表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

色々と引っ込みがつかないので二足の草鞋でいこうと思う

数か月振りの投稿です。これまでのお話も少し修正してあります。

良ければ読んでいってください。


判然としない意識の中、ただ暖かな何かが体に沁み込んでいくような感覚だけがあった。それとは別に泣き出してしまいそうになるようなどこか懐かしさを感じた。


――あれ、俺なにやってたんだっけ。思い出せない、というか脳みそが溶けて流れていったみたいで考える事も覚束ない。このまま意識を手放し全て忘れて飲み込まれてしまいたい。これが安らかな死というやつだろうか。


「おお オウマ!

しんでしまうとは なさけない…。」


軽薄の権化ともいえるような女の声が聞こえてきた。ああ、休日の朝に鳴った目覚ましよりも腹の立つ声だ。


「その目覚ましアラームってコオロギの美しい音色ですか? それとも小鳥のさえずりですかね?」


んなわけあるかっ! って、こいつ脳内に直接語り掛けてきやがる!?


「脳内といういいますかー、オウマさんの意識その物にリンクを通してる感じですね。 ほら、オウマさんって今意識消失状態でしょ? だから特別に助言とか色々できるんですよー」


お前そんなお助けキャラみたいな事できんのかよ。ってか俺意識ないのか? つまり死んでないんだよな!?


「こんなに早く死なれたら私の沽券にもかかわります。面白半分で死ぬのは本当にやめてくださいね!」 


誰が楽しくて死ぬかよ! てかお前の持ってるそのボロッちい靴なんだよ、意識の中なのになんか臭いぞ。


「ああ、オウマさんが意識の海に飲み込まれないようにその辺で拾ってきましたー、これを抱いていればなにも怖くありませんね。あ、変わりにオウマさんの靴を片方くださいね、かわりに流してきますので」


それ死んだあとの奴ぅ!! 俺の意識の海はニューオリンズには繋がってねえから! ん、あれ? 視界が歪んで……いや鮮明になっていく。


「気付けの靴の効果が強すぎたようですね、楽しい喋りは終わりみたいです。リンクがそろそろ切れそうです」


ってことは俺の意識が覚醒しよとしてるんだな? あっ、なんか色々思い出してきた……。腕輪効力が突然しか切れたんだがどういう事だ! ちゃんとした腕輪よこせよ!


「私、説明してませんでしか? 腕輪で使える魔法の力が十分の一で起動時間も五分だけだって?」


後半初耳ですけど!! そんなんでどうやってこの先生きのこればいいいんだよ! この先生き残ればって言葉使う機会があった事にびっくりだわ!


「えーそうでしたかー、それはごめんなさいでーす。ちょっとしたケアレ・スミスですね」


人名みたいに言うんじゃんねえよ! んで全然ケアレスミスじゃねえし、こっちは命かかってんだ!


「あ。人命だけにってことですね!」


そういんじゃねえから、やめろ拍手すんな! おい、そうこうしてる間に意識覚めそうなんだけど! 早く教えろよ腕輪の打開策!


「ああ、これは失礼しました。腕輪の発動時間は腕輪の強化を行えば段階的に延長されます。頑張って魔物や魔獣を倒しちゃってください。それと腕輪を両方とも起動させると今のオウマさんの身体では消耗が激しすぎるので仲間が近くにいない時は控えたほうがいいですよ。それではおげんきでー」


おい待てよ最後にとんでもねえ欠陥言いやがって、無責任女神! 詐欺女神! この後どうしろってんだ!


―――――


「オウマ!? 起きたんだね……よかったぁ~」


目覚めた俺のマリアムが涙目で覗き込むんできた。どうやら俺はトールに顎を撃ち抜かれた後、昏倒しして城の従者用宿舎に運び込まれてアリアムの達の治療を受けていたらしい。まだ顎にに刺すような痛みを感じる。


「いっつつ、トールの野郎……」


「大丈夫? 治癒魔法で砕けた顎骨は繋いだんだけど、神経の痛みがなくなるまではもう少しかかるかも……」


そう言ったマリアムが両手で俺の頭を抱くようにあてがっった。マリアムの手のひらから緑がっかた柔らかな光と熱が俺の痛む箇所に沁み込んでくる。


「あの時感じた暖かさはこれっだたのか……」


「え? もしかしてオウマは治癒魔法を受けるのはじめて?」


「あ、ああ」


治癒魔法、確かエイレーネの話だと身体の自然治癒機能を魔力で再現して傷を埋めたり繋げたりする魔法だと聞いている。ゲームによくあるような即効性はなく、大きく欠損した部位は再現できず、断面を埋めるくらいしかできないとか。なにより治癒魔法は受けている側の体力を大きく消耗する為、戦闘時に連続して使うのは危険らしい。


「それで、俺はどれだけ意識を失ってた?」


「大体丸一日だよ」


日の高さから見て、勇者の試練からそれほど時間の経過はないと思ったが太陽が一周してたとはな。脳震盪でのただの気絶とは違うようだ。もしかして腕輪のペナルティかもしれない。だけど今はそんなことより……。


「俺の、勇者の試練はどうなった? 俺、トールに負けちまったんだよな……」


そうだ、俺はトールに負けた……。あの時油断さえしてなければ勝てた。なんて言えたら良かったが、トールの剣を破壊した後、俺にはなんの余力も残されていなかった。腕輪で無理やっり混沌魔法を使った代償か、身体もろくに動かせず、更にフィジカルに圧倒的差がある奴に勝つのは不可能だった。


「その、それは……」


少し言いよどむマリアムだったが、一瞬の静寂を切り裂くようにマーリン爺さんがまっていましたと言わんばかりに勇み足で部屋に入ってきて。このパターン前もみたような……。


「その事なら私からお話させて貰いましょうオウマ様、いえ、我らの勇者様!」


「お、おう……。その様子だと俺は勇者として認められたのか?」


俺の問いにマーリン爺さんは少し間をおいてから、ばつが悪そうな顔をしてから話し始めた。


「それが、いい知らせと悪い知らせがございまして……」


あ、ロードショーでよく聞くやつ。 


「お決まりだけどよ、良い話から頼む」


「ええ、では良い話から……。勇者の試練はオウマ様は合格という扱いになりました」


「おお! まじかよ!!」


「ですが、ここからが悪い知らせでございます」


マーリン爺さんは俺の歓声を制するように滔々と語りはじまる。


「試練は合格しましたが、国王陛下のご判断では正式な勇者とは認められず。あくまで仮の勇者としての帝国の紋章を与えれる事になりました。勝手ですが、オウマ様がお眠りになられている間に右手の甲に仮勇者の紋章を刻印させて貰いました」


右手の甲を見ると一見なんの模様も見えないが、軽く魔力を込めるとボウっと光りを放ち紋章が浮かび上がる。なんかカッコイイし停電したときに便利そうだ。


「ん、それが悪い知らせか……? 仮勇者の刻印ってのは勇者の刻印とはどう違うんだ?」


「ええ、勇者の紋章には特別な魔術が込められていまして、一日に一度だけ治癒魔法の効力を超える再生の魔法があり、致命的な損傷を受けた場合により自動で行使されるようになっております。そして紋章そのものに連合加盟国で支援を受けられる特権が付与されております」


なるほどな、勇者の紋章ってのは水戸黄門の印籠みたいな身分証で安全装置を兼ね備えたアイテムって事か。勇者っても人間だからな、簡単に死なれちゃ困るってことか。悪い知らせってのが予想できて来たぞ……。


「オウマ様はすでにお察しのようですが、この度国王陛下からご賜れた紋章に再生の魔法は付与されておりません……。そして連合加盟国で受けられる支援は連合軍の一般兵と同程度の物となっております。なにより仮勇者の紋章はオウマ様が魔法を行使する度、この城の玉座の水晶によりその大まかな所在位置を確認できるようなっております」


「おいおい、つまる所、最低限の支援を受けられるが首輪を付けられたって事か!? ふざけんじゃねえ!!」


もし本当の勇者なら悪い話じゃないのかもしれないが、俺は正真正銘のまがい物。ましてやゲームで出てきたらプレイヤーを失望させるようなガッカリ雑魚魔王だ。勝手にGPSまで埋め込まれちまってこの国を逃げ出して魔王領に駆け込むルートは完全に握りつぶされたって事だ。俺にとって最悪の結果だ!


「まってオウマ! おじいちゃんをだけを責めないで!」


マリアムが俺とマーリン爺さんの間に入って俺の怒号をその身で受け止めた。マリアムの濡れた瞳は真っすぐに俺を貫き、頭に上っていた血がすっと下がった。


「おじいちゃんはあなたを勇者と認めて貰うために国王陛下と血の盟約をかわしたの! 仮勇者だけど……それでも国王陛下の最大限の譲歩を引き出せたわ!」


「血の盟約? なんの話だよ……それに最大限って、俺はどうなる予定だったんだ……?」


「その……、良くて国外への強制転移、あるいは幽閉……、最悪の場合は……」


「オウマ様の最良を掴みとれず申し大変申し訳ない所存です……」


なんてこった、国外強制転移なら上手くやれば魔王領に入りこめたかも知れないじゃねえか。いや、でも俺の現状じゃ言葉の通じない魔物に殺される可能性もあるか……。


「ああ、クソっ! もうわかったからやめろよ爺さん、老人に平身低頭されると俺が悪もんみたいで居心地が悪い。そんで血のなんちゃらってなんだ」


「血の盟約、それは連合国創設の際に創造された精霊。”調停の守護者”によって魂に刻まれる契約。オウマがもし帝国に仇なす事があれば、その責任を契約者達が命をもって清算する」


「契約者達……? 達って、まさか!」


裏で話を聞いていたであろう魔道具研究員達がぞろぞろと部屋になだれ込んできた。その中から目の下にある濃い隈が特徴的でパーマのようなクセっ毛の男の研究員が前に出た。そしてローブの袖を捲りあげた左手を胸の前にあてがった。


「我々一同、勇者様の双肩に全てを掛けてきました!」


するとクセっ毛の左手首をぐるりと囲うように文様が浮かび上がった。クセっ毛後ろに控えた研究員達も同じように左腕を掲げる。

それに倣ってマーリンの爺さん、そしてマリアムも同じように左手首の文様を俺に晒す。


「はあっ、マリアムお前までっ! 馬鹿なのか!? 騎士団に勝てなかった俺に、聖剣もない俺に何期待してんだよ!」


「勇者召喚は生半可な覚悟で行える物ではありません。国王陛下の眼を盗み第五の勇者を研究し始めた時からこうするつもりでした。勿論聖剣がなくとも。しかしオウマ様は勇者の守護精霊を顕在化させました! 我々はあの清らかな光をみて確信しました。あなたこそ伝説の勇者であると!」


「私も! あれは伝承にあった聖なる光を司どる守護精霊様の御姿、第五の勇者の証だよ! もう私はオウマを絶対に疑ったりしない。だから私は命を、全てをあなたに懸けたんだよ!」


守護精霊様だと? おいクセっ毛、マリマム、清らかな光だ聖なる光だってのは大きな間違いだ! 軽薄女神エイレーネはそんな高尚なもんじゃ断じてない!


「残念ですが国王陛下にはまだご理解いただけていないく、私では不足かもしれませんがこの国を代表してお願いします。どうか、魔王めを討ち取りこの世界に平和を齎してください……」


マーリン爺さんが立膝を付き臣従儀礼のような体制を取り深く頭を下げた。そしてマリアムやクセっ毛、研究員達も俺に向かってか


「なっ、おいお前ら……」


どうするよ、俺。


ここまで俺になんかに命張ってくれてる奴ら裏切って逃げ出すのも目覚めが悪すぎる。それどころか一人で魔族領に乗り込もうにも監視されている。なんとか魔王領に入れたとしても魔獣に丸かじりされる可能性が高い。

なら勇者としてこの国のサポートを受け魔王の紋章だかを持ってる魔獣や魔族を倒して腕輪を育ててから万全の状態になってから魔王領に乗り込むべきだ。

俺の見立てだと今、魔王領で魔王やらされるのは”本来の勇者”だ。俺と同じように間違った役割を無理に演じてるに違いない。ならその勇者と直接交渉して俺が世界の半分を貰えば少なくとも帝国の安全は得られる。なら帝国に綽名すという血の盟約を破る事は回避できるかもしれない。俺が魔王になればこの国にとっての勇者にもなれる。

魔王が勇者に世界の半分を貰って手打ちにするなんて全てがあべこべで笑えてくる。が、万事うまくやるにはまず。


「俺は勇者をやる……」


「オウマ様!」


「俺は勇者をやるぞぉぉぉおおおお!!」


「「「おおおおおおおおおおおお!!」」」

 

魔王勇者の誕生を、この場の全ての者の歓声が嘶きのように轟かせ出迎えた。今日から俺は魔王であり帝国の勇者としてこの世界を何が何でも生き抜いてる!

エイレーネは映画ネタをやる為だけにいる訳ではなくお助けキャラです。しばらく再登場の予定はありません。 


次回、魔王勇者、なろうでよく見る奴隷市場を荒らす。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ