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異世界逃亡(仮)  作者: 山椒小粒
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~全ての計画において成否を分けるもっとも重要な要素は運である~

「全ての計画において成否を分けるもっとも重要な要素は運である」そんな言葉を昔誰かの口から聞いた覚えがある。その時は完璧な計画を立てられない愚者の負け犬の遠吠えだと笑い飛ばしていた。


しかし、皮肉なことに俺はいまその言葉を思い出さざるをえない状況にあった。何年もかけて入念に練った計画は人間には及ばぬ力によって簡単に崩れてしまった。結局のところ人間という矮小な存在である限り完璧な計画など建てられない。失敗して初めてそのことに気がついた。


「遅すぎたな」


片足を雪に沈ませると同時ににもう一方の足を雪から無理やり引き抜きできるだけ前方の雪に沈ませる、そんな作業を繰り返しながらそう呟く。かろうじて歩けてはいるが体力は既に底をついており、気力のみで歩いている。そんな状態だ。さらに困ったことに記憶している地図は近くに村がないことを報せていた。わかりやすい絶望である。


いっそ引き返す方が良いのかもしれない。運が良ければ"あそこ"まで辿りつける可能性もある。そうでなくとも逃げ続けるよりは追手が気がつく確率も高くなるだろう。このまま前進するよりも、"あそこ"に帰りもう一度計画を立て直し、時を伺い脱出する方が生きて自由の身になれる見込みが高いことは明白だ。


理屈ではそうわかっているのに、俺の全身の細胞が産毛に至るまでこのまま前へ進むべきだとそう訴えている。自分の体がこうなるほどに"あそこ"での生活は辛かったのだと改めて認識する。きっと"あそこ"に帰ったら俺は自殺でもするのだろう。それならば全身の力を使い切り死ぬ方がずっと安らかに死ねる。そう考え前進していた。




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