プロ浪グ
「万葉大学 理学部 生物学科 受験番号84064Yの方は入学試験の結果、残念ながら不合格です。」
3月21日、高校生だった俺、千葉秋斗は受験した全ての大学に不合格し浪人が確定したのだった。
幼いころから運動は出来なかったが勉強だけはそこそこできた俺は県下では有名な進学校に入学。しかし進学校に入った安心感とすぐに成績くらい伸びるだろうという慢心から3年間まともに勉強せずに学力は見る見るうちに暴落。ただ「小中学校時代は頭が良かった」という変なプライドを捨てきれなかった俺はレベルに見合っていない難関私立大学と国立大学を受け軒並み失敗。俺の高校時代を知る誰もが予想していた通り、浪人することになったのだ。
合否をパソコンのホームページで確認した俺は、高校に電話で浪人しますと報告をした後自宅に帰り親と通う予備校について話し合う。予備校、浪人と呼ばれる人の多くが大学に合格するために通う塾。大手の予備校だけでも川会塾、沼津台予備校や三谷学院など数種類もある。それぞれの予備校にも特徴があってどれがいいのか分からない俺は予備校で開いてるという説明会に参加することに決める。
「お母さん、俺は明日この予備校の説明会に行くことにするよ」
そう言って俺が選んだ予備校は「三谷学院」、297段階のレベルに分かれた授業を行ってくれるらしい。この予備校なら学力が暴落した俺でも昔夢見た大学に受かるかもしれない。そう短絡的に考えた俺は三谷学院の説明会に申し込み明日に備えたのであった。
次の日、東京は御茶ノ水にある三谷学院の前に立つ俺。噂通り高層ビルが立ち並ぶ都心の一等地に立派な建物を構え、入り口ではたくさんの予備校生と思わしき人達が行き交っていた。俺は「ここなら絶対に第一志望に合格できる」と意を決し、入り口のドアを開けて入って行くと・・・
ア、アレ・・・?何かがおかしいぞ・・・。パソコンのホームページや貰ったパンフレットで見た三谷学院はリクルートスーツを着た受付さんがカウンターにいて、壁には合格体験記が並んでいたり大学の過去問が並べられている棚があったはずだ。なのに今来ている場所はどうだ、家具や内装は全て木造、受付さんはモンスターハ○ターのギルドの人が着てるような衣装と予想していたものと全く違うのである。するとカウンターで待っていた受付さんが、
「ようこそ!見慣れない恰好をしているけど説明会に来たの?とりあえずカウンターに来てこの書類に必要事項を記入してよ!」
と言う。そうしてカウンターに向かい書類を覗き込むと「マジックスクール予備校 高卒生コース」と書いてある。マジックスクール予備校なんて見たことも聞いたこともないぞ。入った場所を間違えたかもしれない、そう思った俺は
「あの、す、すいません。ここって三谷学院じゃないんですか?」
と聞くと
「ミツヤ学院?そんな予備校この辺にあるなんて話きいたことないけど、どうかしたの?」
え?いやいやそんな訳はない。三谷学院の立派なビルから入ったはずだし、最近御茶ノ水から撤退したとも書いていなかった。疑問が止まらない俺は
「いや、その、ちなみになんですけどここの地名って」
「変なことを聞くね君は、ここはどこってそりゃティーズアクア、モリナリア王国の首都さ!」
「ティ、ティーズアクア!?御茶ノ水ではないんですか!?あとモリナリア王国ってどこ!?東京じゃないんですか?」
「オチャノミズ?トウキョウ?この辺にはない地名ですね・・・」
未知の地名を聞き思わずパニクってしまう。ティーズアクア?モリナリア?俺は予備校の説明会に来たと思ったら巨大テーマパークにでも入園してしまったのだろうか?確認するために慌てて建物の外に飛び出て周りを見渡す俺。すると先ほどまでの高層ビルが林立しているコンクリートジャングルとは違い、ファンタジー小説やRPGで想像するような中世の街並みが広がっている。さらにさっき三谷学院として入った立派な高層ビルの場所を振り向くと、「マジックスクール予備校ティーズアクア校」と書かれた看板が掛けられた木造二階建ての建物になっているではないか。もちろん持っているケータイは圏外。俺は町を通り行く中世風の衣装を着ている人に、
「すいません、ここってどこですか?」
と聞くと
「アンタ不思議なことを聞くのね、ここはモリナリア王国1の繁華街、ティーズアクアだよ」
驚いた。外にいる人まで予備校の受付さんと同じことを言っている。するとテーマパークでも俺が間違ったところに来たのでも、ましてや予備校の中の人がウソを言ったわけでもないということらしい。つまり残る可能性は一つ。ゲームやアニメでしかそんなことはないと思っていたがおそらく・・・
「浪人したら別世界に転移してしまったアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」