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第1章 5つ目の恒星系

第1章 5つ目の恒星系


第1話 襲撃


 アプリを制御する第7世代人工知能「コンター」に名前を付けた。

マコと名付けた。


 ムーを飛び立ち、ユーラが権利を持つ3つの恒星系を訪ねた。

ユーラが権利を持つ25の恒星系の中で、生命体が育んだのは地球だけだった。

今、25の恒星系は、宇宙ステーションの設置や惑星改良が行われている。

これらの恒星系には、レアメタルやダイバリオンに必要なクォ‐クが眠っている。

 レアメタルの研究は、鉱物学者サッキが指揮を執っている。

ヘックスダイバリオンの研究は、朝居が指揮を執っている。

サッキも朝居もレアレベル科学者だ。


恒星の質量単位を決めた。

太陽の質量を1MS(mass of star)とした。

そして、その10倍の恒星を2MSとした。

さらに、その10倍の恒星を3MSとした。


 25の恒星系で、最も質量のある恒星は、1.3MSくらいだ。


トップとボトムクォ‐クの絶対量が不足している。

それらは、ダイバリオンを構成する主要なクォ‐クだ。

できるなら、近郊で鉱山恒星系を得たい。

 現在、25の恒星系の構造物のほとんどが、第2世代ダリバリオンCMDを使用している。

主要な部分だけが、第3世代クオダイバリオンを使用している。

アプリだけが、第4世代ペンタダイバリオンを使用している。

 ボトムクォ‐クは、少量だが、採掘できる。

トップクォ‐クは、希少だ。


今のところ、転送ネットワーク・システム(TNS)は正常に機能している。

ターナーは、アプリへの補給線を可能な限り、新しい世代のもので構築したかった。

今は、望むべくもない。

 ステーションの設置を行う製造船が何隻か作られている。

ターナーには、不安があった。

「補給線を確保できるだろうか」


 アプリは、勢力圏外に飛び立った。

そして、そこから7光年離れた恒星系も無事通り過ぎた。


 アプリが、5つめの恒星系に立ち寄ろうとした時だった。


 突然、襲撃を受けた。



第2話 艦隊


 その襲撃は、多くの軍艦によるものだった。

マコが軍艦を測定している。


 戦艦8隻、空母3隻、巡洋艦21隻、駆逐艦95隻、戦闘機は無数だ。

アリスは生命体の感知を行っている。

「生命体の反応はありません」

全てが、人工知能のようだった。

「この恒星系の権利は、誰が持っているのだろう」

LB13は、この時既に間違いを起こしていた。


 鎮也は、マコに指示を出した。

「敵意のない事を発信しろ」

そして、空間転移を繰り返した。

時間稼ぎだ。

軍艦は空間転移に追いついて来る。

アプリがユーラの勢力圏に近付く事は危険だ。

被害を及ぼす可能性がある。

軍艦からの返信はない。

攻撃が激しさを増す。

包囲された。

空間転移は無意味だ。


 ロバートがZF11を発進させた。

ZF10とZF9も発進した。

アプリにはエラドル砲が112門ある。

だが、アプリの機動性能は劣る。

照準が遅い。

セント砲は、未だ使えない。

セントニウムが転送されていない。

ターナーに発信した。

「急いで、セントニウムとペンタダイバリオンを転送しろ」


 仕方がなかった。

逃げられない。

相手は幸い人工頭脳だ。

対象は命ではない。

鎮也は覚悟を決めた。

「全てを迎撃しろ」


 ZFは戦艦を除く全てを破壊した。

この時、セントニウムが転送されて来た。

セント砲が使える。

戦艦も破壊した。


 「何故、領域を侵した」



第3話 領域侵犯


 「お前達は蛮族か。

暗黙の法を知らないのか。

我は他に干渉しない。

他も我に干渉しない。

我は既に他にこの事を発信した。

領域侵犯は最も罪が重い」


 ここの固定した欠片マントは、21の恒星系の権利を持っていた。

3つの惑星が、生命体を育くんだ。

それぞれは、独立した社会を持った。

他の惑星への干渉は禁忌だった。

 近接するいくつかの固定した欠片とは、暗黙の法を持った。

互いに干渉しないという暗黙の法だ。

「自分以外は他」が基準だった。


 LB13はこれを侵した。

知らない間に侵していたのだ。

もはや、交渉の余地はない。

全ての軍艦を葬り去ったのだ。

だが、あの艦隊は、ただの偵察隊だった。


 あの艦隊を派遣したのは、辺境警備隊の隊長の判断だけだった。

隊長は拡散発信をした。

「侵す者がいる」

隊長の判断だけだった。

隊長にとって、全てが他だった。


 この領域では、繋がりが弱い。

個が最優先だ。

マントもそれに引き摺られていた。

数十億年存在した者も、多数の個に、引き摺られていた。

マントの寂しさが、それをさせたのだろうか。

彼は、望みも願いも忘れ去っていた。



第4話 隊長の判断


 辺境警備隊の隊長は、自分の持つ兵力をほとんど失った。

だが、隊長には何ら後悔も自責の念もない。

「我は我の判断でしたのだ。

結果は誰も予測できない。

次を考えるだけだ」


 隊長は、ステーションを去った。

隊長とは、名ばかりだった。

このステーションに生命体は彼一人だけだった。

彼は自分の属する本隊のいる衛星に向かった。


 隊長が去ってほどなく、マコがこのステーションを感知した。

アリスによると、生命体の存在は皆無だと言う。

 サムはアリスとアインを伴って、このステーションにテレポートした。

アインが観察している。

「これはクオダイバリオンか。

文明の高さが伺える。

ここはこの文明のどの部分辺りになるのだろうか」

アリスの『過去の視線』が走った。

「最近僅かな補修をしていますが、かなり古い構造物ですね」


 サムは二人を伴って、アプリに戻った。

レオが言った。

「ここの領域の詳細が分かれば、何か手が打てるのだが。

アリス。

何とかならないか」

アリスは精を試してみた。

『密許の窓』を発動させた。

未だアリスはこの精を使い切れていなかった。

だが、ここから半径8光年の地図はできた。

「5つの恒星系が確認できました。

5つの恒星系に生命体がいます」


 この恒星系をUnknown System(US)と呼ぶ事にした。

惑星をUnknown Planet(UP)と呼ぶ事にした。

そして、USⅠ~Ⅴの調査を行う事にした。


 もう、後戻りは出来ないのだ。



第5話 衛星


 それは偶然だった。

アプリはUSⅠに向かった。

そして、そこのUP1に向かった。

USⅠには、UPが3つあった。

UP1には衛星が1つだけ周っている。

隊長はその衛星に居た。

「どうして、分かったのだ。

ステーションを爆破してくるのだった。

だが、それは自分の責任ではない」


 アリスは『透明の皿』を発動させた。

透明の皿は近距離であれば、物質構造や生命体の個体認識ができた。

この精は、うまく使えているように見える。

「UP1は火星ほどの大きさです。

衛星は1個です。

かつて、もう1個の衛星が存在したようです。

それは、UP1に吸収されたようです。

今ある衛星をフォモスと呼びましょうか。

フォモスの直径は20Kmに足りません。

フォモスには、生命体を15確認しました。

UP1には、3546確認しました」


 フォモスからエネルギーが走った。

直線的にアプリを目掛けて襲ってくる。

アプリはショートの空間転移を行おうとした。

だが、間に合わない。

エネルギーは、アプリを掠めた。

アプリの空間転移は成功した。

だが、それを予測していたようにエネルギーが襲う。

アプリの端にそれが直撃した。

 アプリは、離れた宇宙空間に退避した。


 マコの分析結果がアインに伝えられる。

「エラドル砲だ。

高出力のエラドル砲だ。

ケンザイムでなければ、やられていた」

 アプリは掠り傷ひとつ負っていない。


 未久の予知能力は発動されない。

未だ、危険ではないという事か。

未久の能力は、何者かに封じられているのか。

誰も分からなかった。



第6話 UP1(1)


レオが『引用の棚』を発動させる。

「問題は1つにした方がよい。

リー。

フォボスの生命体をUP1に転送できるか」

「やってみよう」

リーは、関数を指数に交換してフォボスに能力を発動させた。

アリスが確認した。

「フォボスに生命体はいなくなりました。

UP1の人口が15増えました」


レオは満足している。

今のところ、レオの思惑通りだ。

「セントニウムとペンタダイバリオンの補充が必要だ。

サム。

新和と幸、それにアリスを伴ってUP1の偵察ができるか」

サムは頷いた。

 幸は防御に不可欠だ。

新和も結界が張れる。

うまくすれば、住人の一人を捕縛できるかもしれない。

主役は、アリスだ。

彼女の感知能力で、UP1を丸裸にするのだ。

 皆、頷くだけだ。

鎮也は押し黙っている。

口を挟まないという事は、同意と同義だ。


 サムはUP1に向かった。

サムは違和感を覚える。

「おかしい。

何がおかしいのだ。

そうか。

ここには社会がない。

皆、一人だ」


 この恒星系では、一人で生活するのが自然だった。

極度に他の介入を嫌う。

生殖活動は、機器が必要に応じてしてくれる。

必然的に人口は、少なくなる。


 生産、機構も機械任せだ。

全てを、人工知能が行う。

誰も人の失敗を責める者はいない。

他が何をしようが、関係ないのだ。



第7話 UP1(2)


 攻撃がサム達を襲う。

この惑星の防衛機構が異物と判断したのだ。

だが、新和の結界も幸の防御も揺るがない。

 内部の防衛機構は脆弱だ。

想定されていない。

外部からの攻撃にのみ防御力が注がれている。


 サムが問う。

「アリス。

ここの人工知能の程度が分かるか」

「私には分かりません。

ポセイに操作させて見たらどうかしら」


 サム達はアプリに戻った。

そしてサムはポセイを連れてこの惑星の中枢へと向かった。

ここでも防衛機構が働く。

だが、サムとポセイの速度には追い付かない。


 ポセイは、人工知能のコアを探し当てた。

そして、そのロックを外した。

ロックは暗号化されていた。

だが、ポセイにとっては開いている扉と同じだった。

 ポセイが言う。

「我々の第5世代と第6世代人工知能の中間くらいだな。

この惑星は我々にとって無意味だ」


 サムとポセイは、軍事施設に向かった。

ここの施設を麻痺させておかないと煩い。

ポセイにとっては簡単だった。

暗号を上書きすればよい。


 UP2とUP3にも行った。

同じだった。



第8話 恒星


 LB13はUSⅠの恒星に向かった。

この恒星は1.1MSだった。

取り立てて変わったところはない。

だが、何かがおかしい。

それの正体は、アリスにもマコにも分からなかった。


 恒星の内部に潜り込んだ。

中心の核まで行った。

だが、何も分からない。


 チャームクォークは豊富にある。

ボトムクォークも少量ある。

我が太陽と構成成分は、ほとんど変わらない。


 MTSから通信が入った。

「ユーラの庇護を離れてステーションの建設をしてよいか」との、問い合わせだった。

鎮也は「否」と返信した。

危険過ぎる。

「蓄える事を主にせよ」と返信した。

貴重な資源を無駄使いできない。


 セントニウムとペンタダイバリオンは、転送されてきた。

これで充分なのかは、誰にも分からない。


 他のUSⅡ~Ⅳも調べた。

USⅠと変わったところはない。

全ての軍事施設を麻痺させた。


 又、ムーから通信が来た。

サッキからだった。

彼は、鉱物学のレアレベルだ。

第7のクォ‐クの名前を決めたそうだ。

「ジャンプ」と名付けたそうだ。

そして、ジャンプは人工的に生成可能だそうだ。

電荷がないためか、比較的簡単に生成できたそうだ。


他の6種類のクォークは、未だ人工的に生成できない。

 クオダイバリオンとペンタダイバリオンの生成にトップクォークは不可欠だ。

他の5種類は、確保できる。

トップクォークの採掘場が欲しい。

できれば、ボトムクォークももっと欲しい。



第9話 第1生命体起源惑星


 固定した欠片マントは、21の恒星系の権利を持つ。

そして、生命体起源惑星を3つ持つ。


 一番早くに生命体が育んだ惑星を第1惑星と呼んだ。

順に第2生命体起源惑星、第3生命体起源惑星と呼んだ。


3つの惑星の住人は、現在皆人型をしている。

 マントは思っていた。

「何故、人型が最も知性が高いのだろう。

あんなに非効率な姿形をしているのに」


 ここでも、生命体は繁栄と滅亡を繰り返していたのだ。

だが、第1惑星の文明の歴史は長い。

8億年くらいあった。

だが、マントは思う。

「いつからか、成長が止まったように見える。

安定はしたようだ。

だが、彼らに可能性を感じない。

私も感化されているのかもしれない」


 この第1生命体起源惑星は、9つの恒星系を領域としていた。

LB13は、その中の4つを辿っている。

この9つの恒星系は、不可侵だった。

この領域に入ると、破滅か同化が待っていた。

 暗黙の法もあったが、それ以上にこの領域を恐れてもいた。


 この領域の主は、一人だった。

他の者達は全て主以外の同じ他の者だった。


 彼は、EXPレベル2を持つ強制感応者だった。



・元素の第1話 クリプトン


サッキは自然界にある元素を研究していた。


クリプトンの特性について研究を始めていた。

クリプトンは、自然界に存在する原子番号36の元素だ。

不活性ガスとして知られる。

電荷を持たないため、通常化合物とはならない。

稀にクラスレート化合物を作る。

だが、自然界では奇跡に近い。


 クリプトンを73Kぐらいにして液化させる。

それを細胞に与えると、その細胞の中に潜り込むのだ。

反応は、細胞種によって違うらしい。

 あるものは、細胞の全てを結晶化させる。

そして、適度な刺激で粉砕させられる。

 あるものは、細胞を強化させる。

その状態の細胞を壊すためには、エラドル砲クラスでなければ不可能だ。

そして、その細胞は生体活動を眠らせるらしい。

その細胞からクリプトンを取り出すと、眠りから覚めるらしい。


 サッキは、鎮也に頼んでMTSに助言してもらった。

MTSは渋っているらしい。

無意味で危険だと言っているらしい。


それは、細胞冬眠液の生成実験だった。


細胞を強化させて、眠らせる。

亜空間におき、相対時間を巻き上げる。

取り出す。

目覚めさす。


 鎮也はターナーにサジェストした。

限定的な実験を条件にした。

実験と実用化は別問題だ。



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