9.蛟と竜子
2016.12.19 【水泳】のレベルを上げ忘れていたので修正。
何時も通りの爽快な目覚め。
カーテンを開けると、雨は止んでいた。曇り空ではあるが、降りそうには見えない。
「おはよう」
部屋から出ると、丁度大牙達も出て来た所だったので挨拶をする。
「おはよう。朝食一緒に食べるか?」
「うん」
近くの食堂に移動する途中の道は、未だ乾いていなかった。
「二人共体調は良いのか?」
レオンとマオに尋ねる。
「ああ。寧ろ良いな! 多分、ゲームだから風邪引いたりしないのではないか?」
「そうだろうな」
「いや、マオは顔赤いぞ。熱があるんじゃないか?」
昨日と違って普通に血色が良いように見えるマオに、大牙がそんな事を言った。
「……無い」
『あるよ』
マオのイルカがばらす。
「他人に伝染るから、無理したらいけません!」
大牙がマオの頭にポンと手を乗せて叱る。
「私だけ熱が出るなんておかしい。レオンは平気なのに」
「お前とレオンは別の人間なんだから、そういう事もある!」
「そう言えば、昔熱を出した時、何故か体調が良かった事があるんだ」
私は、ふとそれを思い出して口にした。
大牙がレオンを見る。
「お前、熱無いんだよな?」
「ちょっと、待て。確認する」
レオンはステータスを確認した。
イルカに尋ねると、発熱しているとステータス異常として表示されるそうだ。
「うん。あるな! 気付かなかった!」
「お前な……。子供じゃないんだから」
大牙は呆れたように呟いた。
大牙が二人を連れて宿に戻り、私は風邪薬と朝食を購入して戻った。
「おはよう、琥珀」
宿の前で、彪に声をかけられた。ジャガーも一緒だ。
「おはよう。二人で狩り?」
「いや。皆でどうかと思ってな」
「実は、レオンとマオが熱を出してね」
「熱? まさか、昨日の雨の中を出掛けたのか?」
彪が驚いた様子で確認して来た。
「雨中戦闘訓練だってさ」
「馬鹿じゃねえの?」
ジャガーが身も蓋も無い感想を言う。
「まあ、ゲームだし、風邪薬飲んだら直ぐ治るかもしれない」
しかし、三人の部屋へ行くと、これに懲りて反省するべきと大牙が言い張ったので、風邪薬は一旦お預けとなった。
「俺は看病しているけど、琥珀は好きにして良いぞ」
「そうか? じゃあ、三人で狩りに行こうか? あ、でも、地面がぬかるんでいるんじゃないか? 乾いてからにしたいんだが」
私は振り向いて、彪とジャガーに話しかけた。
「そうだな。確かに、ぬかるんでいると嫌だな」
「俺は気にしないけどな」
二対一の多数決で、狩りは地面が乾いてからと決まった。
二人と別れた私は、市場通りにやって来た。
何種類もの魚をフライパンで焼いて、屋台に並べた。尚、塩味のみである。
暫くすると、不健康そうな見た目の男性プレイヤーがやって来て、商品を眺め始めた。
顔を見ると、頬の一部に鱗があった。蛇獣人だろうか?
「蛟さ~ん!」
高校生ぐらいの地味目の美少女が、誰かの名を呼び駆けて来た。
「おはようございます」
彼女はお客さんの隣まで来て挨拶した。すると、この男性が『蛟さん』か。
「お前も飽きねえな」
蛟は胡散臭い者を見る目で少女を見た。
「飽きませんよ! 私、蛟さん大好きですから!」
「俺なんかの何処が良いんだか」
蛟は少女の好意が信じられないらしい。
「全部です! 卑屈な所も可愛いですよ!」
蛟は可愛いとか言われた所為か、益々不信感が強くなったような目で少女を見ている。
「それより、狩りに行くんですよね? パーティー組みましょう!」
「俺は独りの方が……」
「一緒に戦いたいです」
「……まあ、良いけど、足引っ張るんじゃねえぞ」
「はい!」
蛟は、渋々と言った様子でパーティーを組む事を了承して、何も買わずに彼女と一緒に去って行った。
そして、急いで戻って来た。
「コレとコレ、くれ!」
「ありがとうございます」
午後になると地面が乾いたので、ジャガーと彪とパーティーを組んで街の北へと出た。
街の北では、鹿型モンスターが闊歩していた。
「降ろせ、竜子! 恥ずかしいだろうが!」
その声が聞こえた方を見れば、蛟が例の少女にお姫様抱っこされていた。
「両足怪我しているんですから、仕方ないじゃないですか!」
先程は気付かなかったが、竜子は頭に短い角が二本あるので、鬼人か竜人なのだろう。痩せているとはいえ成人男性を軽々と抱っこしている。
「辻ヒールしたら、馬に蹴られてしまうかな?」
私が呟くと、彪が同意した。
「そうだな。止めておいた方が良い。竜子に恨まれるかもしれないからな」
「そんな嫌な奴には見えねえけどなぁ」
「そうだと良いんだが」
「おい! 見られてるじゃねーか! 降ろせよ!」
横目で見ている此方に気付いた蛟が、赤面して竜子に降ろすよう要求した。
「え~、でも~」
「でもじゃねーよ! 恥ずかしいんだよ!」
それでも竜子は降ろそうとしない。
彼女がみくものようなストーカーなら、助けるのだが。
「竜子はSなのかな?」
「それはどうだろうか?」
私には竜子はSに見えるが、彪にはそうは見えないようだ。
因みに、我々はずっと歩きながら話していたので、もう後ろを振り向かないと二人の姿は見えない。
「この辺で良いか」
暫くして、ジャガーが足を止めた。
先ず私がドロップ増の為に斬り付け、彪とジャガーが倒す事を繰り返す。
それを夕方まで行い、宿へと帰った。
夕飯の席には、風邪薬を飲んで回復したレオンとマオも揃った。
「ゲーム内でぐらいは、病気にならなければ良いと思わないか?」
レオンが不満を口にする。
「それは思うけど、病気にならないとしても無茶はしない方が良いと思うよ」
足場や視界が悪ければ、魔物に殺される危険性が高まるだろうに。
「今度やったらM扱いするからな」
「我々は普通だ」
マオが大牙を睨む。
「普通の人は、雨の日は屋内トレーニングするんですー」
大牙がそう言い返す。
我々は寝ていたけどね。仕方ないね。種族特性だからね。
「そう言えば、雨の日もモンスターは普通に出現するのか?」
彪がレオン達にそんな事を尋ねた。
「いや。代わりに、蛙型モンスターや蝸牛型モンスターが出現したぞ」
「そうなのか」
「琥珀は素材を取りたくなったんじゃないか?」
「雨に濡れる位なら要らない」
私は、レオンの言葉をそう否定した。
「そんなに嫌か」
マオが呆れたように言う。
「普通は嫌だろう」
ウエストバッグに雨合羽は入っているけど、それを着るとしても嫌なんだよな。
ベッドに入ってふと思った。
このゲームに閉じ込められて一週間ほど経ったが、そろそろ騒ぎになっているだろうか?
一人暮らしの人ばかりではないのだから、問題になっていなければおかしいよな?
もしかして、誰か人質に取られていて解放する事が出来ないとかだろうか?
猫獣人:Lv15→17
力:94(+4)
生命力:124(+4)
知力:324(+38)
精神力:292(+34)
素早さ:82(+4)
器用さ:148(+16)
幸運:68
先天スキル:【猛獣化】 【跳躍】 【暗視】 【上下知覚】 【聴覚察知】 【隠蔽】 【忍び足】 【水泳】Lv3
後天スキル:【採集士】Lv17→18 【良質な眠り】 【魔力操作効率・中】 【魔法士】Lv5 【調理士】Lv10→12
SP:0
職業:冒険者・商人