無痛の中で
確かに、俺は刺された。
強盗か、あるいは別の誰かか。
そこまで考える頭は残っていない。
目の前で人が刺されそうになっていた瞬間、俺は自然と体が動いて、その人をかばうように犯人との間に立ちはだかっていた。
犯人は勢い任せでその人を刺そうとし、直後出てきた俺が代わりに刺された。
ただ、本当に刺されたのかということははっきりとわからない。
どうしてか、簡単なことだ。
あまりにも非現実すぎて、頭がきっと夢か何かと判断したうえで、痛みを切ったようだ。
おかげで、全く痛くはない。
深々と刺され、血がにじんでいる服を見下ろしながら、ようやく悲鳴が耳をつんざいた。
よろめき、世界が点滅をはじめ、それからぐるりと回った。
そこでようやく頭が理解を始めたようだ。
鈍い痛みが、刺されたところから響き始め、次第に意識がなくなっていくのが分かった。