気付かぬうちに
「有り難く頂いとくわ。ありがとう。えっと、オカメだったかしら?」
大人な対応のフロリアにイザベルはとても嬉しそうに桐の箱を渡す。オカメをつけっぱなしのため、表情は見えていないが。
オカメの説明をつらつらと始めようとしたイザベルは即座にユナイに止められた。そして、イザベルのオカメを外させると、フロリアに深々と頭を下げた。
「良い経験になりました。ありがとうございました」
「ユナイ様、やめてください。とても助かりました。お約束通り、皆にも話しておきますね」
もともと、フロリア孤児院に行くことは決まっていたので、ユナイとフロリアが知り合いなのは予想がついたが、約束とは何か。イザベルは小さく首を傾げる。
「あの、約束ってなんですの?」
「イザベルは、気にしなくていいことだ」
(むむっ。そう言われるとますます気になるではないか)
じろりとユナイをイザベルは睨むが教える気はない、と言わんばかりにユナイはイザベルの視線に気が付かないふりをした。
「ふふっ。ユナイ様はね、ベルちゃんが本当に変わったと思ったら、私のお友達にもそのことを伝えて欲しいっておっしゃってたのよ」
「お友達、ですの?」
「えぇ。自分の夢に向かって、なりふり構わなかった友達よ」
「それって……」
公爵家から支払われる金銭を目的に、イザベルから虐げられることを選んだ人達は繋がっていたのだ。
「皆様は夢を叶えられたのですか?」
「……まだ夢半ばの者も多いけれど、皆、人生を謳歌中よ。私も含めてね」
「そうですか」
悪いことをした。その罪を領民にも背負わせてしまった。それでも、夢を叶えるために使われたのであれば、イザベルは少しだけ救われた気がした。
「それでは、失礼しますわ。また絶対に伺いますわ」
「絶対の絶対だよ。みんなで待ってるからね!!」
目にいっぱいの涙をためてカシューは叫び、みんなで書いた手紙をイザベル達、一人一人に手渡した。
「「「「「ありがとうございました!!」」」」
子供達が頭を下げる。そして、イザベルも。
「感謝するのは、私の方ですわ。皆さんが私の先生でもありましたの。ありがとうございました」
フロリア孤児院での出会いはイザベルの世界を広げた。そして、自分には何ができるのか、どうすれば良いのかを真剣に考えるようになる。
実はユナイによる皇太子妃教育であることなど、イザベルは全く気が付いていないのであった。




