第9話 状況好転せず
不気味な笑顔を見たような気がするが、苛烈な戦闘後の疲労かな。と流すことにした。持っていた武器を適当な地面に置いて集合場所を目指す。
周りを見ると、所々寂しさを感じる。まだここに住み始めて短いが、街の賑わいと区画に綺麗に収まっていた建物たちが消えることは無いんじゃないかと思っていた。
(あぁ、昨日までの賑わいが嘘みたい。住んでいた建物も多分消えてるし、ホントに魔法ないの?)
この世界に魔法がないことを疑いながら、歩いて行く。その道に瓦礫はなく、建物が無くなる実感が更に無くなる。
順調に目的地へ行くと街の中心近くにある、大きいとは言えない建物に着いた。2階建てでもなく、幅も一般的。そんな建物に両開きの扉が2つ付いている。流れに身を任せて中に入ると、どうやら地下に集会所を造ったようだ。かなり開放感があり、白と暗い木で統一された空間はシンプルながらに素晴らしい。
戈星さんが座った隣に座ると、暫くして偉い人が会場の中央に出てきた。肩から少し長めのマントを羽織り、ところどころに高価そうなものを飾っている。いかにも偉い人という印象だ。
「〜〜〜、〜〜〜〜。〜〜」
何か喋っている。雰囲気的に励まし系の言葉だろう。周りを見渡すと、皆すこし疲れた顔をしている。それは緊張していたせいか、先への憂いなのかは分からない。
「星鴉さん、どうやら一時引っ越しをするそうです。その間に工事なりをするそうですよ。」
「なるほどです。いつですかね?」
「国から許可が来てから、らしいので1〜2日後ですかね。場所は『幻想の崖』と呼ばれているところらしいです。あんまり聞いたことない場所ですね。」
話を聴いていると、急に話が終わった。いや、終わらせられたようだ。中央を見ると、胸部に槍を刺され絶命していた。その周囲にいた数人も殺されている。
悲鳴が響き、逃げようとする人たちで入口は溢れている。が、一向に出た様子はない。そしてまた一本と入口へと槍が投げられた。その槍は複数人を貫き、無慈悲に絶命へと至らしめる。投げた方向を向くも一般市民しかいない。
(い、いっかい椅子で身を隠そう。)
緊張で心の声まで震えながら、椅子に隠れる。悲鳴も小さくなってきた。すると急に槍が隠れている椅子に突き刺さった。槍の先端には血が付いていて、だんだん槍を伝って血が垂れてくる。背もたれの上には貫かれたであろう人の手が力なく垂れている。
もう星鴉の脳は思考が止まっていた。いや、止めざるを得なかった。今脳はパニックで、体も逃げ出したくて震えている。もし今脳を使おうとすると危機に晒されるだろう。
すぐに槍は乱雑に引き抜かれ、遺体は転げたようだ。特に周りを探すこともせず階段を下りていった。
(ぎゃ、虐殺…一方的な虐殺──まとめて殺される…)
抑えようとしても心拍数が上がり、呼吸が速くなる。バレないようにと口を手で覆い、できる限り息を殺す。
静寂が広がっている。襲撃した奴らは言葉も発さず、静かな足音を鳴らすだけだ。ものすごく長い時を過ごした気がして、緊張もあり精神は参っている。
そこにドゴンッと扉を蹴飛ばして人が入ってきた。すこし間が空いたあと、重い音が聞こえてきた。そして心強い声も
「〜〜!〜〜〜、〜」
イロアスさんと数人が来たのだろう、武器がぶつかり合う音の間に数人の声が聞こえる。ふと、怖いもの見たさが出てきた。すこしぐらい見ても良いのではないかと、穴を覗こうとすると
何も見えない。いや、人の髪だ。そのまま思考の時間が与えられぬまま、高速で飛んできた人の衝撃を受け止めるしかなかった。
「〜〜〜?!……だ、大丈夫ですか?」
上手く受けきれず、脇腹を椅子の角で打ってしまった。ミシッと骨が鳴った気がするが痛みは無い。
「大、丈夫です。あなたこそ大丈夫ですか?」
飛んできた人の姿を見る。主要な部分は鎧で覆われているが全体的に軽装で、戦闘での傷が目立つ。
絹の様な肌、というか何というか特別な白い肌をしている。白い髪がまた、それを引き立てている。
「ああ、僕は大丈夫ですので隠れてて下さい。」
笑顔でそう言うと、戦闘へ戻っていった。すぐに場所をズラして隠れる。戈星さんも既に場所を確保していた。
次第に音が大きくなり、戦闘の激しさが増したように感じる。先程までなら不安で押しつぶされそうになっていたが、あの言葉を聴いて落ち着いた。
(信じて待つ。信じて待つ。)
次第に音が小さくなってきた。そして、静かになった。終わったのかなと、背もたれから目を出すと
「────これが、これ、が」
そこで目に入ったのは、ボコボコになった地面と天井。あるゆる所に着いた血。その中に見える四肢や臓器のようなもの。───簡単に言えば、地獄絵図になっていた。




