第5章 襲撃
第5章 襲撃
第1話 MTS
ユーラが権利を持つ25の恒星系の1つが襲撃された。
それは、銀河中央から見て、辺境側からだった。
最も外縁の恒星系が、襲撃された。
その恒星系の防御ステーションは、全てCMDで構築されていた。
主要な鉱山もない。
住人もいない。
大きな被害は出なかった。
だが、これが中心部へと進撃されるとやっかいだ。
MTSのターナーは、鎮也と連絡を取った。
鎮也は、直ぐ戻ると言っている。
1時間以内に戻ると言っている。
空間バッテリーを余り消費したくない。
資源不足なのだ。
今、鎮也は100光年くらい離れたところにいる。
空間バッテリーを全て使えば、1秒かからないで戻れる。
未だ、急を要しないのだ。
アインは、複雑だった。
ムーに戻れば、質問攻めに合う。
自分は、自分の考察で一杯なのだ。
もう1つ内側の恒星系が襲撃された。
第2話 撃退
アプリは、その恒星系に向かった。
襲撃艦隊は、戦艦6・空母2・巡洋艦19・駆逐艦76だった。
艦隊の主力攻撃はエラドル砲だった。
しかし、船体にはダイバリオンを使用していない。
おそらく、空間転移とレプトン系素粒子の技術だけが、発達したのだろう。
ほとんどが、人工知能だ。
僅かに、生命体が乗っている。
リーは、「強制の転送」を発動させた。
乗組員は、故郷に還ったはずだ。
人工知能だけになった艦隊を殲滅した。
アプリは、襲撃を行った艦隊の属する恒星領域に向かった。
その恒星領域は、18の恒星系を持っていた。
アリス「この文明は歴史を7千年しか持っていません。
細胞リサイクル遺伝子を発現させたものはいません。
彼らの技術は、発掘で得た古のものです」
これで、説明が付く。
ちぐはぐな技術なのだ。
並列的に進歩していない。
鎮也は、固定した欠片と話した。
「何が起こったのですか」
「突然開花です。
あるものが、かつて滅びた文明の残骸を発見したのです。
その発見が、次々と起こり精神の目覚めより、技術が先行してしまったのです。
彼らの持つ技術は、完全ではありません。
多くの矛盾を持っています」
鎮也は、この領域の指導者達に提案をした。
「お互い、大使館を持ち交流を行いませんか。
我がムーへの留学も受け入れます」
指導者達にとって、悪い話しではない。
自分達の力では、アプリに殲滅させられるだけだ。
巻き返しを図るためにも、留学は願ったり叶ったりだ。
別方向からも、襲撃があったらしい。
第3話 別方向
その襲撃も似たようなものだった。
襲撃は、全部で5回の行われた。
それぞれ、異なる恒星領域からだった。
その度にアプリが出動しなければならない。
辺境を平穏にするためには、銀河の最奥部まで2万光年ぐらいある。
時間がかかり過ぎる。
アプリは、銀河の中心へと向かいたいのだ。
5つの恒星領域を第1衛星領域と呼んだ。
「First Star Range」FSRと呼んだ。
恒星領域は、「Range Of Star」ROSと呼んだ。
各生命体起源惑星を「Life Origin Satellite」と呼んだ。
LOSに大使館を置き、交流を行った。
留学生も受け入れた。
それぞれのROSは、それぞれの留学生が変革を起こしていくだろう。
これで、我がROSを含めて、12のROSが版図に入った。
LB13には、少し負荷がかかっていた。
MTSの提案で、ROS連邦の定期連絡会議が行われる事になった。
ROS同士のルールが、1つ決められた。
「強制的な干渉をしない事」
「干渉は示唆だけにする事」
後は、随時対処する事にした。
基準は、それぞれが決め、それぞれが持つ。
・元素の第4話 ジルコニウム
ジルコニウムは、自然界に存在する原子番号40の元素だ。
ジルカロイという合金が作られた。
それは、かつて原子核分裂からエネルギーを得ていた時代に使われた。
熱を閉じ込める性質を持っていた。
ジルコニウムをケンザイムの内側にグル‐オンⅡで密着すると、熱放射がゼロになった。
熱の圧縮技術が出来た。
これを用いた装置を、Heat Pressure(HP)と呼んだ。
内部は、軽く1,500万Kを超す。
これは、太陽の中心核の温度と同じだ。
どこまで温度を上げる事ができるか実験した。
推定3,000万Kを超した。
それ以上は、測定できない。
この熱をエラドルと融合できた。
熱とエラドルは、相性がいいらしい。
互いにEOPの質が違う。
これを螺旋化し、ルビジウムで作ったレンズを通すと、破壊力が増した。
通常のエラドル砲の何万倍の威力を発揮するのだろう。
これをHエラドル砲と呼んだ。
・元素の第5話 ニオブ(1)
ニオブは、自然界に存在する原子番号41の元素だ。
様々な用途の研究が進められている。
ニオブは、複雑だ。
様々な形態をとる。
研究は、難航していた。
1つずつ問題が、剥がされていった。
1つ目が解った。
性質は、グル‐オンⅡに似ている。
元素同士の隙間に入り込んで密着性を高める。
グル‐オンⅡの代替えに利用できそうだ。
2つ目が解った。
ある種の元素との合金が、超硬度の切削工具となる。
ダイバリオンを切削できるか、実験が必要だ。
3つ目が解った。
磁力の超磁導性質がある。
もっとも、磁力そのものの解明が済んでいないが。
4つ目が解った。
周波数を変化させる事ができる。
超高周波数の出力もできる。
5つ目が解った。
高性能のコンデンサ性質を持つ。
電荷の性質が解明されれば、電力バッテリーの開発に有益かもしれない。
ニオブの実用化は、未だ先だ。
第4話 技術(1)
LB13は、旅立ちたい。
だが、ROS連邦が襲撃されると、又戻って来なければならない。
防衛機動艦隊を結成する事にした。
問題がある。
「襲撃艦隊に生命体が乗っていた時、生命体を傷付けずに確保か転送する事」
「艦隊主力に、絶対的な力を持たせる事」
(もっとも力は、襲撃者によって絶対性を欠くが)
「乗組員の養成」
「ステーションの強化」
生命体の確保に重点が置かれた。
生命体の感知には、タキオンが応用された。
亜空間で包んだタキオンを、位相させ複数のタキオン波を送る。
艦隊へのタキオン現出距離を調整する。
又は、走査するようにタキオン波を放出する。
反射してきたタキオンを分析する。
これで、生命体の感知は、可能なはずだ。
ムーでは、12人のテレポート・レアレベル者が見つかっていた。
8人は同行系だ。
4人は長距離系だ。
皆が艦隊への搭乗を望んだ。
テレポーターによる生命体の確保が検討された。
第5話 技術(2)
艦隊の主力砲が決まった。
Hエラドル砲だ。
セント砲には、未だ威力は及ばない。
しかし、エネルギーの源は無尽蔵に等しい。
必要なのは、ダイバリオン融合炉とHPだけだ。
小型機にも搭載できる。
乗組員の養成に難航した。
操縦者がいない。
アプリのZF10の操縦者4名を艦長兼操縦者とした。
アプリには、補充がいない。
メンテナンス要員は、搭乗させない事にした。
出撃したら、1度ムーに戻ってメンテナンスを受ける。
大型艦の射撃者は、なんとか最低レベルまで持って行った。
戦闘機は、コンター任せだ。
ムーでは、防衛対策のためレアレベル者を探した。
だが、突然変異はいつ起こるか分からない。
そして、その者が、搭乗を望むか分からない。
当面、レベルH者での対応となりそうだ。
SRRでの、トップとダウンクォ-クの採掘が始まっていた。
埋蔵量は、測定できなかった。
採掘をすると埋蔵量がいくらか増えるようだ。
あの恒星系の特質だろうか。
だが、そのおかげで防衛艦隊の主力艦にペンタダイバリオンが使える。
第6話 艦隊
4つの艦隊を編成した。
それぞれの艦隊の司令官は、当面ZF10からの移動者だ。
この防衛艦隊には、レアレベル者がこの4人しかいない。
元々は、操縦のレアレベル者だ。
司令官の役目が務まるか不安だ。
1つの艦隊の編成が決まった。
旗艦は、戦艦だ。
セント砲を3門装備している。
装甲は、ケンザイムとペンタダイバリオンだ。
ペンタダイバリオンのフィールドが、防御に期待できる。
空母が5隻だ。
それぞれ、60機のZF9を搭載している。
戦艦には、レアレベル者の他にレベルH者が5人搭乗している。
補佐と経験を積ませるためだ。
空母も戦闘機もコンター任せだ。
必要なら、旗艦から指令を出す。
通常任務は、ステーションとTNS設置の護衛だ。
第7話 成果
FSRに合計12回の襲撃があった。
鎮也は思っていた。
「何故か、意図が感じられる。
こんなにも、偶発的に見える文明の進化と襲撃があるのだろうか。
それも、我々に致命的な被害を与えないように」
12回の襲撃は、4つの艦隊が対処した。
アプリは、傍観しているだけだった。
まず、合格だ。
それぞれのROSには、知覧が赴いて交渉をした。
知覧は、「外交学」「交渉学」「心理学」のレアレベル者だ。
第2衛星恒星領域(SSR)ができた。
SSRの外縁とムーとの距離は、約100光年だ。
ムーと法を共有する領域が増えた。
ターナーとMTSの仕事が増えた。
人材が欲しい。
ムーに、人材開発研究所ができた。
だが、彼らは何をすればよいのか、分からなかった。
・アインの考察の第4話 電荷と質
自然界の物質が、化学反応を起こすのは自明だ。
故意に環境を変えなければ、ほとんどが共有結合で化学反応は起こる。
この共有結合は、電荷(電子)の過不足が密接に関係している。
そして、化学反応は、この世界を複雑に見せる。
だが、根本は単純なはずだ。
そうでなければ、法則が成り立たない。
全てが混沌としてしまう。
電子は、原子核を中心に周っているとされる。
軌道という表現が使われる。
これには、疑問を感じている。
電子が周っているとしたら、周らせているEOPは何処から得ているのか、分からない。
おそらく、電子は原子核の周りに存在するだけなのだ。
陽子はプラスの電荷を持っている。
電子はマイナスの電荷を持っている。
本来なら電子は陽子に吸収されるはずだ。
離れて存在するためには、電荷の斥力に相当するものが必要になる。
これが、未知だ。
陽子の周りの電子は、大きく分けて2つになる。
内郭電子と最外殻電子だ。
電子は、陽子の電荷数と同じだけ存在する。
電子同士は、マイナス同士だから離れて存在する。
何らかの理由で、最外殻に追いやられた電子が存在する。
この最外殻の電子数が、共有結合と密接な関係を持つ。
アインは、思っている。
「電荷と質は密接な関係を持っている。
何故、電子が陽子に吸収されなかったか?
何故、最外殻に追いやられた電子が存在するのか?
これが解れば、解決するかもしれない」
現在のムーの科学は、未だこの世界に通用しない。
用語
MTS…ムーの最高決定議会(首席ターナー)
CMD…第2世代ダイバリオン
ROS…複数の恒星系を持つ領域。固定した欠片が存在する
FSR…第1衛星領域。太陽系のあるROSの周辺のROS群
SSR…第2衛星領域
LOS…生命体起源惑星
TNS…転送ネットワーク・システム