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ARK  作者: 涼城 co葯
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4話 ブライブ

 ざっと学校の説明も終えたところで、図ったように教室の前に着いた。少数精鋭、30人弱の生徒が各々に会話や読書などをしている様子が窓越しで見える。彼ら全てがブライブを使えるのだろう。先生の説明のなかでも午後の日程は全てその鍛錬に当てられると聞いた。先生は扉を握った手の甲でよいしょと押し、中に入ろうとするので後に続いて俺も入る。


「えーいつもより少し早いが、聞いてくれー。」


彼は独特のトウモロコシの皮のようなかすれ声で生徒達に声をかけた。生徒もそれほどうるさくしていなかったので、すぐにこっちを向く。じゃ、紹介よろしく。と言われ、一歩前に出て一つ呼吸を置く。


「今日から転校してきました、アイリ・ムルートです。前の学校では、普通に氏名のどちらかか、名前の適当なところをとってイムって呼ばれていました。よろしくお願いします。」


ぱちぱちとやる気のなさそうな拍手が3秒ほど続き、先生は適当な席にと促す。ぐーと周りを見渡し、安牌な席を探しつつ、ずっと前にいるわけにもいかないので行き先の決まらない歩行を始めた。


「あっ。」


最後列から一つ前、その窓よりに彼女は座っていた。他の生徒のように、俺の一挙手一動を目で追うことなく、先生の方だけを見て、じっと座っていた。昨日、ベッドを貸してくれた彼女だ。


「となり、良いすか?」


無表情な彼女は、どこか突き放したような声で「別に。」とだけ返し、また頬杖をつきながら先生の方を見た。昨日会った時よりも冷たい態度を取られている気がする。


「あーそうだ。ムルート君は何も知らない。能力も昨日出したばかりで、本当に無知だ。誰か気のいい奴が教えてやってくれ。」


先生はそう言って教室の外に出て行ってしまった。俺は昨日、お礼を言ってないことに気づき、授業の準備をする彼女の方を再度見る。


「ユリアさん、だったよね。昨日はいろいろありがとう。」


彼女は、はぁ、と呆れたため息をつき、その整った顔の眉間に少しシワを寄せ、少し困ったような表情をしていた。


「あれは、姉。だから、礼を言うならあの人に言って。」


「あ、ご、ごめん。」


言葉に驚きを隠せなかった。何かに騙されている、そんな気さえもした。後ろで一つにまとめられたブロンドの髪、ぷっくりと浮き出た涙袋、なめらかに潤いを持った唇だって、全部同じだ。ひとつ、外見的な違いを見つけるとすれば、ユリアさんは俺と同じくらいの背丈だったが、それより一回りほど小さいことだろうか。


「それじゃ、君は、君はなんて名前なの?」


何か取り返すように聞くと、面倒くさそうに「カナリア」と一言だけ言って、窓の方に視線をずらされてしまった。彼女はもう俺と話す気はないようだ。だからといって、何とも席から離れがたいので、用もないが時計を見る。8時40分、後五分は時間があるのを確認して廊下に便所があったのを思い出し、決まりが悪そうに席を離れる。


「おっ、アイリ君もトイレかい?」


俺が教室を離れるのを見計らってか、男子生徒の一人が声をかけてくる。


「まあ、そうだけど。君は・・・」


「カスパー・シレッセン。カスパーでいいぜ。」


それからカスパーと前の学校についてだったり、転校してきた経緯だったりを話しながら歩いた。ブライブについて本当に何も知らないのか、と投げかけてきたので、あの一回出しただけ、そう説明したら彼は何か不思議そうな顔をしていた。


ー昼ー


 今日は実戦訓練らしいが、まだ<ブライブ>について何も知らない俺は、目の前にいる彼女と二人、教室に残ることになった。


「ムルート君は、どうして6組にいるの?」


突然なんだけど、と学級委員長で「気のいい人」なシャル・オルティスさんは太陽を反射しそうなほど綺麗な銀髪をゆさゆさと揺らし、俺に聞いてくる。


「なんでって、言われても・・・」


クラスは勝手に決められてたんで、と説明するも、腑に落ちない顔だ。カスパーといいシャルさんといい、何か俺がここにいることに対して思うところがあるようだ。


「普通、アイリ君みたいな人は10組から入れらるはずなんだよね。」


「どうしてですか?」


「君みたいなブライブのことをほとんど知らないで、思うように使えもしない人は10組や9組に入れられて、学年が上がる時に1〜8組に振り分けられるの。と言っても、1組2組は特別だから、まず入れないんだけどね。」


まいっか、と言って彼女は教室の前に来るよう俺に促した。左手の窓には土で敷き詰められた広いスペースがあって、そこにも何十人か人はいたが、普通の組手や筋力トレーニングをしているだけで<ブライブ>が使われている様子はなかった。


「じゃあ、早速始めるね。」


「お、お願いします。」


意気揚々と黒板に人の図を描き、その周りを取り囲むように六芒星を作った。


「これ、何だかわかる?」


俺は考える素振りだけ見せ、分からない、と答えると、彼女は少し嬉しそうな顔をしてまた何か描き始めた。


「魔力です。魔力の流れなのです!」


教えるのが好きな彼女は口角をひょいと上げ、腹立たしい表情でそう言った。少し続いた沈黙の中、俺が何か掴めない雰囲気なのを察すると、ベラベラと解説し始めた。


「えーとね、人間の周りには大体六芒星の形で魔力が流れていて、魔力の濃淡はこの形に沿っているの。例えば、両手から生み出すブライブは強い力を持つし、足から出そうとすると弱い力しか出ないの。」


「それじゃあ、どれだけ頑張っても、足から強い力のブライブを作るのは、厳しい感じ?」


「いい質問だ、アイリ君。この六芒星の大きさは人それぞれで、小さいと手のひらまで角が届かないこともあるけど、大きいと体の部位なんて関係ないぐらい大きくなるんだ。」


ーーー


 その後もシャルさんの説明が続き、大体一時間ほど経った。分かってはいたが、彼女は「いい人」なのだろう。俺の言葉や表情、仕草を汲み取って、分からなさそうにしていると零さずに教えてくれた。クラスのみんなに慕われているのも頷ける。


「今からは、自分の意思でブライブを出すことを始めよっか。これは長い人だと2〜3ヶ月経っても安定しないこともあるから、今日できなくても、気にしなくてもいいよ。」


ま、私は一週間でできたけど、と自慢げに言いながら彼女は目を瞑る。少し深呼吸をして、目を開き右手を真横に突き出す。握った拳を更にぎゅっと握り直す。瞬く間だった。彼女の握った拳の内から爪の大きさほどの緑色の三角形がそれを大きく覆うように生成された。


「あれ、青じゃないんだ。それに一つ一つの大きさも前見たより小さいし。」


「慣れれば大きさは自分で変えられる。まぁもちろん、粒子レベルにしたり、人の体ほどにするにはそれなりに努力しなきゃだけど。色は・・・そのうちわかるかな。」


少し含みを持たせた言い方で、笑って誤魔化す。笑顔が輝いて見えるのは、陽の光のせいだけじゃないだろう。











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