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1浪はまだ現役

「予備校の入り口に入ったら別世界へのゲートだった!?そんなことあり得るのか!?というよりおれはこのあとどうすればいい!?お金は?住むところは?」

突然の状況に気が動転してしまう俺。衣食住のすべてを失い今日の寝床はどうしよう、なんで異世界に転移してしまったのか、そもそも異世界に予備校なんて存在するのかなどとブツブツ呟きながらとりあえずさっきの予備校に戻り職業相談所の場所でも聞こうとすると、

「あ、貴方・・・異世界とか衣食住がないとか呟いてるけどもしかして『ロウニン』?」

と俺の話を聞いていたのだろうか、受付さんがこっちをもの珍しそうに見ながら言う。というよりなんだ。浪人がそんなに悪いのか。確かに親のすねをかじっていることは否めないがそんなに浪人が悪いのか。というよりなんで異世界に来てまで浪人を煽られないとならないのか。そんなことを考えていると

「本当にもし貴方が『ロウニン』ならば・・・」


「『モリナリア王国ロウニン扶養プログラム』という条件付きで返済義務なしのプログラムがあるんだけど」


え?どういうことだ?浪人を扶養してくれるなんていう最高に都合のいいプログラムが存在するというのか。

「そ、そのプログラムって一体なんなんですか?」

「実は・・・」

と言って受付さんが説明してくれたことをまとめるとこうだ。大学が誕生して以降、この世界には大学受験に失敗して予備校に通い次の年の受験に備える『予備校生』と呼ばれる人々が誕生してきた。すると十数年前から世界各地に『浪人』と自分を揶揄する『予備校生と非常に境遇が似た異邦人が度々現れるようになったらしい。現れた浪人のほとんどはすぐに姿を消してしまったが、残った一部の浪人を捕え調べたところそれぞれに一人一つ非常に秀でた能力があることを発見。それ以降世界中の国々が秀でた能力を持つという浪人を探し、見つけた浪人を優秀な学校で学ばせ国の富にするために扶養するながれが出来てきたらしい。しかし厄介なのはこの世界の大学には裏口入学どころか推薦入試やAO入試が存在しないため政府の権力で入学させることが出来ず、どんな学生も真面目に勉強して一次試験、二次試験と大学入試の関門を突破しなければならない。そして勿論この『ロウニン扶養プログラム』もタダで衣食住を提供してくれるわけではない。1年間の浪人生活のみでモリナリア王国1の大学、モリナリア王立総合大学に合格しなければならないという条件があるのだ。それこそ合格できれば王国は予備校生活だけでなく大学生活の4年間まで扶養してくれる。しかし合格できなければ1年間の扶養費を返済するまで働かされるのである。

「すごく虫のいい話なんですけど・・・なんでここまでの名門大学に合格することが条件なんですか?秀でた才能があるならいっそのことこんな回りくどいことはせずに最初から重役に置いてしまえば」

「王国側もそうしたいのは山々らしいんだけどなんせこの時代は・・・


 超 学 歴 時 代


 だからかなぁ」

「超学歴時代」

「そう、超学歴時代。約30年前に初めて誕生した『大学』。大学が誕生して以降、学力など技能の指標が正確ではないにしろ学歴として分かりやすくなったことによって、重役に高学歴の人を配置することで国王の人望や国力を測る風潮になってきてしまったんだ。ところでどう?このプログラム。あなたが本当にロウニンだったらこれ以上良いプログラムはないと思うんだけど」

予想外だ。どうやらこの世界は日本なんかと比にならないくらい学歴社会らしい。そうなると文明レベルが昨日までいた日本より相当低そうな世界ではあるが条件の大学のレベルはあの日本1として名高い東京首都大学にも劣らないだろう。しかしそこまで秀でた頭の良さもないがこれを断ったところで行き場もない俺。背水の陣ではあるが生きるためには条件を飲むしかない。

「このプログラム参加させていただきます」

「ならこの申し込み用紙に記入してくれないかな」

そういって一枚の紙を渡される。名前、日本にいたころの住所、年齢などの記入欄がある。書類に書いてあることには日本の住所を記入し、書類審査官が俺と同じように日本から転移してきた人に連絡を取ってその住所が実在すれば『ロウニン』として認められるようだ。それにしても不思議だ。なんで日本語と同じ文字が使われているんだ、考えてみれば言葉もすらすら通じている。ただきっとこの理由は受付さんに聞いてもわからないのだろう。そして書類に目を通す際に見つけた疑問がもうひとつ

「この『学科適正』ってなんですか?」

「学科適正っていうのはあの水晶に手をかざすだけで貴方の進むべき学部・学科を教えてくれるシステムよ。あとあなたの本名も出てくるから身分証明にもなるわ。あなたも早速やってみる?」

そういって手渡されたのは無色の大きな水晶玉。これに手をかざすだけで進路を教えてくれるというのだろうか。高校時代は理系だったけどもし文系が向いていると示されたらどうしようなどと考えながら水晶玉に手をかざすと、無色だった水晶があっという間に紫色に変わる。そして俺の結果は、

「貴方は魔術にものすごい適性があるみたいだね・・・」

「魔術って、まさか魔法があるんですか!?」

「まさかも何も魔法なんて普通にありふれてるよ。この紙だって魔法を使って印刷されたものだしこの明かりも魔法を応用したものだよ」

これは驚いた。ファンタジーみたいな世界だとは思っていたが本当にファンタジーだったとは。すると受付さんは私にもう一枚違う紙を渡してきた。その紙に書いてあるのは

『学科適正 千葉秋斗 結果 人望:そこそこ 学力:見込みあり 運動能力:絶望的 魔力:天賦の才

 総括:魔術学を志すのが良い』

浪人にはそれぞれ秀でた才能を持つと言っていたが俺は学力はそこそこだったし運動はからっきしだったが日本では存在しないステータスにこんな可能性があったとは。

「な、なるほど・・・俺には魔力に才能があったのか・・・」

そう満足げに頷いてきながら申請書類に必要事項を記入していると

「じゃあ適正的にも魔術学部を目指すのね」

と受付さんに聞かれたので

「はい!!」

と自信満々に答えると急に小さな声で

「一番厳しく人の少ないコースだけど大丈夫かなぁ」

とつぶやきだした。ただ得意げ気分な俺はどういう厳しさなのかを深く考えずに書類を提出すると、

「じゃあこれは受理したから明日またここマジックスクール予備校に来てね。あ、今日の寝床はこの建物の裏に寮があって二階に空き部屋があるだろうから勝手に泊まってていいよ」

突然冷めたような口調になった受付さんに少し寂しさを感じながら言われた寮の空き部屋に入る。置いてあったベッドに寝っころがると激動の一日を走り切った疲れからか空腹をも忘れすぐ眠りについてしまった。


次の日、予備校に向かうと昨日の受付さんが

「ロウニン扶養プロジェクトはちゃんと国に申請されたよ。だから今日はとりあえずコースごとに開講ガイダンスがあるから教室に入ってくれる?」

と言われるがままに教室に入っていくと机がたったの二つしかない。


そう、マジックスクール予備校一厳しいコースと言われる「モリナリア王立総合大学魔術学部コース」には厳しさのあまりたったの二人しか生徒がいないのだ!!


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