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第10話 事後処理

 ──地獄絵図。今この場所で最も相応しい言葉だろう。散らばった四肢と臓器、そして血溜まり。今にも逃げたいが、身体がいうことを聞かない。何故かこの情景から目が離せない。そして血のニオイや様々な悪臭が鼻を刺激し吐き気を催す。

 中央には槍や椅子にもたれかかる兵が数人いた。かなり疲弊したのか、何かを考えているのか、遺体の山の方をずっと見ている。天井がボロボロ崩れて破片が降っているが気にしている様子はない。


 ただ静寂が流れ、崩れた天井から光のカーテンが降り注ぐ。血は蒼く、赫く反射している。


 「〜〜〜〜。〜〜〜〜?」

 「敵は排除した。生きている者は居るか?」


 イロアスさんの呼び掛けは市民に向けた声だと分かる声量だった。あの山を無視しているかの様に。


 「──〜〜。〜〜〜……すまない、そこの2人!少し手伝って貰えるか?」


 急に呼ばれて意識が戻った感覚がした。


 ∶


 イロアスさんに遺体を全員仰向けに寝かせる事と、もし何かが刺さっている物があれば抜くこと。そして一人ひとりの身体の欠損状況を紙に書くことを指示された。

 筆舌に尽くしがたい、悪夢の様な作業が始まった。幸運なことに気絶しているだけで生きている人も多数おり、少し落ち着いたら手伝に参加していた。


 「う……う〜ん。ぬぅぅぅすぅーー」


 思わず「うわ!オェッ!」と驚く声と嗚咽を上げそうになったが何とか抑えた。いや、抑えたのではなく声が出なかったのかもしれない。そこには、腕や足が千切れかかっている人や臓器が露出している人、脊椎が何とか首と身体を繋ぎ留めている人などが倒れていたからだ。


 「──ヒッ、旱箕さん?!」


 そこには旱箕さんが倒れていた。腹は無造作に割かれ、内蔵が出ている。転生者の人達にも犠牲者が出ることは覚悟していたが、いざ目の当たりにするとショックが大きい。しかも、旱箕さんはこの世界で最初に出会った人の一人であり、生活が始まった後もサポートしてくれた内の一人でもある。


 「貴方、大丈夫ですか?」


 ふと、後ろから喋りかけられた。聴いた事がある声だ。


 「あぁ……すいません。ちょっと……その──気分がちょっと……」


 もうこの現場から逃げたいという気持ちは無い。ただただ夢であれと願うだけだ。


 「私も手伝いましょう。さすがに手に余るでしょう。」


 来ていたのは特徴的な白銀の髪、白い肌を持つ中性的な人。全身を血に浸した様な今の姿は戦いの悲惨さを物語る。僅かに肩で呼吸しているのが分かる。呼吸はすこし浅く、立っていることすら辛そうに見える。


 「だ、大丈夫ですか?かなり体調が悪いように見えるんですけど……」


 「あーまぁ大丈夫ですよ。ちょっと血が出てるだけです。というかそういう貴方こそ体調悪そうに見えますけど、顔青いですよ。」


 そう言いながら遺体の服を掴んで放り投げた。……放り投げた。


 「──え!?な……にやってるんスカ!?」


 思わず目で追う。遺体は宙を舞いながら落ちてゆく。身体は小さいが落ちる速度はどんどん上がる。この世界の重力が強いのか、かなりの強さで放り投げてもすぐに地面に着いてしまう。

 グチャッと、はならなかった。地面に着くギリギリでイロアスさんともう一人が身体を掴みゆっくりと地面に降ろす。降ろしたのを確認してから、またすぐに放り投げた。


 「……この後は何をするんですか?身元確認?」


 「いえ、生き返らせますよ。」


 思わず、えっ と声が出る。この世界には魔法は無いと柾木さんから聴いている。


 「どうやって?!え、マジですか?」


 「あれ?聴いた事ないです?この世界の人達は大体2、3回は生き返れますよ。」


 訊くと、特定の植物と技法を施した「蘇薬」を遺体にかけると、その人のエネルギーを消費して生き返るらしい。エネルギーの消費によって、生き返りを繰り返すと病気にかかりやすくなったり、寿命が極端に短くなったりするらしい。


 「にしても、こんなに人が死んじゃうと蘇薬が足りないんですよね。なので、ある程度の人数を生き返らせて残りの人は移住地でしましょう。」


 イロアスさんから麻袋の様な袋を配布され、生き返らせる人以外の遺体を片っ端から袋で包み、紙を袋の上に付ける。今回はは紙を付ける作業だけを指示された。

 作業が終わりかけた頃、蘇薬と身体の繋ぎになる植物が各場所に渡された。


 「蘇薬は私たちが責任を持って扱います。では、始めましょう。」


 蘇生が始まった。欠損した部分に繋ぎの植物を詰めて、主にそこから蘇薬を流し込む。だんだんと湯気が出始め、筋肉が植物を伝いながら身体を繋げてゆく。


 ∶

 

 気づけば夕方になっていた。全ての力を使い果たした気がする。力なく夕陽を眺めていると、若干色が変化していることに気づいた。


 「おもしろ……」


 この日はこうして終わった。


 


 


 

 

 

 


 


 

 

 

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