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第8.5話 市街地戦

 ──2時間ほど遡る。


 「来た。」


 未だ外れたことの無い勘を信じて起きる。装備を整える時間が惜しいので、寝ていた服のまま鎧を付ける。

 剣を取って廊下を駆ける。途中、各隊員の部屋に設置された、簡易警報装置を作動するための操作をして外に出る。


 (どこから来る?何を使ってくる?)

 

 周りを見るために高所へと跳ぶ。


 (目視できる場所には確認できない。勘が外れなければ、あと少しで来るだろう。)


 警報装置を鳴らされた隊員が外に出てくる。訓練を突発的にしていたので、その成果が出たと考えていいだろう。

 防衛する為に適切な采配をしなければならない。

 (少人数で配置すれば、この部隊の隊員でもマズいか。だが、考える時間もない。)

 

 「『幻想の草原』の方向を1〜4班が防衛せよ。5〜6班は対角に、7班はここで監視や支援を頼む。」


 指示に素早く反応し、班ごとに統率を取りながら行動する。1班は10人構成、何人で襲撃が来るか不明なのでもっと人が欲しい。が、他の部隊は戦力になるか分からない。実戦経験がなさすぎる。

 そう考えていると無意識にある建物に注目していた。何かが気になる。すると黒い影のようなものがそこに降りた。


 それを視認した瞬間、目にも留まらぬ速さで走り出した。その速さで建物の窓が揺れる。黒い影が動く様子はない。

 

 (ひとまずは、相手の動きを見る。)

 

 相手の動きを注意するものの、先手必勝の考えは変わらない。肩に掛けていた槍を瞬時に手に持ち、黒い影に突き立てる。

 

 (何かおかしい、何もしない?)


 近づくにつれ、相手の姿が見えてくる。全身に黒の衣装をまとい、槍を1筋持っている。頭は完全にこちらを向いているが、動かない。

 距離が10m程になった瞬間、いきなり投擲された槍が視界の中心を奪う。全身を捻らせ、空を鋭く切る音を聞きながら回避する。相手の動きを注意することと疑問をもっていなかったら、確実に頭を抉っていただろう。


 (槍を投げてどうするつもりだ?予備があるのか、それとも素手か。)


 体勢を立て直し、再び相手を狙う。未だに戦いの構えを見せない。先程まで手に握られていた槍はなく、予備の武器を取り出す動きもしない。イロアスの槍はすぐそこにまで迫っている。


 (本当に何もしないのか?いや、それはないはずだ。)


 相手の体を槍が貫くまで、後数cm。そして鮮血が視界に入る。即座に距離を取り、敵に槍を構える。そこには無傷の敵2人と、腕に傷を負ったイロアスがあった。


 (もともと多人数で来ることは予想できたが、ここまでとは。気配もなく、速い。)


 イロアスは所謂世代を代表する人物だ。特に身体能力が秀でており、制御させ気にしなければ擬似的に瞬間移動のようなことも出来る。そして『眼』が良い。それは動体視力だけでなく、様々なことを視ることが出来きる。勘も鋭く、殆ど外れたことはない。

 イロアスは能力的に慢心しても片手一本で兵士を地に伏せることは容易い。が、鍛錬を欠かさず勉学にも励み、妬んでいた人らも尊敬の眼差しを向けている。


 いきなりイロアスという人物を語ったが、要するにイロアスの敗北はこの国の敗北を意味する。


 (他の部隊は大丈夫か?戦闘の音は聞こえないが……マズいな。)


 睨み合いが続き、イロアスが手を出し損ねていると見ると、床に何か作業をし始めた。それは直ぐに蒼い光を放ち、イロアスの危機感が頂点に達した。

 何かを思考する前に地面を蹴る。片方の敵が邪魔をしてきそうだが、関係ない。


 (アレはなんだ?蒼い光。恐らくアレが原因だろうが…………全くもって不明だ。)


 止めようとしても難しいだろう。ならば周りの住人を避難させなければ。


 (申し訳ないが無断で部屋に入らせてもらう。)


 制御できるギリギリの力で走る。どういうわけか、敵は追ってこない。念の為、他の建物の住人も避難してもらう。

 

 (理由が分からない。ここを消しに来たんじゃないのか?あまりにも手を抜きすぎだ。)


 もう4棟分の住人は避難させた。そろそろ戦わなければ。

 ──サラッ、と目の前で信じられないことが起きる。


 「崩れ………いや、消えた……。」


 ちょうど4棟分、丸々建物が消えた。敵は軽々と着地し、蹴った地面を抉って襲ってきた。いつ回収したのか2人とも槍を携え迫る。

 ふと敵の1人が近くの建物を見た。そこを横目で見ると人が出ている。その敵は急停止し、槍を投擲した。


 (次は人が標的か!気分でやってるのか?)


 片方の敵は依然迫ってきている。思いつくのは一つだけだ。

 迫ってきている敵に突撃する。ここで敵の槍に当たるかは運だ。そして、思いっきり地面に槍を刺す。ここで敵も刺せれば良かったのだが、そう上手くはいかない。槍をしならせ、反動で跳ぶ。

 持っていた紐を手繰り寄せ、槍を手に戻す。そして、投擲された槍の軌道をズラす。


 「危なかったな。」


 狙われていた人を脇に抱える。


 「では一時避難だ。」


 敵が手を出せぬように、全力で住民を避難させる。恐らく他の部隊も同じ判断だろう。まだ余裕があるので全力で跳び、着地は経験で対処する。

 一撃を加えて、住民避難。を繰り返す。相手としても反撃を加えたいだろうが、イロアスの一撃は重く、一瞬目を離せば居なくなっている。

 

 (そろそろ鐘は鳴らないのか?)


 王の槍部隊は基本的に市民などの人達に認識される前に問題解決をする部隊だ。平和な世の中だが、更に平和を維持している。市民には偶に大型動物を狩って売ってくれる人達、のような認識だ。服装が基本的に軽装なのも関係しているだろう。

 ただ何故か、争いを認識させないという方向性が強いだけで、市民に危険を知らせる手段を全て街の兵士たちに任せられている。その手段の中で一番緊急性があるのが鐘である。もうそろそろ鳴ってもいいはず。


 (街の兵士たちが見えない。全員やられたか?だがその人数が来たように思えない。見渡せば建物が消えていることは確認した。だが、王の槍部隊が破壊を遅くしている。兵士たちが全滅するには早すぎる。)


 市民に声をかけたり、抱えたりして避難を終わらせ、敵と戦闘しようと索敵する。が、敵がいない。建物の多くが無くなり、他の場所で戦っていた数班も見える。だが敵がいない。

 ふと振り返ると人が吹っ飛んでいる。よく見ると仲間だ。そして追撃しようとする敵を見た。


 状況を瞬時に理解し、振り返った。

 


 

 

 

 


 

 


 

 

 

 


 


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