている状態だった。

 しかし、インドの経済成長に伴い人口も抜かれ、安全保障に関してもインドはアメリカと仲が良い為、アメリカ製の兵器を多数購入し、近年、質でも中国と肩を並べていた。


「海軍艦隊ですか?」

「そうだ。空母【ヴィクラント】を含む10隻の艦隊だそうだ。まぁ、インドは人口が多いからな。新大陸の領土や利権を少しでも欲しいんだろう。」


 中国なら不安だが、インドは自制が効いてまだマシである。

 どちみち、人口1億4000万人のロシアでは人手が足りない為、人口15億人のインドは労働力として非常に重要であった。


「まぁ、中国と協力するよりはマシですかねぇ。」

「軍事力は高いからな。ちょっとアメリカ寄りなのは気になるが・・・まぁ、今はアメリカも何処かに消えたし、大丈夫だろう。」


 インド軍の総兵力は150万人であり、中国軍と同程度である。

 近年は装備も近代化し、更に空母も2隻保有しており、十分に戦力になる。


「なるほど・・・」

「ところで国防相。ヨーロッパの動きはどうだ?」

「ヨーロッパなんですが・・・現在戦争中です。」


 それを聞いて大統領は頭の中がハテナマークで一杯となった。


「は?戦争中!?何処とだ?」

「イベリア半島の先端部、スペインのジブラルタルとタリファが何処かの国家と陸続きになったようで、現在欧州連合軍と戦闘中です。ちなみにスペインは崩壊し、現在北部の都市に臨時政府が樹立しています。」

 

 ジブラルタルはもともとイギリスの領土だったが、数年前にスペインに返還し、そのままスペイン領となった。

 その為、ジブラルタルに駐留していたイギリス軍は撤退し、現在はスペイン軍がジブラルタルの安全保障を担っていた。


 本来ならスペイン軍のみで対応する事案なのだが、欧州連合軍とヨーロッパ全体まで話が広がってるのを見ると、侵攻してきた敵は相当な強さだろう。


「戦況は?まさかロシアまで来る事は無いだろうな?」


 大統領がそう発言したのには理由があった。

 現在、ロシアは中国との関係が最悪な為、シベリア地方などの中露国境地帯に部隊を移動させている。


 更に、新大陸が東側にあるという理由もあった。

 

 その為、これまでの戦略的最重要拠点であった対欧州方面の西部軍管区から部隊が居なくなっているのである。

 逆に対中国・日本(居なくなった)方面の東部軍管区はこれまでの5倍程に戦力が拡大していた。


「イギリスが消えたと言ってもロシアまで到達するにはスペイン、フランス、イタリア、ドイツを倒さないと来る事は出来ません。更に同じNATOのトルコも派兵してますし、最悪フランスが核を使うでしょう。ドイツやイタリアもアメリカとのニュークリア・シェアリングで核を国内に保管してます。」

「大丈夫なのか?ドイツは軍縮してただろう?」


 前世界なら喜ばしかったドイツの軍縮がこの状況では非常に不安に思えてくる。


「大丈夫だとは思いますが・・・」


 ロシアは急いでヨーロッパ方面の防衛を整え始めた。





 新世界歴1年1月4日、ヨーロッパ スペイン領 ジブラルタル


 旧イギリスの海外領土で観光地として年間約300万人の観光客で賑わっていたジブラルタルは現在廃墟と化していた。

 ジブラルタルだけでは無い。

 ジブラルタルの北側にある都市ラ・リネア・デ・ラコンセプションなどのスペイン南部のジブラルタル周辺全ての都市が同じように廃墟となっていた。


 事の起こりは数日前まで遡る。


 年が明け気付いたらジブラルタルの最南端であるエウローパ岬が岬では無くなっていた。

 正確にはエウローパ岬を含めジブラルタルが何処かの陸地と地続きになっていたのである。


 もちろんジブラルタルだけでは無い。

 スペイン最南端のタリファも海が消え陸が続いていた。

 更にその陸も海が干上がったようなものでは無く、草原地帯だったのである。


 直ぐにこの事はスペイン政府やEU議会に伝えられ、その日のうちに調査隊が派遣される事が決定した。


 そして1年2日、それは直ぐに起こった。

 派遣されたスペイン軍の調査部隊30名との交信が突然に途絶えたのである。

 そして調査隊が向かった方角から聞こえてくるのは何かの爆発音。


 そしてその数分後、陸続きとなったジブラルタルとタリファに向かって数十発のミサイルが飛んで来たのである。

 当然、迎撃できるわけも無く、全発が着弾、多数の住民やマスコミが死亡した。


 その事は直ぐにスペイン政府に伝えられ、スペイン軍に出撃命令が下った。

 しかし近隣の空軍基地から離陸したスペイン空軍の『EF-2000』のパイロットがレーダー画面に見たのは100機を超える戦闘機の大編隊だった。


 その数分後、スペイン空軍の『EF-2000』戦闘機部隊は敵戦闘機から放たれた空対空誘導弾の攻撃によりレーダー画面から消えた。

 敵がスペインの対岸にあるモロッコでは無い事は誰の目にも明らかだった。


 そして殺戮を見たのは大西洋上空を飛行していたNATO早期警戒部隊の『E-3』早期警戒管制機だった。

 『E-3』早期警戒管制機のレーダー担当官が見たのは多数のグリップから小さいグリップが離れ、スペイン南部の主要都市で消える事を繰り返す画面だった。

 それが意味しているのはジュネーヴ条約により禁じられている一般市民が殺されているという事だった。


 スペイン南部やポルトガルの都市や軍事基地に次々とミサイルが発射され、着弾。

 更にミサイルはスペイン中部にも向けられスペインの首都マドリード、ポルトガルの首都リスボンも標的となった。


 ここで、EU議会はスペイン政府やポルトガル政府が既に存在しないと判断し、スペイン国内に欧州連合軍を進める事を決定した。

 NATOでは無い理由はNATOが全会一致の原則の為、アメリカとカナダが本国が未発見な事を理由に棄権した為である。


 後にイベリア戦争と呼ばれる現代ヨーロッパがこれまで経験した事のない規模の戦争が始まった。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 相手不明という読者に対しても有効な痛打。盛り上がってまいりました。
[気になる点] イベリア戦争の敵は?
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