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どうにも俺は勇者になるしかないらしい 2

次回いよいよ戦闘です。もう一人のヒロインも登場予定。


文章評価、ストーリー評価、ありがとうございました。大変励みになります。引き続きよろしくお願いします!

 勇者(魔王)爆誕との事だけあってあの後はとても慌ただしかった。マーリン爺さんがこの国の王様とやらに俺の召喚を勇み足で報告しに行った、その孫のマリアムは未だに俺の事を偽物の勇者だと疑っているようで色々と質問攻めにあったが、お得意の口八丁と伝家の宝刀「記憶にございません。」でなんとか掻い潜った。残念ながら疑念は全く晴れるどころか帰って猜疑心を生んだように見えるが。

 しかし王様との謁見はマリアム以外の魔術師は全員賛成のようで確定しているようだ。どの世界に行っても資本主義は変わらないらしい。俺も早く魔王になってふんぞり返ってやりたいもんだぜ。


 それからマリアムが「そんな恰好で国王様に合わせたら末代までの恥になります、これに着替えて!」そう言って胸、腕、脛を守る為の軽装の防具、軍人が身に着けるような控えめの装飾が入った紺色の外套を寄こしてきた。

 俺の服装といえば着の身着のままの着くずした学ラン、日本の学生なら殆どが避けては通れない正装だ。もともと魔王専用の衣装は召喚された場所で用意されてるとウザ神エイレーネに教えられていたが、よくよく考えると学校の制服で現れる魔王や勇者ってしょぼいよな……。

 エイレーネと違いマリアムは更に刀身全てが漆黒に染められた片手剣まで用意してくれた。しかし勇者のアイテムとは思えない外見をしていて葉脈のような筋が柄から刀身まで無数に伸びている。図らずも魔王がっぽさが染み出て俺にぴったりなアイテムコーデ。中二なんだ言われようと男心をくすぐる最高の逸品だ! これはもう魔王の剣と呼んで差し支えない、いや俺が選んだ剣全てが魔王の剣となる!


 そして防具の装備を終えた俺の元に何やらお高そうな白銀の甲冑を着んだ連中がぞろぞろと部屋に入り込んできてた。連中は帝国騎士団と言ってこの国の最高武力組織の一つらしい。中でも一番若く生意気な顔をした奴が俺を品定めするような遠慮ないの目でジロジロと見てきた。


「んだよ、勇者の俺に文句でもあんのかよ?」


「お前が勇者かどうかはこれから国王陛下が決める。第一、帝国魔術師になり損ねた連中を囲っておくだけの研究機関が勇者を召喚したなど世迷言を。なぜ我ら騎士団が煩わせられなけばならないのか」


「よせトール、この方達も帝国に使える我々と同じ身分だ、口を慎め」


「いいえ団長、言わせてください!」


 トールとかいう生意気な奴を窘めた190センチを超える巨漢はどうやら騎士団団長らしい。甲冑で身体は見えないが首の太さからいってかなりの筋肉達磨だと思う。こんな熊男に殴られた一発で絶命する自身がある。


「大体、大の大人がお伽話のような伝承でしかない第五の勇者を召喚する研究なぞ、そんな馬鹿々しい事を本気でやっているなど税金の無駄使いでしかない!」


 どうやらこいつの怒りは俺よりも魔道具研究機関の魔術師達に向けられているようだ。

 紛ごうことなき偽物の勇者が思うに、本職の研究そっちしかも勝手にやったあげく俺を呼び出しちまったんだ。トールの怒りはしごく全うだと思う。しそれに噛みついたのは意外な事にマリアムだった。


「私達の研究は間違ってなんかない! 彼を召喚にする為に使われた魔力だって、四大勇者の召喚に使用される聖樹の雫が放った魔力の余剰分を集めて行ったんだから!」


 まじかよ、俺ってすんごいエコ……。リサイクルで交換できる車椅子かよ。


「はっ、聖樹の雫の寄せ集めで召喚したらそれが勇者になるとでも? しかも巫女ではな一介の魔術師が行った召喚で? ふざけた考えだ! 大体そいつの小汚くみすぼらしい剣はなんだ? まさかそれが聖剣だとでも言うのか?」


 俺達をあざけ笑うトール。マリアムは悔しさで目に涙を滲ませていた。後ろのおっさん達、お前らはだんまりかよ? こんな可愛い女の子が頑張ってるのに情けないねえ。俺は勿論静観あるのみだ。だって俺は勇者なんかじゃない――



「なんだてめぇ、俺様の最高にイカす聖剣に文句付けようってのかよ? いい度胸だ、掛かって来いよ。ぶちのめしてやるかよ!」


 ああ、そうだよ。俺は勇者なんかじゃねえ。俺は泣く子も黙る魔王様だ、気に食わない奴はぶっ飛ばす、その為の力だ! 正直こいつらが何言われたって構いやしないが、この超絶クールな魔王の剣を貶しやがったのは許さねえからな! 


「ふんっ、言ったな寄せ集め! 良いだろう。国王の前で正式に打倒し化けの皮を剥いでやろう!」


 あれ、もしかして初めからそれが目的だったのか? まんまと乗せられてしまったが全然、全く、これっぽちも問題ない。魔王の俺に勇者以外が適うはずもない、圧倒的な力を見せ一撃で沈めて恥かかせてやるぜ……ふははは!


「トール、気は済んだか……。お前達、トールを連れて先に玉座の間で待ってろ!」


「了解! ほらっ行きますよ若大将!」


「首を洗って待っている事が偽物勇者め! ぐわっ!? ちょっ放してください自分で歩けますから!」


 熊男の激が飛びトールの後ろに控えていた長身の騎士団員がトールの首根っこを掴み部屋の外へと引きずり出した。騎士団長だけの事はある。そのあまりの迫力に俺も危うくちびる所だったぜ……。


「魔道具研究所の魔術師様方、うちの若いのが非礼を行い、本当に申し訳なかった。騎士団長ベア・フリードが代表して謝罪する」


 熊男が深々と頭を下げ謝罪した。ベアって名前まんまじゃねえか。マーリン爺さんがマリアムを下がらせ、騎士団長の前に立った。


「おやめください騎士団長殿、貴方が我々にそのような事をなさっては帝国魔術師団様方に示しがつきませぬ。良いのです。あの若者が言っていた事、それも事実のうち。我々が成果を上げ、それが認められた時、改めて受け取りましょう。」


 なんだ爺さん、大人な対応してるかと思えばしっかり根に持ってるんじゃねえか。おもしれえ、安心しろ俺がこの国取ったらお前らみんな部下にしてやるからさ。そして異世界初の老人ホーム、魔王園を作りそこに住まわせてやろう。


「寛大な対応、心から感謝する。トールには後で私からきつい罰を与える」


 この騎士団長、暑苦しい顔をしているが気持ちのいい奴だ。顔を上げた騎士団長は今度は俺の方へと向き直り頭を下げた。


「少年よ、うちの者が不躾な態度を取りすまなかった。しかし、君を勇者と認めていないのは我々だけではなく、国王陛下も帝国魔術師も同じだ。なにせ第五の勇者はお伽話のような伝承以外でその存在が語られた事は一度もない。記録に残っている限り三度の勇者召喚の儀が行わたが、そのいずれにしても五人目の存在はないのだ」


 ああ、どうり扱い悪い訳だ。そんなん間違いなく創作の勇者だろうな、俺だってそんな世迷言は信じられない。でも待てよ、俺は確かにゲートの中で勇者らしき奴を見たんだ、この魔術師達は召喚自体は成功させてた事になるよな……。いやそんなのはどうだっていい、俺はトールをボコす!


「ふん、いくら謝られても、トールって野郎を王様の前でぼっこぼこする事に変わりはないぜ、少しくらいは手心を加えてやってもいいがな!」


「勇ましいな、勇者を名乗るだけの事はあるようだ。しかしトールは私の息子だ。剣の振り方を一から教え鍛え上げた戦士。例え四大勇者様相手でも剣技では劣らない実力がある。侮らないことだ」


 まじかよ、俺なんて魔王学校短期集中コースでちょっと触っただけだぞ……。 

 エイレーネが「剣の修行ー? そんなものは必要ありません。いいですかオウマさん、魔王ともあろう者が剣をブンブン振って戦うとお思いですか? 織田信長が前戦に出向いて刀を振るったとお思いですか? 決戦は魔王の領地に満身創痍で辿り着いて勇者に極大魔法ぶち込むだけなんです。あなたの魔法が届くか勇者の剣が届くかで勝敗が決まりますので魔法だけ覚えてください」とか言ってたし……。というかあいつが剣使えないだけな気がするが。


 そうだ、俺には最強の混沌魔法がある。チャンバラに付き合ってやる必要なんてまったくないんだ。


「ほ、ほう、少しは楽しめそうだ。はははっ!」


「大し自身だな、期待しているぞ。トールとそなた、どちらが勝っても私には喜ばしい事だ。では、私も先に国王の元へ参るとしよう。準備ができしだい王座の間へ彼を連れて来てくれ。あまり国王陛下を待たせぬようにな」


 そうして王国騎士団と熊隊長は去っていった。


「ふい~やっと出てったか。ん、なんだ?」


不意に外套の端を引っ張られ、俺は後ろに振り向くとそこには目を赤くし鼻を鳴らせたたマリアムがいた。


「私達の為に啖呵を切ってくれてありがとう……。本当に嬉しかった……。勇者様ってまだ呼べないし、今更なんだけどあなたの名前を教えてください!」

 別にお前達の為じゃなく、俺自身とこの剣の為に喧嘩を買ってやったまでだが、ま、いいか。


「まっ気にすんな、俺の名は黒木……いや、オウマ・クロキだ、よろしくなマリアム」


「オウマ、私がこんな事言うのは虫が良すぎると思う……。でもお願い、トールに勝って! そして私の、私達の勇者になって……!」


 マリアムが差し出した手を取り強く握り返した。なんか告白されてるみたいでテレるな、へへっ。爺さんや魔術師のおっさん達はまた何か熱い物が込み上げてきたのか鼻水流しながら男泣きをしている。俺も歳くったら涙腺ゆるゆるになるのかね、全くみっともないな。とか言いつつも場の雰囲気に飲まれちまったのか熱いセリフを言わずにはいられない。


「お前ら! 涙はまだ取っておけ、この俺様がトールをぶっとばし勇者になるその瞬間までな!!」


 熱い喝采がこの部屋を満たしていく。なんたる充足感、思わず俺は勇者コールの音頭を取る。


「勇者! 勇者! 勇者! はいっ!」


「「「勇者! 勇者! 勇者!」」」


 天界から見守っていてくれエイレーネ! ”勇者王”に!!! 俺はなるっ!!!


勇者の器に魔王の魂。オウマはまだ気が付いていない。その身体では混沌魔法が扱いきれない事を……。


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