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13.クエスト

2016.12.19 【水泳】のレベルを上げ忘れていたので修正。

 起床してカーテンを開けると、未だ小雨が降っていた。

 しかし、その雨は朝食を食べ終わった頃には止んだ。



 何時ものように屋台を出す。

 今日の商品は、野菜炒め。

 塩コショウで炒めた物・ポン酢で炒めた物・味噌で炒めた物・めんつゆで炒めた物等を作った。

「おはよう、琥珀ちゃん。昨日の雷凄かったね!」

 竜子と蛟がやって来た。

「おはよう。うん。怖かった。プレイヤーに落ちたって聞いたけど、知ってる?」

「あ、あれね」

 竜子は知っているようだった。

「目撃した人から聞いたんだけど、転んで泥だらけになった人を嗤ったら言い返されて、カッとなって剣を振り翳したらしいよ」

「なんて自己中心的な……」

「ね~。あ、これ頂戴」

 竜子は、塩コショウで味付けした野菜炒めを買ってくれた。

「ありがとうございました」



 午後、レオン達と狩りに行こうと街中を歩いていると、子供の泣き声が聞こえた。

 見れば、五歳ぐらいの男児が泣きじゃくっていた。

 恐らく、迷子だろう。

「どうする?」

 我々は顔を見合わせる。


「済みません」

 町を警邏する兵士を見付けた我々は、彼等に話しかけた。

『何だ? 事件か?』

「向こうに迷子らしき男児がいるので、保護者を捜してください」

『……お前達が捜してやらなかったのか?』

 兵士は困ったような顔で尋ねた。

「ええ。だって、誘拐犯に間違われたくありませんから」

『そ、そうか……』

「一応、何かあったら手出し出来るよう仲間を置いて来ましたが」

 残して来たのはレオンとマオだ。

『解った。案内してくれ』


 迷子の元に兵士を連れて来た我々は、後の事は彼等に任せてその場を立ち去ろうとした。

『待ってくれ。この子の事だが』

「はい?」

 しかし、引き留められたので理由を聞く。

『この子の親は、デザートローズを手に入れるまで帰って来るなと言って追い出したそうだ。お前達は冒険者だろう? この子の為に取って来てやったらどうだ?』

 我々は、再び顔を見合わせた。

「どうする?」

 デザートローズとは、砂漠で発見される薔薇の形をした石の事だ。別名を、願いを叶える石と言う。

「どうするって、どう考えても捨て子だよな」

「そうだな。つまり、持って帰っても無駄だ」

 大牙とジャガーが面白くなさそうに言う。

「代々我が子に与える試練と言う可能性は無いか?」

「そう言う試練を与える家が無いとは言えないが、こんな小さな子供にさせはしないだろう」

 彪が有りそうな意見を上げるが、レオンが否定する。

「保護責任者遺棄罪だろう? さっさと親を逮捕しろ」

 マオはにべも無く兵士に要求した。

「一応、デザートローズ持っているけど」

 私は控えめに口にした。

『ほんとう?! じゃあ、ちょうだい!』

 男児が興奮した様子で駆け寄って来て、私の服を引っ張って要求する。

「茶番だな」

 マオが小声で吐き捨てた。

「ほら」

 私は、リンクス山脈で手に入れた最低評価のデザートローズを男児に渡す。

『やったあ!』

 そうして、礼も言わずに走り去ろうとしたので、追い越して足を引っ掛け、地面に突っ込もうとした所を服を掴んで助けてやった。

「物を貰ったならば、言う事があるよな?」

 500ガルトやそこらならば、別に礼は要らないのだが。

『もらってやったのに、なにすんだよ!』

 地面に立たせてやると、そんな事を怒鳴り返して来た。

「このクソガキが……!」

『いっ!』

「その態度は何だ!」

 今にも殴りそうな大牙を止めようとしたら、それより先にレオンが脳天を殴った。勿論、手加減している。

『なにすんだよ!』

「此方が貰ってくれと頼んだのではない! 礼も言いたくない程要らない物ならば、最初から欲しがるんじゃない!」

 男児は顔を真っ赤にして、大声で泣き喚き始めた。

『うわ~ん! ぼくなにもわるいことしてないのに、なぐられた~!』

 駄目だ、このガキ。

 本気で悪いと思っていないのか・逮捕させる為の狂言なのか知らないが、性質が悪い。

『へいしのおじちゃん! こいつら、たいほしてよ!』

 一部始終を見ていた彼等は、どんな判断を下すのだろうか?

『勉強をサボって、こんな所で何をしている!?』


 突如響いた第三者の怒声に、男児がビクリと固まった。

『答えろ! 何をしている!』

 振り向くと、厳つい顔の中年男性が怒り顔で立っていた。

『お、おとうさま。えっと……。そ、そうだ! ゆうかいされたんです! こいつらに!』

 うわ~。

 最初は、泣き真似と追い出されたと言う嘘。次に、騙したのに悪い事をしていないと嘘。今度は、誘拐の冤罪を着せる嘘。酷いなこれは。

『お前は、アレにそっくりだな』

 お父様と呼ばれた男は、我が子を汚物を見る様な目で見ている。

『そのデザートローズはどうした? 誘拐犯が親切にもくれたとでも言う気か?』

『それは……。あ! ひろいました!』

『そうか。では拾得物として届け出よう』

『ダメ! ぼくの!』

『さては、盗んだな!?』

 男性は盗んだと判断して、怒りのボルテージを上げた。

『ち、ちがいます! ……おまえたちのせいだ! なんとかしろよ!』

 男児は、此方を見てそんな事を言って来る。

「どうして?」

 私は、わざとらしくきょとんとした顔で首を傾げた。

『おまえたちのせいだからだ!』

「どうして?」

『おまえがぼくをつかまえたから、おとうさまにみつかったんだ!』

「お父様に見付かる事が、どうして困るの?」

『うるさい! いいから、なんとかしろ!』

 そんな彼から父親がデザートローズを奪った。

『息子が迷惑をかけたようだ。これも、君達から盗んだのだろう?』

 そう言って返そうとする。

『ちがうよ! もらったんだよ!』

「そうですよ。デザートローズを持って来いと言われて家を追い出されたと泣いていたので、差し上げたのです」

 私は、それは本当に上げた物だとちゃんと説明した。

『そうか。家を追い出されたかったのか』

 男性は息子を睨み下ろした。

『ち、ちがいます! そいつのうそです!』

『ほう。嘘か。ならば、やはり、貰ったのではなく盗んだのだな』

「いえいえ。本当に、貰ってくれたのですよ」

 上げたのは事実なので、盗まれたのではないと再度否定する。

『子供のした事だからと大目に見てくれなくて結構。貰ったと言うのは、コレの母親の常套句だった』

 下手に嘘なんて吐くから、貰ったのだと信じて貰えなくなっている。

『おとうさま! どうして、ぼくをしんじてくれないの!』

『信じて欲しいのならば、嘘で騙そうとするな!』


 反省したのか・していないのか、俯いて黙り込んだ息子を尻目に、彼はデザートローズを返して来た。

 本当に上げた物なのだが、信じないのだから仕方が無い。

 更には結構な額の迷惑料まで貰ってしまった。

『おかあさまにあえるとおもったのに』

 男児は、恨みがましくそう呟いた。

「デザートローズに、願いを叶える力は無いよ」

 私は非情な現実を教えてやる。

『うそだ!』

「そんな力があるんなら、赤の他人に飴の様に与える訳無いだろう?」



 号泣した子供は父親に引っ張られて去って行った。

 彼がこの後捨てられるか・座敷牢に入れられるかは判らない。

「ごめんな、皆。私があの子供を捕まえたばかりに」

「気にするな。悪いのはこんなクエストを作った奴等だよ」

 余計な時間がかかった上に精神的に疲れる結果になった事を謝ると、大牙がそう言ってくれた。

「そうだな。しかし、結婚は慎重にしようと思わされたよ」

 恐らくあの子の言動は、母親の悪影響なのだろう。

「慎重になり過ぎると婚期を逃すぜ」

 レオンの感想をジャガーが茶化した。

「あの子を更生させるのは大変そうだな」

 彪が呟く。

「更生なんて無理だろう。母親の言う事なら聞くかもしれないが、母親が原因の様だからな」

 マオの言葉に同感だ。



 その後、狩りをして戻って来ると、例の男児がまた泣いていた。

 彼の前には蛟と竜子がいる。

「そっか。じゃあ、リンクス山脈だね! 早速武器と防具を買いに行こう!」

 竜子がそう言って男児の手を取り歩き出そうとした。

「おい。何でそうなるんだよ?」

 蛟が尋ねると、竜子は足を止めて振り向く。

「だって、後継ぎへの試練ですよね?」

『え?! ちが』

「急がないと日が暮れちゃう!」

 竜子は慌てて男児を抱き上げて駆けて行った。


 面白そうだと追ってみる。

「この子に、このナイフ……は危ないから、この棒をください!」

『毎度!』

 止めない武器屋。

「この子に合う防具をください!」

『サイズ変化するからどれでも大丈夫だよ』

 止めない防具屋。

「行って来ます!」

『気を付けてなー』

 止めない門番。



 無事に戻って来た男児の手にはデザートローズがあったが、その顔には喜びは無く、ただ疲労だけがあった。

「自分で手に入れられて、良かったね!」

 そこへ父親が現れ、勉強をサボって何をしていると言われた彼は、やはり誘拐されたと主張した。

 そして、大体似たような流れで竜子達も迷惑料を貰った。


「あんな小さい子があんな嘘を吐くなんて……」

「あんな小さい子をモンスターと戦わせたお前も大概だぜ」

 ショックを受けた様子の竜子に、蛟が容赦なく突っ込む。

「だって、こう言う世界って、現代日本とは価値観が違うじゃないですか。だから、そう言う家風なのかなって」

 そこで竜子は此方に気付いた。

「あ! 琥珀ちゃんだ~! お願い! モフらせて~! 癒されたいの!」

「世間体が悪いから止めなさい」

 駆け寄って来た竜子をレオンが止める。

「ほら。猫」

 その辺を歩いていた多分野良の猫を、大牙が捕まえて竜子に差し出す。

「猫~!」

 猫は迷惑そうだったが、人間が好きなのか抵抗せずに頬擦りを受けていた。



 寝る前、私はデザートローズを手に眺めていた。

 もしも、本当に願いが叶うなら……。

 私は自嘲してバッグに仕舞うと、ベッドに入った。

猫獣人:Lv18→19

 力:98(+2)

 生命力:128(+2)

 知力:362(+19)

 精神力:326(+17)

 素早さ:86(+2)

 器用さ:164(+8)

 幸運:68


先天スキル:【猛獣化】 【跳躍】 【暗視】 【上下知覚】 【聴覚察知】 【隠蔽】 【忍び足】 【水泳】Lv3


後天スキル:【採集士】Lv20 【良質な眠り】 【魔力操作効率・中】 【魔法士】Lv5→8 【調理士】Lv16→17


SP:0


職業:冒険者・商人

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