第4章 隣接
第4章 隣接
第1話 5つの欠片
鎮也が、マントから情報を得ている。
固定した欠片と自由に会話ができるのは、鎮也だけだ。
鎮也「隣接する欠片の情報が知りたいのです」
マント「暗黙の法を持っているのは、私を含めて6つだ」
鎮也「その情報が知りたいのです」
マント「厳密にいうと隣接しているのは4つだけだ」
鎮也「残りの1つは?」
マント「その4つと隣接している」
鎮也「危険は、ありませんか?」
マント「4つは、穏やかだ。
但し、領域侵犯を侵せば分からない。
私から通達だけは、してみよう」
鎮也「有難うございます。
残りの1つは?」
マント「よく分からないのだ。
時々、領域侵犯を侵すそうだ」
マントは、思い出していた。
確か、40億年くらい前の事だ。
ある方が、言い残して行った。
「あそこに干渉してはならぬ。
わしが、種を植えたところじゃからな」
高貴な方だった。
「その種が芽生えたのだろうか」
4つの欠片は、合わせて87の恒星系の権利を持っていた。
マントの通達のお陰だろうか。
比較的に穏便に接触できた。
生命体起源惑星は、7個あった。
その内、6個は1億年以上の歴史を持っていた。
そして、成長を止めていた。
1個だけ、成長過程の惑星があった。
歴史は、1万年に満たない。
この惑星は、以前来た事があるような気がした。
文明は、かつての地球の21世紀初頭に相当していた。
この文明と交流を持つ事にした。
この惑星を「コミューⅠ」と呼ぶ事にした。
彼らは、自力で恒星系を脱出できない。
送迎付きで、留学生を受け入れた。
第2話 攻撃
最後の領域は、22の恒星系を所有していた。
最後の欠片の領域に足を踏み入れた。
突然、艦隊が現れた。
目立った攻撃は、してこない。
だが、アプリの内部の数か所で爆発が起こる。
アプリの内部構造は、仕切りで区切る事ができる。
異常が起こるとその区画は、閉じられる。
内部もケンザイムで作られている。
今のところ、大きな被害はない。
ミサが活躍していた。
アプリに送らてくる爆弾を亜空間で自爆させている。
ミサの防衛本能が、そうさせているらしい。
幸の「無意識の意識」とは、異なる防衛本能だ。
幸は、危険を察知しても、なすすべがない。
ミサの撃ち洩らしたものが、アプリにくるらしい。
ミサは、小さいものしか運べない。
爆弾の信管に何かをぶつける。
ミサが、使用したものが何か分からない。
重要なものを持ち出しているかもしれない。
砲による攻撃はない。
ただ、乱雑に爆弾を送りつけてくるだけだ。
切りが無い。
第3話 転送爆弾
予測されるのは、転送爆弾だ。
彼らの中に、転送者がいるのか。
それも複数いるのか。
彼らの武器は、転送機だった。
1度、亜空間に入り、急現出でアプリを襲う。
おそろしく、精度がよい。
ミサの防衛本能は、亜空間で発揮されていた。
現出する直前に自爆させる。
同じテレポ‐ターでもサムには、できない能力だ。
防衛本能とそれに連動する判断が、追いつかない。
アインは、可能性を考えていた。
「その亜空間は、作りだされたものなのか。
それとも、この世界の外からなのか。
この世界の外からのものなら、我々は何も対処できない」
レオが言った。
「幸いミサが機能している。
試す方法は、2つある。
最初に、新和の結界を発動してみよう」
新和の結界が、張られた。
アプリ内部への爆弾は、無くなった。
アインがミサに言う。
「ほんの一寸だけ休め」
爆弾は来ない。
新和の結界は、効果を示した。
新和の結界が解かれる。
同時にペンタダイバリオンのフィールドが張られる。
爆弾は来ない。
第4話 検出
正体が予測できた。
ステルスなのだ。
アプリに照準を合わせ、亜空間へと発射する。
亜空間は、照準を確認すると解かれる。
亜空間内部の爆弾が爆発する。
亜空間移動の速度を検出する事が、できない。
現在のムーの科学力は、そこまで行っていない。
ミサは、どうやっているのだ。
「マントの勢力圏で同じ様な事があった。
空間転移をしても、それを予測された。
いや、検出されていたのだ」
アプリは、マントの勢力圏に戻った。
ポセイとアインが、人工知能を調べている。
「…
これだ。
重力子と斥力子の余りを検出しているのだ。
亜空間を発生させる時、重力子と斥力子を対消滅させる。
この時、完全に対消滅出来なかった重力子と斥力子が残る。
これを検出していたのだ。
どうやってかは、分からなかった。
しかし、機構がここにある」
機構がアプリに積みこまれる。
戻ったアプリは、機構を作動させた。
検出できる。
しかも、亜空間内部の重さとエネルギーのMAXまで検出できる。
この機構をムーに転送した。
現在地とムーは、80光年くらい離れている。
アプリ搭載の転送機は、この機構の重単位なら、250光年まで転送できるはずだ。
ムーに依頼した。
「検出器の機構を調べてくれ。
それを迎撃する手段を確かめてくれ」
ムーでは、それをレインが担当した。
彼は「空間学」のレアレベルだ。
・元素の第3話 ストロンチウム
ストロンチウムの特性について研究を始めていた。
ストロンチウムは、自然界に存在する原子番号38の元素だ。
炎色反応で赤色を示す。
カルシウムとよく似た性質を持つ。
ルビジウムと決定的な違いがあった。
エラドル砲を照射させて、一定値を超えると、燃え始める。
ストロンチウムにエラドル砲を照射させる事は無意味に思える。
人体にカルシウムの替わりにストロンチウムを与える。
すると、骨が強化される事が解った。
その替わり、反射神経が鈍くなる。
放射性のストロンチウムを与えると人体に思わぬ弊害を起こす。
与えるのは、安定したストロンチウムだ。
イットリウムは、遷移元素として知られるが、単体では、自然界に存在しない。
イットリウムは、原子番号39の元素だ。
ランタノイド系元素と性質がよく似ている。
サッキは、この元素の研究を見送っている。
第5話 狂気
アプリは、ここの惑星の軌道上にいる。
留守番は、ポセイとロバートだ。
皆は、サムの同行で地上に降り立った。
住人は反応を示さない。
いや、示す者もいた。
その者は、無意味に攻撃してきた。
新和が『捕縛の柵』を発動させた。
『捕縛の柵』は、精神を結界内に閉じ込める。
絶対的な捕縛だ。
対象者は、傷つかない。
だが、新和が解かないと、自由は得られない。
アリスは、感知能力で探っていた。
「この惑星の住人は、狂気に走ってます。
精神もブロックされていません」
人工知能だけが、働いていた。
かつて、この惑星が文明を持っていた証拠だ。
我々を攻撃したのは、狂気に走りかけた者のプログラムだろう。
おそらく「外敵を排除せよ」だろう。
彼らが、領域侵犯を時々侵すのは、この命令によるのだろう。
守るために、間違って、領域侵犯を侵すのだろう。
人工知能は、これに気付いていない。
ここでは、暗黙の法は意味を持たない。
「何が彼らを狂気に走らせたのだ」
第6話 窪み
アプリが異常を発見した。
この惑星の恒星系の何処かに異常があるようだ。
アプリには、それが何処かそして、原因も分からない。
アリスが『透明の皿』を発動させた。
「場所は、分かりました。
しかし、そこに空間はありません。
いえ、あるのですが、異常に窪んでいるようです」
アイン「ブラックホールの真逆ということか。
斥力のブラックホールだというのか」
アリス「それは、分かりません。
私は、ただ感じるだけです。
それを考えるのはアインの役目です」
アイン「…」
アリスが『覗闇の社』を発動させた。
「窪んだのは、10万年くらい前の事です」
アイン「10万年?
自然現象ではない。
その時期に宇宙構造が、急激にそして、短時間に変化するはずはない。
何者かの意図だ」
第7話 柵
ロバートが『誘因の垣』を発動させた。
窪んだ領域を垣で覆い、その境界を垣の中へと誘因した。
レオ「今はこれしかない。
原因が、分からないのだから」
マリヤが『平衡の糊』を発動させた。
リーが『複合の笠』を発動させた。
そして、指数関数に交換した。
対象は、この惑星の住人だ。
彼らの狂気は無くなった。
しかし、ほとんど思考できないようだ。
精神が飛んだのか。
いや、そんなはずはない。
精神が飛べば、肉体も無くなるはずだ。
時間が必要なのか。
生存しているという事は、細胞リサイクル遺伝子が機能しているという事だ。
生存本能は、遺伝子にも影響を及ぼすのか。
アリスは、ここの人々の身体を走査していた。
「骨成分にカルシウムが異常に足りません」
どういう事だろうか?
第8話 TNS
ターナーを筆頭とするMTSは、暗黙の法を持つ領域に進出した。
この領域を「Silence Raw Range」SRRと呼ぶ事にした。
固定した欠片は、6つ居る。
ユーラは、彼らにメッセージを送っていた。
「全てを託しましょう」
SRRは、130の恒星系を持つ。
ここの全ての恒星に防御ステーションとTNSを配置させる予定だ。
いや、1つの恒星系は、除かねばならない。
約束がある。
使用するダイバリオンは、第2世代CMDだ。
主要な恒星だけ、第3世代クオダイバリオンを使用する。
未だ、トップとボトムクォ-クの採掘量が不足している。
SRRの中の1つの恒星系で、トップとボトムクォ-クが見つかった。
MTSは、埋蔵量を測定している。
ここの鉱山開発は、許可を貰っている。
今後、不足が予想されるのは、トップとボトムクォ-ク、それとセントニウムだ。
防御ステーションは、エラドル砲を備えている。
エラドル砲は、ルビジウムで威力を増すだろう。
だが、誰かに襲撃された時、充分だろうか。
誰にも分からない。
セント砲も、何箇所かに設置している。
エラドル砲は、実質的にエネルギーが無尽蔵だ。
セント砲は、セントニウムを消費する。
主力は、エラドル砲となる。
狂気の惑星に、ムーから技術者が飛んだ。
ストロンチウムで、カルシウム不足を補おうとしている。
だが、効果があるか、誰にも分からない。
・アインの考察の第3話 質と力
アインは、考察していた。
質は力の影響で抑え込まれる。
質はエネルギーを持っていない。
力はエネルギーそのものだ。
だが、質の量が増えればエネルギーを抑制できるかもしれない。
質の量を「Quantity Of Quality」QOQと呼ぶ事にした。
エネルギーを「Energy Of Power」EOPと呼ぶ事にした。
現在知られているEOPは、いくつかある。
電力、位置エネルギー、エラドルなどがある。
それぞれが、質を持っているように思う。
対象物が限定されれば、それぞれのEOPを1つの単位で現わす事ができる。
だが、対象物が異なれば、EOPの数値は変化するはずだ。
宇宙を構成する最小単位が、特定された時、
EOPは統一単位で測定されるかもしれない。
アインは、
「最小単位は、場である。
場は、4種類ある。
4種類は異なる質を持つ」
と、考えている。
現在、確認されているEOPは、この質も受け継いでいると考えられる。
アインの考察は、大幅な修正に入っている。
今度の考察は、的を射ているのだろうか。