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6.PKK

2016.12.12 【猛獣化】は五倍なのに二倍と間違えていたので修正しました。

 今日も清々しい目覚め。リアルでもこうであったならば良かったのだが。

 一応ステータスを確認すると、SPが5増えて10になっていた。

 どう考えても、ボスを倒したからだろう。

 早速、【調理士】を取得する。


<簡易調理セットを手に入れた>


「簡易? 簡易調理セットに無い調理器具は何処で利用出来るんだ?」

『【ホーム】か【ギルドホーム】の【設備】で【厨房】が追加出来るよ』

「そうか」

 レオン達がギルドを設立してからになるか。

「そう言えば、ギルドはどうやって設立するんだ?」

『王都の冒険者ギルドに申請するんだよ。必要メンバーは三人』

「ギルドホームは?」

『冒険者ギルドで土地を購入出来るよ。お金が無かったら借金も出来るよ』

 借金はしたくないな。ガルトを稼ごう。



 朝食後、商業ギルドへ。

『商人登録ですね。入会料は1,000ガルト。年会費2,000ガルト頂きます』

 3,000ガルトを払う。

『商売の形態を選択してください』

 『市場販売』・『行商』・『店舗販売』の中から、『市場販売』を選択する。尤も、『行商』も『店舗販売』も条件を満たしていないのかグレー表示で選択出来なかったので、選ぶ余地は無かったが。

『市場販売ですね。【屋台】か【市場用マット】を選択してください』

 屋台は高かったが、料理を売るなら屋台の方が良いだろうと思って其方を選択した。

 因みに、『市場用マット』は一回につき100ガルト。『屋台』は一回につき1,000ガルトである。

『商売の形態と販売の形態は、何時でも変更出来ますのでご安心ください』



 市場通りに移動し、空いている場所に屋台を設置する。

 そして、簡易調理セットを展開した。

 折り畳み式の台・携帯用コンロ(MPを使用)・フライパン・万能包丁・ボウル・調理用の箸。其々一つずつだった。

 さて。マグロの刺身を作るか。

 ガイドラインに沿って包丁を入れるミニゲーム。ズレが大きいほど評価が下がるのだ。

 切り終えて完成した刺身を、ウエストバッグに大量に入っている木皿を出して、盛り付けて仕舞う。

「あれ?! 仕舞っちゃうの?!」

 その声に驚きつつ顔を上げれば、屋台の前に大牙が立っていた。

「ごめん。【聴覚察知】で気付かない程熱中してたかな?」

「いや。それは気にするな。【忍び足】の所為だから。それより、マグロを食わせろ」

 大牙もマグロが好物のようだ。

「どの部分が良い?」

「全部」

「大トロ・中トロ・赤身・カマ・なかおち・頬肉・上あご肉・頭肉。……10,000ガルト超えるけど、良い?」

「おう」

 大牙の木皿を出して貰って盛り付ける。

 私の皿に乗せたまま売ると、皿代も払って貰う事になるらしい。

 食器はNPCの店で売っているし、多分プレイヤーが作る事も出来るので、元からバッグに入っている木皿が料理に合わないと思えば買えば良い。

 因みに、醤油・味噌・ご飯・日本酒等はNPCの店で売っているが、高い。

「そう言えば、マグロなんて何処で獲ったんだ?」

「あ~。スライム」

「スライム?!」



 リンクス山脈の事を説明したら、大牙は【漁師】のスキルを持っているそうで、早速出かけて行った。

 【漁師】を覚えていると、海産物が採集出来るだけではなく、操船も可能だそうだ。



   ◇◆◇



 みくもは昨日嫌々【蜘蛛化】して何とかボスを倒したものの、入門料が払えなかった為に渋々リンクスタウンに戻り、宿泊料が払えなかった為に野宿を余儀なくされた。

 寝ていると、何者かに殴る蹴るの暴行を受けてPKされた。

 このゲームのシステム上痛みを感じ無いから良いものの、かなりの恐怖体験だった。マオを抱き締めて癒されたいと思えども、次の街の入門料が払えないので叶わない。それもこれもあの女の所為だと、琥珀への恨みを募らせる。

 名前さえ判ればストーカーとしてブラックリストに入れてPKしてやるのにと、歯ぎしりをして悔しがる。

 因みに、ブラックリストに入れるには、その理由に該当するログが必要である為、誰にもストーカーなどしていない琥珀をストーカーとしてリストに入れる事は出来ないのだが。


 何とかマオに会いたいと苛々していたみくもの目が、昨日マオと一緒に居た刀使いの姿を捕らえた。

「ちょっと、待って!」

「ん?」

「貴方マオの友達よね? マオに、私に会いに来るよう伝えてくれないかしら?」

 大牙はみくもを見て、昨日ボスに突撃して行った女だと気付いた。

「あんた、マオとどういう関係?」

「え? それは……」

 みくもは、頬を染めて恥じらった。

「近い将来、マオが告白してくれて恋人になる関係……。うふ」

「ショタコン……」

 甘い夢に浸っていたみくもに、大牙が冷水を浴びせる。

「ち、違うわ!」

「何処が?」

「子供だから好きになったんじゃなくて、好きになった人が偶々子供だったの!」

「偶々だろうが、ショタコンだろ」

「彼の人間性を好きになったの!」

「人間性がどうあれ、ショタを好きになったならショタコンだろ」

「実年齢はショタじゃ無いじゃない!」

「そうだな。合法ショタだな」

「好い加減にしてよ! 私の恋に、汚いレッテルを張らないで!」

 武器を構えて怒鳴るみくもに、大牙は逃げ出した。

「待ちなさい! 許さないんだから!」



 大牙を追ってリンクス山脈に辿り着いたみくもは、頭を下げてから入って行った大牙を疑問に思わず、看板も無視して駆け入った。

 途端、何かにぶつかり、尻餅を着く。

「いった~。何にぶつかっ……」

 確認しようと見上げたみくもの目に移ったのは、今正にブレスを噴き出そうとしているドラゴンの姿だった。



   ◇◆◇



 昼過ぎで販売を終了した私は、街の外に出て牛型モンスターを狩った。

 この辺りのモンスターからは、まだ経験値が入るようだった。

「こう天気が良いと、昼寝したくなるな」

 私は、モンスターが彷徨かない辺りで横になった。



   ◇◆◇



 ある男がいた。

 その男は、女を性処理の道具と思っていた。

 実の妹を長年に渡りレイプし、娘を産ませた。

 娘が長じてからは、娘をレイプするようになった。

 しかし、このゲームのβテストに参加したのが運の尽きだった。


 ゲームに閉じ込められた男は、腹癒せに女をレイプしようとした。

 しかし、このゲームはエロゲーではない為、そんな機能は付けていなかった。

 つまり、快感を得る事も出来ないし、そもそも、穴も棒も無いのである。

 ついでに言えば、他人の服を脱がせる事も破る事も出来ないし、自分の服は脱げてもパンツは脱げない。風呂や脱衣所でならばパンツも脱げるが、それだけだ。

 キスしようにも見えない壁に阻まれるし、揉む事も出来やしないのである。

 それを知った時、男は怒りに支配され、女を殴りに殴った。

 そうして、男はPKになった。



 PKとなった男は、『指名手配』された。

 Lv50の警邏のNPCに追われ、休まらない日々。

 そのストレスを女にぶつければ、警邏の兵が増員された。

 そして、昨夜到頭捕まり、街の外に捨てられるという温い罰を食らった。

 飲食しなくても死ぬゲームで、料理のスキルも採集系のスキルも持たない男にとっては、詰んだと言える状況だろう。

『これで、死亡したら幽霊になるよ』

 イルカがそんな事を言ったが、男は詳しい説明を求めなかった。

 幽霊になれば、他のプレイヤーやNPCからは見えなくなるし、当然会話等も出来ない。危害を加える事も出来ない。

 ただ、【霊視】等のスキルもあるので、会話等の機会を得られる可能性はゼロでは無い。

 それと、イルカとの会話は可能である。但し、ヘルプに関係無い会話は出来ないが。



 次の街には入る事が出来るのではないか?

 男はそう考え、ボスを倒して先へ進んだ。

 しかし、エルボーゲンの街も入門禁止となっていた。

 男はむしゃくしゃした気持ちを女にぶつけるべく、単独行動の女が居ないか辺りを探した。

 するとどうだろう。無防備にも寝ている猫獣人の少女が居るではないか。

 男は、やはり女は馬鹿だと嘲笑い、逃げられないよう腹の上に座る。

 殴ろうとした次の瞬間、男の頭は宙を舞っていた。



   ◇◆◇



 殺ってしまった。

 男が近付いて来たのには、【聴覚察知】で気付いて起きていた。

 目的が判らなかった為に、未だ寝て居たかったので動かずにいたら、行き成り腹の上に座られ殴られそうになったのだ。

 その為、咄嗟につい【猛獣化】して殴ってしまい、クリティカルが発生して首が千切れ飛んだのだった。


<PKKにつき、無罪>


 そんなメッセージが表示された。

 PKされる所だったのか……。

 しかし、相手がPKでゲームとは言え、人を殺すのは気分が良くない。まあ、ゲームだから『気分が良くない』で済んでいるのだろうが。

 【猛獣化】さえしなければ、殺さずに済んだだろうか?

 しかし、逃げ出すには【猛獣化】しないと無理だと思う。つまり、殴ったのが肩だったならば、良かったのだろう。ステータスが五倍になっても、多分急所以外なら一撃でHPが0になる事は無いだろうし。……五倍だから一撃死なるか?



   ◇◆◇



 少女はぼんやりと男を見ていた。

 抵抗の意思を奪われ・希望を失い、しかし、まだ死にたくは無かった為に自殺を試みた事は無い。

 少女を支配する男は、VRゲームをしている最中だ。

 今ならば逃げられるのだろうが、一度逃げて直ぐに捕まり死ぬかと思うほど殴られた少女には、最早その選択肢は浮かばない。

 何も考えずに男を眺めていた少女の心に誰かが囁いた。

『今なら殺せるよね』

 その瞬間、少女は生気を取り戻した。

 立ち上がり、台所から包丁を持ち出し、男に何度も突き立てる。

 それだけでは安心出来なかったので、首を切断した。



   ◇◆◇



<××さんは死亡した為、ログアウトしました>


 そんなメッセージが表示された。

 亡くなる人が出始めたか。私も何時まで持つだろうか?

 今日はもう宿に戻って寝よう。

猫獣人:Lv13→14

 力:88(+2)

 生命力:118(+2)

 知力:267(+19)

 精神力:241(+17)

 素早さ:76(+2)

 器用さ:124(+8)

 幸運:68


先天スキル:【猛獣化】 【跳躍】 【暗視】 【上下知覚】 【聴覚察知】 【隠蔽】 【忍び足】 【水泳】Lv1


後天スキル:【採集士】Lv15→16 【良質な眠り】 【魔力操作効率・中】 【魔法士】Lv4 【調理士】Lv1→6


SP:0


職業:冒険者・商人

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