恋路を邪魔するとオバケが出てくるんだって
イザベルはミーアに助けを求めることを断念し、ユナイへと視線を向けたが、なんと意外な刺客がユナイの行動を妨げていた。
その刺客は、ユナイの服を引っ張りイザベルのところへと行かないようにしている。
「今、良いところなんだから、邪魔しないで。
それに、人の恋路を邪魔すると……えっと何だっけ?……あっ、オバケ!!オバケが出て来て体の中の血を全部、吸われちゃうんだよ!!」
「……それは、ドラキュラじゃないのか?」
「そんなの、どっちでもいいよ。ほら、見てみなよ。まるで絵本の中みたいだよ」
「……自分の妹のラブシーンなんて、兄としては見たいものじゃないんだが」
ユナイの言葉にカシューは衝撃を受けた。そして、新たな兄妹としての常識として上書きされていく。
(本当の兄妹ってそうなんだ。シューの妹達が好きな人とイチャイチャしてたら邪魔したり、知らんぷりするのが当たりなんだぁ)
これで、その時が来たら正しい兄妹としての振る舞いができる、とカシューは笑みを深め、興味はラブシーンから兄妹としての接し方へと移る。
「ねぇ、お兄ちゃんとしての正しい邪魔のやり方を見せてよ。参考にしたいからさ」
「そう言われるとやりにくいんだが」
カシューはユナイの背中をぐいぐいと押す。そして、イザベルとルイスの目の前にユナイはやってきた。
「子どもの前だ。そのくらいにしておいたらどうだ?」
「……違う」
カシューの声のトーンが少し下がる。そして、恨めしげにユナイを見て、大げさなくらい大きな溜め息を吐いた。
「シューはお兄ちゃんとしての邪魔のやり方がみたいの。シューを言い訳につかわないで!!」
「シュー、そういうのは言い訳とは言わない。そうだなぁ……、シューを理由にしないで、というのが子どもらしくて言い方としてはいいんじゃないか?」
「ベルのお兄ちゃんは、ちょっとうるさいよね。シューは、そんな話をしたいんじゃないんだよ。お兄ちゃんとしての妹への接し方が知りたいの」
もう一度、わざとらしく大きな溜め息を吐いたカシューは、イザベルとルイスに割り込んだ。
「ベルとお兄ちゃんがラブラブなのは、もう分かったんだ。だから、お兄ちゃんとしてどうするのがいいか、一緒に考えてくれない?」
子どもだからなのか、カシューが大物なのか、はたまた何も考えていないのか。公爵令嬢とその婚約者へとあまりにも普通に話しかける。
普段ならイザベルとのいちゃラブを邪魔されることを嫌がり、邪魔するものは敵とするルイスだが、『ラブラブ』という言葉に非常に気分を良くしていた。
「よし、イザベルとラブラブな俺が答えよう」
「らっらララららラらっっララブ……」
「そうだな。ラブラブだな。俺とイザベルがラブラブって言われて嬉しいよな。分かるぞ」
口をパクパクとして上手く言葉を紡げないのをいいことに、都合よくルイスは話す。そんなルイスに、イザベルは首を横にブンブンと振ったが、ルイスはイザベルの髪を優しく撫でるだけだ。
「それで。兄としての在り方だったか、少年」
「そうだよ。フロリア孤児院にはシューの妹がたくさんいるから、どうしたらもっと兄妹らしくなれるのか知りたいんだ」
カシューの真剣な表情に、ルイスは頷き、イザベルは目を見開いた。
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