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ARK  作者: 涼城 co葯
2/10

2話 いつも通りの変わらない日常

白い光がやけにうるさい。頭の上では、馬車の車輪がゴロゴロと土を噛んでいる。


「あ、起きました?」


俺と同じかもう少し年上の女の子が、ちょうどドアを開け部屋に入って来た。


「あれ、君、昨日の・・・」


「記憶ははっきりしているようですね。なら、早く下に来てください。」


そう言って彼女は下に降りていった。俺は腹にナイフが刺さって以来の記憶はないし、何もはっきりしてはいない。


「・・・ま、いっか」


ベットの横に、舗装されたてのレンガのように丁寧に並べられた靴を履き、木の軋む音と一緒に階段を降りる。


「イム!」


聞き馴染みのある声だ。


「リアさんも居たんだ。無事で良かったよ。」


実は心の中で、かなりの驚きと安心が居場所を拡大させているが、平然を装ってしまう。俺は彼女の隣に腰をかけているさっきの女の子に会釈して、二人の前に座った。


「すいません、待たせてしまったみたいで・・・」


「別に気にしなくて良いです。その間妹さんに事情は説明しましたし。リアさんはもう帰ってもらっても大丈夫ですよ。」


リアは首を横に振っている。


「そうですか。それと、あなたにも説明しなければ行けませんね。」


彼女は俺の方に向かい直し、飲んでいた茶と呼吸を一つ置いた。


「まず最初に、君はアレを誰に教えられたのでしょうか。」


「アレって・・・?」


アレ、とは何だろう。昨日、俺がいつから醜態をこの人に晒していたのか分からないが、俺は何も特別なことはしていない。ナイフおばさんに投げられたナイフをよけて。そのうちの一本のナイフに刺され


「(あれ?俺、刺されてなくね。)」


そういえば、そうだ。俺は刺されていないし、そもそも刺されていたら、今呑気に話なんてしてはいない。


「思い出したはずです。昨日、君が出した青い三角形を。」


「あぁ、あれ本当に出てたんだ。てっきり死ぬ前に幻でも見てるんだと思ってました。」


「それなら良かったです。もう帰ってもらって構いません。どうせ明日にはわかりますから。」


どうしても早く帰らせたいようなので。俺たちは地図をもらって、お暇することになった。


ー夜ー


 四足獣の内臓のように広い館だ。俺とリアが養子として出され四年経ったが、今でも迷うことがある。俺とリアの親が結婚して、すぐに父が死んだ。葬式を終えたその日にはリアのお母さんがいなくなった。俺にとってはたった10日しか母ではなかったが、リアは12年も親として慕ってきた人だ。


「入って、良いですか。」


木のドアとにらめっこしながら、リアに尋ねる。


「・・・うん。」


声が合わせた鏡の奥の方から聞こえるみたいに弱い。毎晩、俺を鉈で倒して笑ってる人とは思えない、気の抜けた、打ちのめされている声だ。


「おじゃましまーす。」


それでも俺は聞かなければならない。いや、俺はただ聞きたいだけなのかもしれない。


「どこに座れば良いかな、ベッド?」


「うん。」


リアは俺がくるのを待っていたのだろう。ベッドの真ん中よりも人一人分枕側にすわりこけていた。


「ごめん。本当は私が行かなきゃいけないんだろうけど、たったの一歩も踏み出せなかった。」


「いいよ、気にしてない。」


俺はリアの隣に座った。人を騙すとき、騙された側はもちろん騙す側も心に傷を負う。


「ユリアさん、昼の彼女がね、昨日調べてくれたんだって。お母さんのこと。」


昨日のいつ調べる暇があったんだろう。だいたいどうやって調べるんだろう。つまらないことが脳内を泳ぐ。


「お母さん、お義父さんの葬式の翌日に、死んじゃってたんだって。バカだね、私。無いものの重みをあると思って、計れるはずのない天秤で必死に計って。」


「そういうときもあるよ。」


「私は謝っても許されないことをした。だから、もう」


「いいよ。」


リアは拍子抜けした面で俺を見た。


「いいよ。」


「でも、私、君が死んでも良いから自分とお母さんが生きる道を選んだクズで」


「それがクズなら俺もクズだ。自分が大事で何が悪いのさ。どんなに良い奴でも生きてなきゃ意味ないしね。」


それでも私は、と言いたそうにリアは俺の目を見る。


「俺は間抜けだ。手にこんなに血豆がついてるのに、4年たってもリアに勝てない。かわしてばっかで、後一歩が踏み出せない。俺もそんな人間だ。君が弱いなら、君に勝てない俺はもっと弱い。」


「そんなことは」


「一緒に弱いなら、一緒に強くなる。それでいいんじゃないすか。」


俺は名目上はリアの兄だ。だけど年は変わらないし、勉強、剣、は勝ったことがない。自分のことを兄だとも思ってないし、リアのことは一緒に住んでいる友達みたいな感覚だ。だからこそ、こういう時は道を舗装し合う必要がある気がする。


「イムはかわいそうなくらい優しいよね。」


リアは少し頭をひねってこう言った。別れた川をもとの川に合流させる、いつもの日常に戻す言葉を。











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